(K)
頬に生暖かい感触
優しい優しいキスをくれてるのっち
気持ちよくて、でもくすぐったくて、ゆかもしたくて
顔をそむけて唇から逃げた
「あっごめんやだった!?」
焦った感じにパッと後ろへ引いたのっちの頭をまた引き寄せて
少し赤い頬に真似して口づける
目が合うとお互いふふって笑って、また頬に戻った
ゆかが終わるとのっちが
のっちが終わるとまたゆかが
交互に繰り返されるその行為に終わりは見えなくて
愛しさが爆発しそうになる
頬に落とされてた唇がおでこに変わって、それが終わりの合図みたいに
のっちはキスするのをやめて、またゆかを抱きしめた
「くふふっ」
「何笑ってんの?」
「ん?いや〜幸せだなって思って」
「幸せ…?」
「うん。超幸せ〜」
のっちからそんな言葉を聞く時がくるとは思ってもみなかったから
いつの間にか止まっていた涙がまた溢れ出しそうになる
のっち
ゆかも、幸せだよ
ゆかの方が幸せだよ
言葉にしようとすると声がつまって、
封を切ったかのように泣いてしまいそうだから
心の中で何度も唱えた
幸せだよ
「もうこんな時間かぁ…」
のっちの声につられて、つむっていた目を開ける
気付けば夜中の3時前で、どう考えても寝なくちゃいけない時間だった
「よし、んじゃのっち帰るね」
「えっ!帰っちゃうの?」
「うん。明日も朝から学校だしとりあえずちょっとでも寝なくちゃ」
さも当たり前かのようにそう言い放つのっちは
そそくさと帰り仕度を始めだした
「でももうすっごい遅いから危ないけえ、泊まっていきなよ」
「…や、それは…ねえ」
ぴたっと止まって何か考えてるのか、曖昧な表情を見せる
「…なんもせんよ?」
「なっ!何言ってんの!」
「しっ…声おっきい」
「ご、ごめん…いやでも泊まるのはちょっと…」
「…一緒に寝るの嫌だったら、ゆかリビングのソファー行くよ?」
「やな訳ないじゃん!むしろ寝たいよ!」
「声…」
「ごめんなさい」
「じゃあ決定ねっ。絶対帰さんってか帰せんよ。こんな夜中に…」
「ん〜…うん、わかった。」
困ったような、少しにやけたような曖昧な表情のまま、
それでも承諾してくれた
こんな夜中に帰せるわけないよ
(N)
ゆかちゃんのシャワー待ちのこの時間
正直こっそり帰ってしまおうか迷っている
だってだって!だってさぁ…
一緒に寝るとか…ゆかちゃんは何もせんって言ってたけど…その…のっち側が大変だよね色々と
あーやばいな〜我慢できるかな〜
場所的に絶対何かしちゃダメなとこだよねここ
こっそりお邪魔してるわけだし…実家だし…もしもの時やばいし…
ああでも…自信、ない!!
ダメだやっぱ帰ろう!まだ間に合う!
そう決心してかばんを掴んで立ち上がり、ドアへと歩き出そうとした時
ゆかちゃんが戻ってきた
「…?どしたん?」
頬をピンク色に染めたお風呂上がりのゆかちゃんがキョトンとした顔でのっちを見た
なっなんと言う破壊力…!!
「…まさか帰ろうとし、」
「違います違います!してないです!」
緩んだ口元を慌てて締め直してそう反論すると
少し悲しげな顔で近づいてきた
「そんなにやなの…?」
違うんだってば…その顔とかやばいんだってば
口にしてしまうと、余計意識してしまいそうだから
心の中でだけに納めておくことにした
「そうじゃなくて!っちょっとトイレに…」
「ふーん…」
いじけた様子で、服の裾を握る姿がまた可愛い
「あっこれ貸すね。パジャマにして」
渡してくれたのは、ロンティーとスウェットだった
「あっじゃあトイレついでに着替えてくるっ」
とりあえず頭冷やそ…
部屋に戻ると、すでにゆかちゃんはベットの中にいて
うつぶせで体を腕で支えて携帯をいじっている
のっちが戻ってきたのに気付くと、パタンと携帯を閉じて仰向けに寝そべり、布団をめくった
「はい、どーぞ」
「あ…ありがと」
おずおずと空けられたスペースに入る
向かい合ったら何かハズレそうだったから、背を向ける形でゆかちゃんが見えないようにした
…けど…
「そっち向くん?」
「え?あ、うん。こっちの方が寝やすい、し!」
ゆかちゃんが後ろからぎゅっと抱きついてきた
「こっち…向いて?」
「む、無理です」
「背中なんか見たくないよ…」
「いや、でも」
「…お願い」
そんな可愛い声でそんなこと言わないで
のっちじゃなくても拒否できんよ絶対…
「わかったから…ちょ、離れて?」
意を決して体の向きを変える
一瞬目が合ったけど、すぐに俯いてそらした
「のっち緊張しすぎ」
そんなクスクス笑って…なんだろ、なんか全部の仕草が可愛いすぎでしょ
「ゆかちゃんは緊張せんのん?」
なんだか自分だけがこんなにドキドキしてるみたいで悔しくなってきた
「…してるよ?」
いつもより少し低めのその声に心臓も脳も敏感に反応を示す
「しないわけないじゃん…」
そう言いながらも、君は簡単に距離をつめる
さっき抱きしめてた時くらい近い
体も、顔も、心臓も…全部近い
「絶対うそっ」
「うそなんか言わんよ…」
「じゃあなんでこんな近くくるん?のっちドキドキして死にそう…」
「好きだからだもん」
「好きだから近くにいたいだけだよ」
ストレートな言葉が胸に突き刺さると、刺さった所がジンジンと痛みだした
背中に腕が回されて、今度はズキズキと痛みだす
のっちはいつか、ゆかちゃんに殺されてしまうのかも
そんなバカげた事が脳裏によぎるくらい、胸が苦しくなった
最終更新:2009年04月14日 22:58