しばらく学校に行かなかった…
行けなかった。
体は鉛のように重く、地面に埋まってしまったかのように足は動かなかった。
—…最悪じゃ…
あれで、一緒に学校に行くことも帰ることも、休み時間のお喋りも出来なくなってしまった…。
もう、泣くための涙は枯れ果てた。
さすがに今日は学校に行こ…
学祭まで、あと2日。
クラスメイトにも迷惑だ。
ベットから落ちるように体を降ろしフラフラとバスルームへ。
自転車に乗り、いつもの駅ではなく1つ先の駅まで行った。
あの踏切は見たくない。
久しぶりの学校はもうお祭りムードだった。
授業は全て学祭の準備にあてられ、どの生徒も浮き足立ってる。
けど、私の足は膝下まで地面に埋まり浮くことさえもない。
「あー!大本さん!やっと来た」
教室に入ると、みんなが駆け寄ってきてくれた。
「ごめん…」
ふと、教室の後ろ。
近藤さんと目が合った。
近藤さんは、顔をほのかに赤らめて微笑む。
そして、私の心によからぬことが浮かんでしまった。
「ごめん。ちょっと」
私はその考えを振り払う為に教室を出た。
向かう先は屋上。
最低だ…。
いっそ、近藤さんと付き合っちゃおうかなぁとか…
そうすれば気が紛れるかなぁ…とか
最低だ…。
屋上に出ると、それまでのざわめきが嘘のように静かに感じた。
空を仰ぐと、埋まっていた足が少し浮く感じ。
「はぁ…」
ため息は、少し冷たい空に消えた。
「コラ〜サボリぃ〜」
「あ〜ちゃん…」
「久しぶりに学校来たと思ったら、サボリかい!」
あ〜ちゃんはジャージ姿で、、、それはそれは滑稽だった。
「はははっwジャージ」
「笑うな」
あ〜ちゃんは私のお尻を軽く蹴った。
「いたいよ〜」
「じゃあ、その泣きそうな顔、やめんさい」
「…へへっ」
私は力無く笑い、その場にペタリと座り込んだ。
あ〜ちゃんは、しばらく私が何か喋るのを待ってたみたいだけど、何も喋り出さない私に業を煮やして、隣に座った。
「ゆかちゃんから聞いた」
「…そういうこと」
「どういうことよ!」
「終わった?ってこと?」
わざと、ふざけて言ってみた。
「…ばっかじゃないの」
あ〜ちゃんはキレてる。
声色も顔も手もオーラも、全部キレてる。
けど、
「あ〜ちゃんが怒っても変わらん」
なんも変わらんのよ、、
あの日の事が無かった事にはならないし、
彼氏と別れてくれるわけでも、ゆかちゃんがのっちを好きになってくれるわけでもない。
「フラれたんよ…」
けして、口にしないでおこうと決めたのに…
あまりにあっさりと出てきた言葉。
あー…流す涙は枯れ果てた筈なのに…視界が霞んでいく。
「のっちは何もしてないじゃん…」
「グスッ…いや゛、しちゃっだがらぁ、、、グスッ、こうなってんれすけど…」
涙と鼻水で上手く喋れない。
もうっ!とあ〜ちゃんはジャージのポケットからティッシュを取り出し、私の涙を拭ってくれた。
「鼻水は自分でしんさい」
あ〜ちゃんからティッシュを数枚もらい、鼻を拭く。
あ〜ちゃんは私の頭をポンポンっと数回叩き、撫でてくれる。
「あ゛〜…」
そんな優しさにまた涙が出そうになった。
「のっちは好きって言ったん?」
「いいえ゛」
「ゆかちゃんは嫌いだって、付き合えんって言ったん?」
「…いや゛でも、最悪とは言われますたし…それに、」
「それに?」
「ゆかちゃん彼氏いるし、」
「…」
やっぱり、あ〜ちゃんは知ってたんだね。
「ごめん…」
「良いよ…いつか知る事だから、人から聞くより自分で気付けてむしろ、良かった。」
「のっち…」
「のっちの為に、気い遣ってくれたんよね…。ありがとね?」
「…あのさ、のっち」
「ん?」
「…フラれるんならさ?…ちゃんと想い伝えてフラれよ?」
「あ〜ちゃん…」
「あ〜ちゃんが黙ってたんは、のっちにちゃんと想い伝えてほしかったからなんよ」
「…お願い、のっち…ちゃんと想い伝えよ?」
いつの間にか、あ〜ちゃんが泣きそうになっていて、
私はなんて駄目なんだろうって、
どうしてこうも弱くなってしまったんだろうって、
反省した。
「うん、言うよ…ちゃんと想い伝えるよ」
ちゃんとフラれるために…。
最終更新:2009年04月09日 23:40