あ〜ちゃんがいる駅のホームに着いた。
きょろきょろとその場を見回すと、ベンチに腰掛けるふわふわの髪をしたキミの背中を見つけた。
その背中を見て、やっぱりどうしようもなく愛おしいと思った。
今すぐ駆け寄って後ろから抱き締めたかったけど、その衝動をグッと抑える。
走ってきたために乱れていた息を少し整え、その背中に声を掛ける。
「あ〜ちゃん」
振り向いた彼女の視線はなんだか不安定に揺れていて、なかなかのっちを捉えようとはしない。
一歩、また一歩と距離を縮める。
あ〜ちゃんの目を真っ直ぐに見つめる。
「隣、座るね?」
返事も訊かず、隣のベンチに腰掛けようとするとあ〜ちゃんは頬を膨らませ怒ったような顔をした。
「まだいいって言ってないけぇ、座らんとってよ」
「ぁ、ご、ごめん…」
慌てて離れようとしたら、あ〜ちゃんに袖の裾をギュッと掴まれた。
「…やっぱもういい、座っとって」
「へっ!?」
そう言い、あたしの服の裾を掴んでた手を手首に移動させたかと思うと、下にグイッと引っ張って座らされた。
あれれ?
なんだなんだ?
これってもしかしてデレ状態のあ〜ちゃん?なんかな??
なんかめちゃくちゃ可愛いんれすけろー!!
思わずにやけていると「のっちキモい」って言われちゃった。
調子乗りました、すみません。
でも手首掴まれたままなんですけど…。
触れている部分からあ〜ちゃんの熱が伝わってきて妙にドキドキしちゃうよ。
「…話あるんじゃろ?」
「あ…うん」
「なに?」
「あの、さっきはあんな風に言っちゃってごめん。怒ってるよね…?」
恐る恐る聞いてみる。
「なんであ〜ちゃんが怒るん?別にのっちがゆかちゃんのこと好きでも2人が付き合っててもどうでもいいけぇ」
「あ〜…はは、そっかぁ」
そう言われちゃうと身も蓋もないというか、あ〜ちゃんにとってのっちはどうでもいい存在ってことなんかなぁ。
———でも。
のっちはどうでもよくないから。
あ〜ちゃんに誤解されたままは嫌じゃもん。
「あ〜ちゃんがどうでもよくても、のっちはどうでもよくないけぇ」
そう言い、あ〜ちゃんに握られてない方の手であ〜ちゃんの髪に触れる。
あ〜ちゃんはビックリしたみたいで、あたしの手を払いのけようとする。
その手を掴み、一層距離を詰める。
あ〜ちゃんはしばらく抵抗していたけど、思ったよりも手に加わる力が強いことに諦めたのか、伏し目がちに俯く。
「あ〜ちゃん、好き」
「っ…いきなり意味わからんし、こんなん…浮気になるじゃろ」
「ならん」
「なるよ!さっきだってゆかちゃんと抱き合ってたじゃん!」
「あっあれは、その、誤解っていうか策略っていうかなんていうかー…」
寧ろのっちが一方的に抱き締めてただけで…ゆかちゃん怒っとったし。
「もういい…。はよゆかちゃんとこ戻りんさいや!」
そう叫んだかと思うと同時にキミの瞳からは堰を切ったようにポロポロと涙が零れ落ちてくる。
あぁ、どうしよ…。
泣かせたくなんかないのに、笑っててほしいのに。
どう言えばキミに届くの?
「っ…の、のっちにと…て、あ〜ちゃ…って…ふ、ぇ…っなんなん…?」
あぁ…そうだ。
さっきゆかちゃんが言ってくれた。
計算や駆け引きなんていらない。
のっちはのっちらしく真っ直ぐにあ〜ちゃんを想い続けとったらいいんだ。
真っ直ぐにこの気持ちを伝えたらいいんだ。
「そんなん一番大切な人に決まってるじゃろ?」
「…嘘」
「嘘じゃないけぇ。浮気っていうのは他に本命がおるから浮気なんじゃろ?じゃけぇのっちにはあ〜ちゃんしかおらんから浮気じゃないの!信じてよ!!」
早口で一気にまくし立てると、あ〜ちゃんは驚いた表情でのっちを見た。
「ほんま、に?あ〜ちゃんのこと好き?ゆかちゃんより?」
「そんなん比べれん…あ〜ちゃんとゆかちゃんじゃ好きの意味が全然違うけぇ」
あ〜ちゃんの背中に腕を回し、強く抱き締める。
「こうやって抱き締めたいって思うんも、愛しいって思うんも、キ、キキ、キッスしたいって思うんもあ〜ちゃんだけだよ?」
「…なんでそんな大事なとこで噛むん」
「だ、だってさぁ〜」
…恥ずかしいんじゃもん。
「もうわかったけぇ、あんたの気持ちは」
「ホンマ?」
「うん、あ〜ちゃんはのっちに愛されとる」
「ちょ…っ恥ずかしいけぇ言わんでよ」
「だってホンマのことじゃろぉ?w」
あ、やっと笑ってくれた。
やっぱりあ〜ちゃんは笑ってる方がいいよ。
その笑顔をちゃんと見たくなって、背中に回してた腕の力を緩め、あ〜ちゃんの顔を覗く。
すると頭をぺちんと軽く叩かれた。
「いだっ」
「メイク崩れとるんじゃから、そんな見ちゃいけんの!」
「えぇっ…駄目?」
「だーめ。誰のせいで泣いたと思っとるんよ、もう」
「泣き顔なんて何回も見とるんだから別にいいじゃーん」
「よくないの!もぉ…のっちはもっと女心を知らんといけんね」
女心って…のっちも一応女の子なんれすけど。
あ〜ちゃんみたいに可愛い、まさに女子の中の女子!ではないけどさ。
「…のっちぃ」
甘くとろけそうな声で名前を呼ばれたかと思うと、のっちの胸元に顔を埋めてくるあ〜ちゃん。
ありゃ、これじゃホンマに顔見れんね…残念。
まぁ気持ち伝えれたから、良かったかな?
ていうか今の声反則じゃろ!
のっち今絶対だらしない顔しちゃってるね…へへっ。
こんな近くにあ〜ちゃんがいて、体温を感じていられるなんて、幸せ過ぎて信じらんないよ。
…ん?
でもなんか忘れてないか?
ハッと気付く。
自分の気持ちばっか伝えて、肝心のあ〜ちゃんの気持ち聞いてなくね!?
駄目じゃん、のっち!!
最終更新:2009年04月10日 00:21