あの日
のっちの誕生日前日。
のっちとゆかちゃんが
抱きあってるのを
偶然、、、見てしまった。
状況は、あ〜ちゃんが想像していた以上に、深刻だった。
まさか、、こんなことになってるなんて・・・
あの日から、
胸の中の、もやもやが晴れない・・・
よし・・
日も、ずいぶん短くなり始めた頃
意を決して、ゆかちゃんのいる
写真部の部室へと向かった。
部員の子たちと入れ替わりに、部室へと入る。
ゆかちゃんと、二人きりで会うのは
しばらくぶり、だった。
互いに何も言えないまま
ただ、時間が流れる。
「・・あ〜ちゃん、、どうしたの?」
つぶらな瞳を、ぱちくりさせた彼女が呟く。
「・・学校では、ちゃんと名前で呼ぼうって
そう言ったの、、、、樫野先生、だよ?」
「・・西脇さん、、として来た、の?」
「・・・違う」
そうじゃない、、、生徒として、来たんじゃない、、、
はぁ。。。
ココロん中で、一つ、ため息をつく。
「ごめん、、ゆかちゃん、、、、この前見ちゃったんだ・・」
「・・・のっちのこと、どうするつもりなの?」
ゆかちゃんの表情が変わる。
曖昧で、、困った
彼女独特の、その表情。。。
以前は、それだけで
なにも言えなくなった、、、
けど
今は、少しだけ
意地悪したくなる。。。
「・・・もう、、今さら、“予定”は
変えられないんじゃ、、ないの?」
それくらい、察しがつくよ・・・?
「・・・うん、、、同じようなこと
この前、父親にも、、、言われた、、な」
えっ?
もしかして、、、あのお父さんに
なんか、話、、、、した、の?
「のっちのこと、、どう思ってるの?」
黙り込んでしまう、ゆかちゃん。。
「あ〜ちゃん、、、ゆかちゃんが本気なら
別に、、、いいんだ」
うん、ほんと。。
ゆかちゃんが、次へ向かって行けるなら
それに、こしたことはない、、、
けど、、、
あれほど
好きで好きで、仕方なった
あの人以外の人を
ゆかちゃんが
好きになるなんて、考えられなかった。
「けど、、、結婚は、止められない、よね?」
残酷なことを言ってるだろう・・・か?
「…うん」
「うぅん、、、それ以前に、ゆかちゃんは
あの人以外の人、ちゃんと好きになれるの?」
ひどいこと言ってるのかも、しれない。
けど・・・
だって、、、ねぇ
あの人は
それくらい、ゆかちゃんにとって
全て、だった、、、じゃない・・
ずっと傍でみていたから、わかる。
「・・・のっち、本気だ、よ?」
「・・・のっちのこと、、、傷つけない、で…」
だから
ただ、それを言うだけで
精一杯だった、、、
泣きそうになってるのが、自分でもわかる。
でも
だって
このままじゃ、、、
のっちが・・・・
っ!
扉が開く音で
我にかえる。
のっち、だ。
「・・あ〜ちゃん、どしたん?」
大きな瞳を見開いたままの、のっち。
あ〜ちゃんは
なんて言ったら、いいの?
「・・ちょっと、相談?、、、受けてただけ、だよ」
どう答えたらいいのか、わからないでいると
ゆかちゃんが、うまく“誤魔化して”くれる。
「・・大本さん。ごめんね、今日はもう、部室閉めちゃうんだ…
もちろん、現像したい、とかなら、全然使ってくれて大丈夫なんだけど?」
のっちは
「あ、、、、いや、ちょっと顔出しにきただけなんで・・・」って。
そのコトバが胸にささり、
いたたまれなくなって、部室を後にした。
「そっか、、、じゃ、またね」
ゆかちゃんのコトバがさらに
追い討ちをかけるよう、ココロを締め付ける。
なにも言わなかった。
下駄箱で、靴を履き替える。
なにも言えなかった。
そんなあ〜ちゃんのあとを
のっちは、そろそろ、とついてくる。
「あ〜ちゃん?・・・なんで、写真部の、、部室におったん?」
沈黙を破ったのは、のっち。
少しずつ動きだす、時間。
「のっち?」
「この間、、、見ちゃったんだよね・・
のっちの誕生日の前日、、、部室で、二人でおるとこ・・・」
「あ、、、」
のっちは、コトバにつまる。
「あ〜ちゃんだったから、よかったものの
他の人に見られたら、どうするつもりなん?」
言いたいことは、そんなことじゃないのに。。
「・・・のっち…、、、、ゆかちゃんのこと、、
本気、、、なんだよ、ね?」
この口は、止まってくれそうにない。
「ゆか、、ちゃん、、て、、、先生?」
「・・・うん、本気で好き、だよ」
「だったら、なおさら、、だと思う。
バレて、大変なことになるの、、、先生、だよ?」
ダメ…
「本気で好き、だからで、すむようなことじゃないんよ?」
この口は、止まりそうにない、
反して、歩みが止まる。
振り返る。
瞬間、目が合ったのっちは
見たことないような、オトナな表情をしていて
思わず、視線を逸らしてしまった。
ねぇ。。あ〜ちゃんはどうしたらいいの?
どうすることが、
のっちのために、なるのだろう・・?
だって…
だって・・・
「あ〜ちゃん?」
のっちの声が、静かに頭の中に響く。
思考は定まらない。
けど、相変わらず、この口は止まってはくれない。
「ごめん、のっち」
「あ〜ちゃん、ほんとはこんなこと
言いたく、、ないんだけど・・・」
「ゆかちゃん、、、、“付き合ってる”人、おる、よ?」
「えっ、あ、、そなんだ」
のっちの反応に戸惑う。
そんなもん・・?
「・・驚かないん、、、だね?」
「いやぁ、、、まぁ、、、そうかもって
…そう感じるようなことも、、、あったし」
そっか、
わかんないわけない、、か。
「てか、、、ゆかちゃん、、、て
妙に、親しげなんだけ、、、ど?」
あ、しまった。
必死すぎて、つい・・
もう取り繕っても仕方ないだろう・・・
「…親戚、、、遠縁にあたる親戚のお姉さん、、、なんよ」
そして、
ずっとずっと・・・好きだった人。。。
「あ、なるほど、、、、、ね」
一つ、なぞが解けたような表情をするのっち。
「・・のっち?…それでも、、、いいの?」
「んー・・・よくは、、、ない、けど・・
…それでも、、関係ないや」
思わず、顔をあげてしまう。
あたしは今、どんな顔、、、してる?
「言ったじゃん?・・今までとは、、違うんだって…」
のっちはやっぱ
今までにない表情をしていた。
それだけで
多くを語らなくても
ゆかちゃんのことが
好きで仕方ないこと、が伝わってきた。
それは
まるで、あのころの
ゆかちゃんを思い出させて・・・
思わず泣きそうになる。
「・・・のっちぃ・・・・
今なら、、、引き返せ、、る、、、よ?」
どうにか絞りだした、コトバ。
伝えきれなかった、想い。。。
「・・・ごめん、、、ほんと
今は、離れることは考えられんの、よ・・・」
そう、のっちは呟いた。
のっち?
もしかしたら、あの瞬間が
最後のチャンスだったのかもしれないね。。
きちんと伝えられていたら・・・
いたら、、なにか変わっていたの、、かな?
でもね、これだけは信じて?
のっちの幸せを願うキモチに
偽りはなかった、と。
最終更新:2009年04月10日 00:02