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「うん。似合っとる。」


あ〜ちゃんはどや顔でのっちの帯部分をパシッと叩く。


「ちゃあぽんの浴衣じゃけど、サイズも無理ないわ」


鏡に映った自分の姿を見てみる。
白色ベースでブルーのラインが入った浴衣。
あ〜ちゃんの家に来たのは浴衣に着替えるためだった。


「最初から言ってくれたら良いのに…」
「だって面白くないじゃん!…ふふ、服脱がされるの待ってんの可愛かったー」


ゆかちゃんが悪戯っ子みたいな顔で笑うと、
あ〜ちゃんも一緒になって笑う。


ふて腐れていると、今からあ〜ちゃんが着替えるからと
のっちだけ部屋から追い出された。
なんだよぉー。
なんでゆかちゃんはOKでのっちは駄目なの?
確かにあ〜ちゃんの着替え姿なんて想像したら…。
あ、いけないいけない!


「何ニヤニヤしとるん気持ち悪い。」


ヒョコッとドアから顔を出したゆかちゃん。
思ってたより早く着替えられたみたい。
手招きされるままに部屋に入ると浴衣姿のあ〜ちゃんがいた。
ピンクに淡い花柄の浴衣はあ〜ちゃんにピッタリで。
軽くおだんごにした髪。
入りきらなかった髪が首に少しかかっていて、色っぽい。
シンデレラのドレスとはまた違った可愛らしさ。
ゆかちゃんに突っ込まれて見とれていたことに気付く。
そして浴衣を着ていないことにも。


「なんでゆかちゃん浴衣着とらんの?」
「ゆかは家に帰るから」
「へ?なんで?」
「実は従姉妹が来ててさ、晩御飯食べにどっか行くから
帰って来いってお母さんがうるさいんよー。
…じゃ、後は二人でね」


バイバイと言った後、ゆかちゃんは荷物をまとめて携帯を弄りながら部屋を出て行った。
そしてすぐにのっちの携帯が鳴る。
メールの主はゆかちゃんだ。

『あ〜ちゃんにある程度この後の予定は任せてあるから。
うまくやるんよ』


…そうだった。
ゆかちゃんとの約束。
カラオケで盛り上がり過ぎて、頭からすっかり抜け落ちてた。


「ゆかちゃんから?」
「う、うん。あ〜ちゃんに予定任せてるからって。」

携帯を握る手がだんだんベトベトしてくる。
自分の中で平静を装っているつもりなんだけど、
あ〜ちゃんが不思議そうにのっちを見ているのを考えると、
ごまかしきれてないみたいだった。


「あ〜ちゃん、予定って何?」
「この近所でお祭りあるから、そこに行こうかなって」
「お祭り!超良い!!行こ行こ」


とりあえず部屋に2人きりである今の状況に堪えられなかったから、無駄に急いで部屋を出た。
お祭りに向かうとそこは既に沢山の人で賑わっていた。


「凄い人じゃね…」
「うん…」


あまりの人の多さに二人とも圧倒される。
あの中に入ったら迷子になりそう。
そう思っていたのはのっちだけじゃなかった。


「ん、手。」


少しぶっきらぼうにあ〜ちゃんが右手を差し出して。


「はぐれちゃ、駄目…じゃろ?」


『はぐれちゃ、駄目。』


あ〜ちゃんを意識し始めた始業式の日を思い出す。
やっぱり、好きだ。
あ〜ちゃんのこと。



のっちより少し前を歩くあ〜ちゃん。
はぐれないように手をしっかり握りかえした。
はぐれないよう、指まで絡めて。




つづく







最終更新:2009年04月09日 23:54