のっちはあ〜ちゃんを後ろから抱きしめる形でお湯に浸かっている。
2人でお風呂に入るときはいつも決まってこの体勢。
のっちはこの時間が大好き。
あ〜ちゃんがaikoさんの歌を歌う。
首を左右にこてこてと傾けながら。
それはそれは気持ちよさそうに、歌う。
あ・・・そろそろサビ。
サビに入ると白濁したミルクのお湯に隠れたのっちの手首を掴んで
無理やり手拍子をさせる。
うん、これもいつものパターン。
濡れてボリュームダウンしたあ〜ちゃんの髪は
白いもち肌の肩や背中に張り付いてなんかすっごくセクシーだ。
のっちの手首を掴んで手拍子をさせる、子供みたいなあ〜ちゃん。
透き通った少女のような歌声のあ〜ちゃん。
濡れた黒髪が大人の女性って感じのあ〜ちゃん。
そんな魅力的な彼女を後ろから抱きしめることで、
あ〜ちゃんは全部のっちのものなんだなぁ、なんて愛しく、誇らしく思ってしまう。
そんなこと言ったら、「あ〜ちゃんはものじゃないけぇ」って怒るかな。
歌い終わったあ〜ちゃんは首を左に傾けた。
いつも通り、のっちはあ〜ちゃんの右肩にあごを乗せる。
右手は右手と、左手は左手とそれぞれ絡める。これもいつも通り。
「・・・のっち」
「んー?」
いつにも増して、甘えた声。
「今日も、番号・・・聞かれてたね?」
ん?あぁ、ケータイの番号か。
今日、一緒だったバンドのベースの人に聞かれたっけ。
「あー、うん」
確かに・・・のっち、かっしーやあ〜ちゃんと違って、
なんか上手く断れないことがあって。
最近はしつこくされると断るのもめんどくさくなって、結局教えちゃったりするんよね。
「教えないでとは言わんけど・・・あ〜ちゃんが不安に思っとるの・・・わかる??」
あ・・・。やば。のっちそこんとこ良く考えてなかった。
だってその人とどうにかなるなんて有り得ないし、その場を切り抜けたいから教えちゃうだけだし。
自分がしっかりしてれば、ケータイの番号なんてどうってことないって思ってた。
でもそれがあ〜ちゃんを不安にさせちゃってたのか。なんで気づかないんだ!!アホのっち。
「ごめん・・・のっちアホじゃけぇ気づかんかった。
誰に番号教えても、アドレス教えても、のっちはあ〜ちゃんしか見てなかったからさ」
あ〜ちゃんの右肩にキスを落とし、表情を確認しようと顔を覗き込むと
「もー、モテる人の彼女はつらいんじゃけぇね!」
プイっと反対側を向いてしまった。
見事にほっぺたが膨らんでる。
頬を膨らませて怒ってるときは、謝ったら許してくれるサインなんよね?
ホントは誰にも教えて欲しくないんでしょ?あ〜ちゃん?
って言葉は飲み込んで。
「ごめん。のっち、もー教えんけぇ あ〜ちゃんこっち向いて」
あ〜ちゃんがあまりにも可愛くて、謝ってるのに顔がにやけちゃう。
だってあ〜ちゃんがこういうヤキモチ焼いてくれるなんて。
怒られちゃうかもしれないけど、正直めっちゃ嬉しいんよ?
「あ〜ちゃんしかいらん。他の人なんて、いらんからマジで」
耳元で囁く。バスルームでさえ響かない、小声で囁いた。
のっちのほうに顔を戻したあ〜ちゃんのほっぺはもう膨らんでなくて。
「じゃぁ 恋愛偏差値が低いのっちに、あ〜ちゃんが上手い断り方伝授してあげるけぇ」
「よろしくお願いします、先生」
あ〜ちゃんがのっちの頼りない顔を見てクスっと笑った。のっちもつられて笑った。
あぁ、ミルクの甘い香りに包まれたあ〜ちゃんを、のっちが包みたい。
そんなことを思っていると、あ〜ちゃんがのっちの首に腕を回して
「・・・ねぇ、して?」
なんて言うから。
やっぱりあ〜ちゃんはのっちのもの、ね?
これから ミルクなんかよりもっと、もっと甘い、時間。
最終更新:2009年04月10日 00:30