【N】
ゆかちゃんの前で泣いてしまった後くらいから、しょっちゅうゆかちゃんからメールが来るようになった。
『なにか困った事があったなら、相談にのるよ』
『話をするだけでも、楽になるって言うじゃろ?ゆかは、いつでものっちの話を聞くよ』
『のっちが辛い思いしてたら、ゆかは助けにいくよ』
どうやら、あたしはゆかちゃんに心配させている・・・みたい。
このメールを打っているゆかちゃんを、想像するとちょっと笑える。
どんだけあたしの事心配してくれてんだよって。
ほんと、どんだけゆかちゃんに心配させて、どんだけあ〜ちゃんを傷つけちゃったんだろ・・・。
『明日ひま?暇なら気分転換にでもどっか出掛けない?』
ゆかちゃんはどこかであたしを監視でもしてるんだろうか?
ネガティブ思考になった途端に、遊びのお誘いのメールが来てビックリだよ。
あたしはこのメールは嬉しかった。
嬉しかったから、迷わずOKの返信をした。
ゆかちゃんは何故か蛇が見たいって言い出して、明日は動物園に行くことに。
が、当日になったら土砂降りの雨で動物園は中止にして、うちでまったり過ごすことになってしまった。
「あー、なんでこんな雨降るのよ!!」
ゆかちゃんは窓際に向かって文句を言っている。
「そんなに蛇見たかったの?w」
「それもあるけど・・・」
口をとんがらしてソファーに座るゆかちゃん。
「外に出て、のっちの事励まそうと思ったのに・・・」
聞き取れないくらいの小さな声。
「かっしー、ありがとね・・・」
あたしは素直な気持ちを伝える。
「ねぇ、のっち。ゆかはのっちの為に何が出来るかな?何でも言って、力になるけぇ」
あたしの目を見て真剣な面持ちのゆかちゃん。
「大丈夫よ・・・。かっしーは、今まで通りにしてて」
その真剣で真っ直ぐな目を見れなくて逸らしてしまった。
ヤバイ・・・。ゆかちゃんは、あたしの事を本気で心配してくれてるのに。
あたしは心臓の鼓動が早くなるばかり。
苦しいよ。胸が苦しいよ。
こんな状態でゆかちゃんの事が好きだなんて言っていいの?
「なんで、頼ってくれんの・・・。ゆかって、そんなに頼りないん?」
「そ、そんな事ないよ・・・」
「そう?」
「うん!」
「じゃあ、何かゆかに頼んで?」
「え〜と・・・あ!!お昼ごはん作って?」
「何それ・・・」
「あ・・・ダメ?」
あたしは笑って誤魔化す。
「・・・いいよ。作ってあげるけぇ」
ゆかちゃんはそう言って台所へ行ってしまった。
ゆかちゃんはあたしの誤魔化しを受け入れてくれた。
もっと突っ込まれるかと思ったけど、彼女はそうしてこなかった。
その距離感が心地よかった。
それからゆかちゃんはピラフを作ってくれた。
野菜は全部あたしの皿にのっけてきた。
野菜嫌いは2年経っても変わらなかったんだね。
食後は好きなミュージシャンのライブDVDを二人で見た。
二人でこの曲かっこいいよねとか、今度ライブ行きたいねとか、会話が弾んだ。
あたしはゆかちゃんといるとなんて言うか・・・楽だ。
変に気を使わないでいいのが楽。
この楽な雰囲気が好き。
妙な安心感が心地よかった。
比べるのはどうかと思うけど、正直あ〜ちゃんといる時はこんな事は思わなかった。
もちろん、あ〜ちゃんといても楽しかったし、幸せだった。
けど、やっぱなんか違ったんだ。
【K】
のっちは楽しそうにDVDを見ている。
たまに流れてくる曲に合わせてリズムとったりしている。
「ねぇ」
「んー?」
のっちは息だけの声で返事をした。
「ほんとに、これで終わりでいいの?」
「なにがー?」
目線を液晶画面からあたしに向けた。
「あ〜ちゃんの事・・・」
「・・・」
のっちはあたしの顔を見るなり固まってしまった。
「のっち、まだほんとはあ〜ちゃんの事好きなんじゃろ?もう一回やり直しなよ!ゆかも協力するからさ!」
あたしはのっちを説得するため熱弁を奮う。
「・・・無理だよ」
目線をあたしから液晶画面に戻した。
「無理って・・・初めから諦めたらいけんよ!ちゃんと話し合えば、あ〜ちゃんは絶対わかってくれるけ!」
あたしは喋りながらDVDの電源を消した。
「あー!!なんで消すん。見てたのに・・・」
「のっち!」
「あ〜ちゃん、はっきり口では言ってないけど、まだのっちの事好きだと思う・・・」
「・・・わかってるよ」
「わかってるなら・・・どうして、応えてあげないの?」
「もう、応えられないよ・・・」
のっちはソファーの上で膝を抱えて小さくなってしまった。
「あ〜ちゃんの事好きじゃなくなったん?」
「・・・わからん」
あ〜ちゃんと同じ答えが返ってきた。
「わからんけど・・・あ〜ちゃんと、このまま付き合ってたら、ずっと罪悪感を背負い続けると思ったら、怖くなった・・・」
のっちの声は鼻声になっていた。
「罪悪感なんて・・・のっちがそんなん感じなくていいんよ!ゆかのせいなんだから・・・」
「あ〜ちゃんとは・・・元に戻りたい・・・」
「そうでしょ!ゆかが、ちゃんとあ〜ちゃんに話すから。のっちのせいじゃ・・・「そうじゃなくて」
あたしが喋ってるところを、のっちが被ってきた。
「そうじゃなくて・・・そういう関係に戻りたいんじゃないけ・・・
出逢った頃みたいな、友達に戻りたいんよ・・・」
その声は今にも消えそうな弱々しい声だった。
「前みたいに、ふざけ合いたい・・・」
そう言って抱えていた膝に顔を埋めてしまった。
のっちの答えがわかった。
「わかった・・・。じゃあ、きちんとあ〜ちゃんに別れた理由を言ってから元に戻ろう?」
「へ?」
「あ〜ちゃんね、のっちが何も言わないから・・・別れの原因が自分だと思ってるんよ・・・」
「・・・ウソ」
「今この状態で嘘言ってなんのメリットがあるんよ・・・」
「そ、そうだよね・・・」
「ねっ、のっちの気持ち伝えて、あ〜ちゃんも楽にさせてあげなきゃ」
「うん・・・わかった」
のっちは無理やり明るく笑った。
あたしは二人の為にこんな事しか出来なかった。
役立たずでごめんね。
そもそも二人を壊したのが自分なのにね。
最初のキレイな形には戻らないけど、頑張って修復するよ。
【A】
ゆかちゃんに話があるって呼び出された。
場所はのっちの部屋。てことは、三人で話し合いってこと?
部屋にいったらゆかちゃんはもういた。
のっちは泣きそうな顔をしてた。
のっちはあたしにずっと言わなかった思いを全部告白してくれた。
別れた理由。
あたしを避けた理由。
これからのあたしとの関係。
全部話し終えた頃になると、のっちは目を真っ赤にして泣いてた。
あたしはもうのっちとは恋人同士になれる事はもうないってわかった。
はっきり言ってくれて良かった。
変に期待させてくれなくて良かった。
これで諦めがついた。
これできちんと・・・時間は掛かると思うけど、のっちと友達に戻れるよ。
【N】
あたしはあ〜ちゃんに泣きながら全て告白した。
あ〜ちゃんは最後まで聞いてくれた。
「もう大丈夫よ。のっちの気持ちわかったから」
って優しい言葉を掛けてくれた。
こんな最低なあたしにまだ優しいく接してくれるんだ。
あたしはもうあ〜ちゃんを裏切りたくない。泣かしたくない。
だから、ゆかちゃんへの想いは押し殺す事に決めた。
きっとゆかちゃんへの気持ちををそのままにしてたら、また苦い思いしかしないから。
もう二人を悲しませて泣かしたり、苦しませて傷つけたりしたくはない。
そうしない為に、早くゆかちゃんの想いを友情に戻さなきゃ。
【K】
のっちはあ〜ちゃんに全部言った。
のっちは泣いていた。
あ〜ちゃんも涙目になってた。
これできっと大丈夫。
あたしたちには最初から愛とか恋とか、そんな甘くてほろ苦いものなんて必要なかったんだよ。
それは元々あたしたちの間にあってはならないものだったんだ、きっと。
あたしたちは今の愛情より、10年後20年後の友情を選んだ。
— Fin —
最終更新:2009年04月14日 23:04