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ゆかちゃんに想いを伝える。
でも、その前にちゃんとしなきゃ。



「近藤さん、今良い?」
学祭前日、体育館で明日の劇の準備をしていた近藤さんを呼び出す。


人を呼び出すのってこんなに緊張するんだな…。

体育館裏に出て、向かい合ったまま私は俯いてしまった。
クラスメイトの声が微かに聞こえる。



言わなきゃ…


「あの〜…キ、、、キスのこと…なん、、れすけど…」
チラッと見た近藤さんの頬が赤い。
けど、揺るがず見つめてくる瞳に私は顔を上げた。
しっかり、近藤さんの瞳を見据えて
「…本番には出来ません。ごめんなさい」
頭を下げた。
「…」
「…」
「…うん、わかった」

頭を上げると、少し涙目で笑顔の近藤さんがいた。

「…ごめんね。でも、ありがとう…」
「んん、こちらこそ、ありがとう」
「ごめん」
「…良いよwほら、戻ろ?これからリハーサルだよ?」


軽い足取りで体育館に戻る近藤さんの背中を見て、なぜか切なくなった。




「のっちぃー」
体育館に戻ろうとしたら、いきなり後ろから声がして振り返ると…
「あれ?」
いない?
「うえぇー」
上?


見上げると、あ〜ちゃんが特別棟の三階の窓から顔を覗かせていた。
「あ〜ちゃん!」
覗いてたのw
太陽で顔は良く見えなかったけど、あ〜ちゃんは確かに笑ってた。
そして、大きく頷いた。

あっ、のっち良くできた?


でも、素直に笑えないのは、失恋する痛みをしってるからだね。


リハーサルを終え、体育館を出ようとしたら、入り口でゆかちゃんとすれ違った。

学祭の開会式の準備なんだろう。
一瞬目が合ったけど、すぐ反らされた。
胸がチクッと痛かったけど、
逃げ出したくなったけど、
グッとこらえた。

「ごめん、先教室帰ってて」
そうクラスメイトに伝え、私は体育館に戻った。




体育館でゆかちゃんは私に背を向けて誰かと話してる。




「ゆかちゃん」

声をかけると、ゆかちゃんはビクッと肩が震えた。
でも、お構いなしに近づいてゆかちゃんの腕を掴む。
「なっ何よ!?」
「ちょっと来て」
強引に腕を引いて、体育館から出ようとする。
「離してよ」
「ヤダ」
離したら、もう会ってもくれなくなりそうだから。
「…のっち、、」





体育館の入り口まで来て、ゆかちゃんは無理やり腕を離そうとする。
「のっち!」
「聞いてほしい事があるんよ」
ハッとしたゆかちゃんは、その場に固まった。

掴んでた腕を放して、ちゃんと向かい合う。
「ゆかちゃん」
呼んでも、俯いたまま顔を上げてはくれない。
「明日の劇観に来て?」
「…いかん」
「明日の劇の、のっちの最後の台詞、ちゃんと聞いとって」
「…いかんよ」
「ゆかちゃんに言うから…」
「いかんって言ってるじゃん」
「ゆかちゃんの為に、、言うから…」



のっちの最後の我が儘、聞いて?
「観に来てね」


生徒会長の開催宣言で始まった学祭は他校の生徒や保護者で溢れかえっていた。




賑やかな校舎同様に、体育館も異様な熱気が漂っている。
私にも解る。
ライブに行ったときの、始まるまでの期待や興奮。
あれに似てる。





「大本さん準備大丈夫?」
「うん」
本当は何に一つ大丈夫じゃない。
お芝居どころじゃない。
ゆかちゃんは来てくれてるかなぁ…
あ〜ちゃんは引っ張ってでも連れて行くって言ってくれてたけど…
てか、ゆかちゃんがあ〜ちゃんに引っ張られてるのって、、、変な感じw

あっ、のっちまだ笑えてる。



舞台袖で1つ大きく深呼吸をした。





—…ブー





開演のブザーがなり、ざわついていた客席が静かになるのが解った。
この静けさの中にゆかちゃんはいるのかなぁ…。




幕が開く
劇が始まる




神様、どうか…





『あー…あの星は、暗闇があるからこそ輝くのか』





どれほど客席を見渡しても、




ゆかちゃんは居なかった。







最終更新:2009年04月10日 00:47