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もう夏休みは目の前だった。
今日は成績処理日で学校は休み。
昼まで寝てしまった自分を戒めるため、クーラーは付けずに扇風機だけで過ごしていた。
暑くて死にそうになっていたところに突然携帯が鳴る。
のそのそと携帯を取りに行くが、表示された名前を見て身体が引き締まってしまった。


「も、もしもし」
『もしもし?今のっちのマンションの下まで来てるけぇ、鍵開けときんさい』
「えっ!?ちょっと待っ…」


切られた。


あの帰り道以降もあんまり話してなかったから
久しぶりに聞く声に胸が弾む一方で、
のっちの家に来た理由がわからないでいた。
服…かな?
でもなー。
置いていった服なら、明日でも渡せた筈だし。
電話が切られた数十秒後、ドアが開く音と同時に「暑っ!」と言う声がする。
そしてドタドタと袋を持ったあ〜ちゃんが目の前に現れた。



「のっち、暑い!!なんでクーラーつけとらんの!」


そう言ってあ〜ちゃんはクーラーのリモコンを操作する。


「どうせ今の今まで寝とったんじゃろ!」
「う…はい。」
「ったく、ほんまに。室内温度38℃?!のっち干からびるよ!!」


あ〜ちゃんは袋の中からまだ冷たいペットボトルのジュースをのっちにくれる。


「それ、飲みんさい」
「ありがと…。ぷはー…生きかえったー」
「ふふ、のっちおっさんじゃ」


あ〜ちゃんの笑顔も久しぶり。
なんだか嬉しい。
クーラーが効き始め、あ〜ちゃんがのっちの部屋をキレイにした後、
袋から取り出されたものはやっぱりあの日忘れたのっちの服だった。


「ごめんね。これ、ずっと返し忘れとったから。」
「のっちもごめん…浴衣返してなかった。
でもこれ、明日でも良かったのに…」
「何言うとるん、明日学校帰りに浴衣持って帰れって?」
「いや、そ、そう言う訳じゃなくて!い、つれも良かったんれす、はい!!」
「のっち、噛みすぎじゃ。」


あ〜ちゃんの突っ込みに自然に笑える。
そんな空気さえ嬉しかったのに。


「夏休みになったらあんまり会えんじゃろ?この服、夏休み持ち越したくなかったんよ」


あ〜ちゃんのその言葉を聞いて、辛くなった。


「あー…ごめん。なんか、悪かったね…」


あ〜ちゃんから服を取って、箪笥にしまう。
浴衣を返そうと立ち上がった途端、服の裾を引っ張られる。


「あ〜ちゃん?」
「待って、聞いて!
その服見る度に胸が苦しくなったんよ…」
「だから、ごめんって!早く浴衣返すから離してよ」
「違うの!!」


さっきと空気が変わる。
振り返ると紅い顔したあ〜ちゃんがいた。


「のっちのこと、嫌いだから胸が苦しくなったんじゃなくて。」


「のっちが好きだから、苦しくなったんよ。」


耳を疑った。
今、好きって言った?


「見たら、のっちを思い出しちゃうから…」


消えそうなぐらい小さな声で話すあ〜ちゃん。
やっと自分が勘違いしていたことに気がつく。
そして次の瞬間、耳まで真っ赤にしたあ〜ちゃんを思いっ切り抱きしめた。






最終更新:2009年04月10日 01:25