予定より10分早く待ち合わせ場所に着く。
そこにはもうのっちの姿が見えた。
いつも遅刻する人なのに、予定時刻より早く来るなんてありえないでしょ。
あたしはのっちを待つ10分の間に自分の気持ちを落ち着かせようって考えてたのに、それが出来なくなって軽く動揺。
そんな動揺しているあたしにのっちが気付いてしまった。
右手をヒラヒラ振っている。
あたしも手を振る。
仕方ないからのっちの元へ駆け寄った。
「どうしたん?まだ時間じゃないけぇ」
あたしは出来るだけ普段通りに接した。
「いやー、いつも待たせてばっかだから。悪いと思って早めに家を出たんよ。てか、あ〜ちゃんも早いじゃんw」
のっちも普段通りに接してきた。
この感じなら大丈夫。
なんとかやっていける。
そう自分に言い聞かせた。
あたしたちは電車を乗り継いで、目的地の空港に着いた。
予定時刻よりかなり早く着いたから、ロビーで座って待つ事にした。
「あ〜ちゃん・・・」
のっちが低い声であたしを呼ぶ。
「な、に?」
ちょっとたどたどしく返事をしてしまった。
「かっしーは、うちらの事知ってるん?」
のっちはあたしとゆかちゃんがメールのやり取りをやってるのを知っている。
ゆかちゃんは旅に出たての頃はのっちにもメールを送ってたらしい。
けどのっちから一向に返信が来ないって拗ねて、あたしにしか送らなくなった。
「ううん。教えてないよ・・・」
ゆかちゃんにはわざと教えなかった。
メールで知らせるにはちょっと重いと思ったから。
それにあたしたちが別れたのを、ゆかちゃんが自分のせいって思ってしまうかもしれないと感じたから知らせなかった。
そう、ゆかちゃんは関係ない。
あたしたちが勝手に自滅しただけ。
「そっか・・・じゃあ、しばらくかっしーの前では”フリ”しとこう」
のっちは最小限の言葉でしか、あたしに伝えなかった。
たぶん”フリ”て言うのは”付き合ってるフリ”って意味。
「しばらくって、どれくらい?」
のっちはハノ字眉になり笑って誤魔化して答えてくれなかった。
付き合って気付いたのっちの癖だ。
のっちはあたしの質問に困るといつも、この癖を出す。
その癖に慣れない間は、しつこく何度も聞き返した。
あたしはそれに慣れるまで時間がかかった。
慣れてきたと思ったら、別れてた。
あたしはそれ以上何も訊かず、ゆかちゃんが来るのを待った。
程なくするとゆかちゃんが乗っている予定の便が到着を知らせるアナウンスが流れた。
飛行機から降りた乗客の中からゆかちゃんを探す。
「あっ!!かっしー、おったよ」
のっちがあたしの袖を引っ張った。
あっ、ほんとだ。ゆかちゃんだ。
細い体に似合わない大きなリュックを背負っている。
あたしは気付いてもらう為に大きく手を振った。
彼女は最初キョロキョロしてたけど、すぐあたしたちに気付いて、ピョンピョン跳んで手を振りかえした。
「あ〜ちゃんーーー!!のっちーーーー!!!」
叫びながら走ってきてあたしたちに抱きついたゆかちゃん。
「いやー!!日本半年ぶり!!やっぱ、日本が一番いいよ。
日本語が通じるって最高!!広島弁最強!!あー、おいっしー、白ご飯食べたーい。
元気だった?わざわざ来てくれてありがと。あっ、お土産買ってきたよ〜。2年ぶりだっけ?
なんか二人とも雰囲気が大人っぽくなった?ちゃんと仲良くしてる?」
開口一番のゆかちゃんはすごく饒舌だった。
あたしたちは圧倒されて全部ひっくるめての「うん!!」ってしか答えられなかった。
「んで、これからどうする?」
のっちが問いかける。
「あー、どうしよっか?ゆかちゃんは一度家に帰るでしょ?」
「うん。この荷物置きたいし。でも折角三人揃ったんだから、すぐバイバイって寂しくない?
あ!!のっちの家で飲み会やろうよ!!まだあのアパートいるんでしょ?」
「居るけど、うち汚いよ・・・」
「じゃあ、のっちは先に帰って掃除すればいいじゃろ」
あたしは出来るだけいつもの様にのっちに言った。
「うー・・・わかりましたぁ」
のっちもいつもの様にハノ字眉になった。
「じゃ、決定!!あ〜ちゃんとゆかちゃんは買出ししてから行くけぇ」
のっちは自分の部屋の掃除をする為に先に空港を後にした。
あたしはゆかちゃんの荷物を半分持ち、彼女の家へ行った。
ゆかちゃんは久しぶりの日本でハイテンション。
大丈夫。
あたしたちが別れた事は気付いてない。
ねぇ、のっち・・・いつまで”フリ”を続けるつもりなの?
最終更新:2009年04月09日 23:58