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◆A-side◆

「どうするんどうするん、どうするんよ!」
「…内科検診かぁ、すっかり忘れとったねぇ」
パニックのあ~ちゃんを余所に、のっちはマイペース。いや違う。絶対何か企んでる。
内科検診と言えば、お医者さんが聴診器で胸とかポンポンするアレだ。軽くセクハラ紛いの。
お医者さんに見られるのは、この際どうでも良い。だけど問題は、のっち。
「いやーこればっかりは仕方無いねぇ」
のっちがニヤニヤ笑う。
このやらしい顔…。ダメ!絶対ダメ!見る気だ、絶対見る気じゃろ!
「のっち、見たらどうなるか分かっとるじゃろうね」
満面の笑みで言ってやった。顔は笑っていても、もちろん心の中では殺意が渦巻いている訳だが。
のっちが涙目でビクッてなった。察してくれたみたいだね。良かった良かった。

◆◇◆◇

昼休みが終了した。
クラスの子達と保健室に向かう。保健室の前には長い列が並んでいた。その最後尾に、のっちとゆかちゃんを発見。あ~ちゃんは走って二人の元に向かった。
「お、あ~ちゃん」
気付いた二人は笑顔で迎えてくれた。あ~ちゃんは二人の間に入る。


「列長いねぇ」
「あと30分くらい待たんなんのでない?」
はーまだまだじゃないか。ヒマだねぇ。まぁこれで授業が潰れるんだから嬉しいけど。
保健室から出て来る生徒達が、何やらヒソヒソと話している。どうしたんだろ。
「どうしたん?何かあったん?」
あ~ちゃんは声を掛けた。話し掛けられた子達が驚くと同時に頬を赤く染めた。ほーう、皆のっちにはこんな反応をする訳ね。モテモテじゃのう相変わらず。
「なんか、医者の先生の目が超やらしいの」
「ニヤニヤしてて気持ち悪くてー」
なるほど。それで出て来た子達が皆、嫌そうな顔をしていたのか。そりゃ気分悪くなる。女の敵だ。
「けどお医者さんじゃから何も言えんしねー」
「医者の特権?」
こればかりは、どうしようも無いよね。先生に言っても意味無いだろうし。
話し込んでいると、いつの間にか列は進んでいた。のっち達は保健室の中だ。
「教えてくれて、ありがとね」
そう礼をして、二人の元に向かう。とにかく伝えよう。何も変わらないと思うけど。

◆◇◆◇

「えーほんまに?」
「そんな羨ま…じゃない、不届きな!」
のっち、今一瞬、本音出たね?


そんなこんなで、次はのっちの番。
「見たら承知せんよ」
「分かっとるって!」
そう言って、仕切りになっているカーテンの向こうに、のっちは姿を消した。

◆N-side◆

カーテンの向こうには、中年で小太りなオジサン(多分先生)とかなり年配のオバサン(多分助手の看護婦さん)がいた。
このオジサンが噂の…。確かにやらしい顔しとるわ。のっちは静かにオジサンの前に置かれた椅子に座った。
「前開けますねー」
そう言って、オバサンがのっちの制服の前の所を捲りあげた。もちろんブラも。ちょっと、まだ心の準備が出来てないよ。
「ジッとしててね」
オバサンが動けない様に肩を掴んで言う。意外とバカ力だ。
どうしよう。今、視線を下ろせば、あ~ちゃんの胸が…。いかんいかん。考えるな、邪念を捨てろ!
のっちはギュッと目を閉じて耐える。あ~ちゃんの信頼を、裏切る様な事はしたくないんだ。昨日ののっちは生まれ変わったんよ。もうのっちの心には天使しかいません。
オジサンが聴診器を当てる。ヒヤッとして、気持ち悪い。
「緊張してるのかな?ちょっと心拍数が多いねぇ」
うわっ声までやらしい!


オジサンの手(らしき物)が胸に触れた。ハッとした。オバサンの手を振り切って、制服を直す。
「あ~ちゃんに触るな!」
もう、自分でも何が何だか。
のっちはそう叫んで、カーテンを開け、保健室を飛び出した。皆が驚いた顔で見ていた。けどそんなの、ちっとも気にならなかった。

◆◇◆◇

辿り着いたのは、屋上だった。乱れた息を整える。
やってしまった。ついカッとなって…。どうしよう。あ~ちゃんに怒られる。
「のっち!」
声がした方に目をやると、入口にあ~ちゃんがいた。
ヤバい。とんでもない事をやらかしたんだ、絶対怒られる。
「なんで、あんな事したんよ」
顔を直接見る勇気が無くて、うつむく。
「ごめん…」
「ごめんじゃ、分からんよ」
なんだか、慰める様な優しい声。怒ってる訳じゃないのかな。逃げ出した理由は…簡単な事なんだ。
「あ~ちゃんの体…誰にも触らせたくないんよ」
相手は例え、お医者さんでも。今回は変態ぽかっただけ余計にね。
「…のっち…」
絶対バカだって思われた。幻滅された。嫌われた。もう、今すぐ消えて無くなりたい。


「このヤキモチ焼き」
そう言って、抱き締められた。何が起きたのか分からなくて、慌てて状況整理。
「ほんま、ヤキモチ焼き屋さんじゃね」
小さく笑うあ~ちゃん。なんで、何がおかしいんよ。すっごく恥ずかしい気分。多分、のっち顔真っ赤だろうな。
「相手はお医者さんじゃろ」
「お医者さんでも嫌なもんは嫌なの!しかも超やらしい顔しとったけぇね」
一発くらい殴ってやりたいよ。笑うあ~ちゃんが、体を離す。温かい体温が、去って行く。
「おかしーのっち」
「そんな笑わんでよっ!」
目に涙を浮かべて、腹を抱えて笑ってる。でも、怒ってないみたいで、なんか安心。ホッとした。
「ありがと、のっち」
そよ風が髪を弄ぶ。
「嬉しかったよ?」
眩しい笑顔に、目が眩んだ。自分の笑顔のくせに、なんでこんなに眩しいんだろ。
「はい撤収~」
そう言って中に入ろうとするあ~ちゃん。
「今度二人で、診断書持って病院行けば良ぇじゃろ」
そっか。休んだ人とかはそうなんだっけ。やった。デートじゃないけど約束しちゃった。
「あ、」
思い出した。気持ち悪いあの出来事。思い出したくもない。
「胸触られたんだった」
「え?先生に?」
「のっちも触った事ないのに…」
そうしょんぼり呟くと、あ~ちゃんは苦笑いを浮かべた。

◆8:End◆







最終更新:2008年10月10日 16:55