Side N
ゆっくりとしたお茶の時間。
「彩乃様。」
「ん?」
「『H』って何ですか?」
ぶwwww!!!!!
あやちゃんからのありえない突然の質問に、思わず飲んでいたお茶を盛大に吹いてしまった。
「ぅえっへ…えっへぇw」
「彩乃様!大丈夫ですか??」
慌てて、あたしが吹き溢したお茶を拭いてくれるあやちゃん。
「あぁwごめんごめんw」
「あの、私、変なことをお聞きしたんでしょうか?」
「あ、いやぁ〜。あのね?あやちゃん。」
「はい…。」
こ、これはぁ、どう答えるべき?
ん〜、待て待て。もしかしたらあたしの受け取り方が悪いんじゃない?
何も、そっちの意味じゃないかもしれんし。
「ちょっと、待ってね?」
あたしは、ほとんど使うことのない英和辞典を出してきて、『H』の所を開く。
「え〜っとねぇ。『H』は《英語アルファベットの第8字》あと…あ、《鉛筆の硬度を表す》とか《元素記号》…だって。」
読んでいた辞典から視線を上げて、あやちゃんの反応を見る。
「…。彩乃様、それは知っています。」
「そ、そうだよねぇ…?」
やばい、やばいぞ?ってことは、あやちゃんが知りたいのって…。
「好きな人同士がするという『H』のことです。」
やっぱり…。でも、そんな真剣に聞かれても、あたしも困るんですけど。
「ってか、それ誰から聞いたん?」
こんなに純粋なあやちゃんが知ってるはずないのに。
「??この間、ゆかちゃんが来られた時に言われてました。」
この間って…、あのゆかちゃんが急にやって来た日のことかな…。
ゆかちゃんはあやちゃんに用があるとかで、二人で話をしてて。
あたしはというと…。
一緒に来ていた執事さんに、『ゆかお嬢様の魅力について』とかいう…、いや、ゆかちゃんの事は好きだけど、そこまではぁ…。
っていう話を延々と力説され。しかも、自作の資料付きで。
正直きつかったw
まぁ、こんだけ執事さんに愛されてるゆかちゃんが、ちょっとだけ羨ましくなったけど。
けど!あやちゃんだってあたしの事好きだし!とか思ったり。
「のぉーっち!」
「「はい!!」なんでしょう?ゆかお嬢様。」
え?
一緒に返事をした執事さんが、ゆかちゃんへと駆け寄っていく。
「うちののっちは、ちょっと黙っとりんさい。」
「は、はい。」
しょぼんとする執事さん。
えぇえww
執事さんものっちなの???
え?どゆことw?
ゆかちゃんは、軽くパニくってるあたしの方へずんずん歩いてきて。
「ちょっと、のっちあんた。あやちゃんに何ちゃっかり毎朝ちゅうさせとん?しかも昔かららしいじゃん。」
「え?」
あやちゃん、言っちゃったの?てか何でそんな話に?
「え?じゃなくて、何も知らんあやちゃんにあんたはw」
「やややwそれは、ですねぇw」
「言い訳があるなら、聞いてあげてもえぇけどぉ?」
腕組みをしながら斜め45度の睨みに、ぐぅの音もでないあたし。
「す、すみませんw」
「でも、今はあやちゃんも好きなんだし、良いけど。そのかわり…。」
すーっと視線があたしから二人の方に向くと、ビシィ!ッと指をさして。
「チョットそこ!和んで手ぇ握らない!」
なぬ!?と思ったけど。
「ぃえ、折角なのでご挨拶をと思いまして、握手を…。」
「はぃ。握手です!」
知り合いが増えるのが嬉しいのか、あやちゃんもニコニコしている。ならいっか。
「むぅw…まぁいいわ。のっち、後であやちゃんに何か聞かれたら、ちゃんと答えてあげんさい。」
「は、はぁ…。」
そう言うと、ちょっとご機嫌斜めなまま、執事さんの方へ近づいて、
「帰ろ?」
ゆかちゃんがそっと手を差し出すと。
「はい。ゆかお嬢様。」
自然にゆかちゃんの手をとって、手の甲にキス。普段からしてるような自然さ。
あっという間に笑顔になるゆかちゃん。
あ。もしかして、あやちゃんにヤキモチ?というか、そういう関係?
「ゆかちゃんw」可愛いじゃん。
「ん?」
「ん〜ん?何でもな〜い。」
変なのって言いながら、執事さんと仲良く帰っていった。
……そういえば、何か聞かれたら答えとけって言われたっけ。
答えますけど…答えますけど、なんで『H』なんよ!
「恋人同士になると、今までと何か違うんでしょか?とお聞きしたら、最初はキスをするとおっしゃていたんですが、
キスなら毎朝してますってお答えしまして…。そしたら『Hじゃ。』と言われて、後で彩乃様にお聞きすれば教えていただけると言われたので、今お聞きしているわけです。」
ゆ、ゆかちゃん。あやちゃんになんちゅう話をしとるんよ…。
それで、朝のキスを怒られちゃったわけか。
「ぁのね?あやちゃん。『H』っていうのはね?…。」
待て、こんな話をあやちゃんにして良いの?この間、やっと恋を知った子ですよ?
キスの意味もちゃんと分からんのですよ?て、こっちはあたしが悪いけど…。
「彩乃様?どうかなさいましたか?」
「い、とぉ。『H』の前に、あたしあやちゃんに謝らんといけんコトがあるんよ。」
「なんですか?」
「その、キスのことなんだけど…。」
コレはちゃんと言っておこう。
「はい。」
「ホントは、あたしがお願いした朝の挨拶みたいんじゃなくて、ゆかちゃんが言ってたの、好きですって恋人同士がするもんなんよ…。」
黙ったまま、あたしを見ているあやちゃん。うぅ、視線が痛い。
「ごめんね。嘘なお願いしてて。」
だけど、あたしは怒られてもしょうがないはずなのに、あやちゃんはニッコリ笑って。
「私は、全然嫌ではありませんでしたよ?それに、最近どうして朝あんなにドキドキするのか分かりました。」
「してたの?」
全然、分からんかった。
「はい。…きっと、私が彩乃様に恋してるからなんですね?私、また変になってしまったのかと心配だったのですが、スッキリ致しましたw」
も〜、あやちゃんてば、惜しげもなくそんな甘い言葉をw
あたしが変になっちゃうよ?
「それは、良かった。うんうん、良かった良かったw」
これで、話は丸く治まったかと思ったのにあやちゃん。
「それで、『H』って何なんですか?」
だぁwwww
ダメだったぁ〜。
なかなか喰らいつくねぇ、あやちゃんw
「んwwやっぱり、あやちゃんにはまだ教えなぁい。」
「え?どうしてですか?彩乃様、私とは『H』したくないのですか?」
あやちゃんはテーブルに手を突き、身を乗り出して聞いてくる。
www。知らないってある意味最強ですね!!
「そりゃ、したいけどぉ…。その前に…。」
あたしは立っているあちゃんに近づき、抱き寄せて片手であやちゃんの頬を撫でて。
はてな顔のあやちゃんにニコッとしてから、キスをした。
実は、朝のキス以外では初めて、しかも、あたしからするのも初めてだったりしてw
そして、触れるだけのキスじゃなくて、少しだけあやちゃんの上唇を挟み、軽くちゅっと吸い上げてから唇を離す。
「ふぁ…。これも、キス、ですかぁ?」
頬を赤らめて尋ねてくる。
「うん、そうw」
「すごく、ドキドキします。」
へへ。やっぱりあやちゃんだぁ。
「まだまだいっぱいあるから、彩乃ちゃんとしては、先にこっちを覚えて欲しいな?」
「が、がんばります。」
「にへへへwじゃあ、もう一回w」
真っ赤になりながら、あたしのキスを受け入れてくれる。
やっぱり『H』なんてまだ先でいいよね?あたしもあやちゃん相手だと、教えるの恥ずかしいし…。
そして、やっぱりあたしのメイドさんは、世界一可愛いw
<のっちのメイドさん>
〜素朴な疑問〜fin
最終更新:2009年04月09日 23:49