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八月半ば。
塾が久しぶりに休みになったので、あ〜ちゃんの家にて二人で勉強会をしている。
のっちは進路に悩んでいた。
行きたい学部は決まってるけど学校となると成績が付いてきてない…。
思わず溜息が出る。


「のっちー、溜息したら幸せ逃げるんよー」


あ〜ちゃんからの注意。
そんな注意を受けることでさえ、
今ののっちにとっては幸せなことに変換されていた。
自分で自分の顔が緩んでるのがわかる。


「頭、大丈夫?」
「あ…はい、大丈夫れす。」


あ〜ちゃんは数学の問題に再び視線を戻す。
自分も見習って英語の問題に集中しようとする。
でも。
あ〜ちゃんが問題を考えながら髪を耳にかけるのが一度視界に入ってしまうと。
どうしてもそっちの方に目が行ってしまう。


あ〜ちゃんの耳ってさ。
超柔らかいしさ。
なんてったって可愛いしさ。
なんかもう…食べちゃいたい。



良からぬ考えが浮かんでしまい頭を振る。
駄目だ、駄目だ。
今は目の前の問題に集中…って!


「わからん…」


そう一言呟いてあ〜ちゃんが机に突っ伏したのは良いんだけど、
必然的にあ〜ちゃんの耳が至近距離に…。
さ、触りたいじゃないか!
許可貰ったら、触っても良いよね…?


「あ〜ちゃん?」
「何?」


あ〜ちゃんは身体はそのままで顔だけをのっちに向けた。
自然と上目遣いで見られる訳で。
余りの可愛さに、言いたかったことを忘れてしまう。


「何なんよ」
「いや…名前呼んでみただけ」


今さら耳を触りたいなど言えなくなってしまい、ごまかす。


「あっそ…。」


あ〜ちゃんは素っ気なく返事し、目だけを動かして時計を見る。
そして次にのっちを見た。





「のっちさぁ、この問題わかる?」


シャーペンでパンパンあるページを叩く。


「あ〜ちゃんがわからん問題なんて、のっちがわかる訳ないじゃろ」
「じゃあ何だったらわかるん?」
「えっと…そう言われると…」


答えに詰まっていると、不意にあ〜ちゃんがのっちの手を取る。


「じゃあさ…なんでのっちはさっきからあ〜ちゃんの耳、見とるん?」


バ、バレてたの!?
急に脈拍が上がる。
あ〜ちゃんはのっちの手をグッと自分に近づける。


「あ〜ちゃん、わからんのよ。」


「のっちも、わからんの?」


のっちの手はあ〜ちゃんの耳の寸前まで引き寄せられいた。


「ホントはわかっとるんじゃない?」


さっきよりもずっと甘い声で聞かれる。
その声に誘われるように本音を口に出してしまう。


「触りたい、からです…。」


そう答えれば、のっちの手をあ〜ちゃんは自分の耳にそっと触れさせる。
のっちはあ〜ちゃんの耳の輪郭を指でなぞる。
やっぱり、柔らかくて。
気持ちいい。





「くすぐったいんじゃけど」


あ〜ちゃんは少しはにかんだと思えば、
ふっと色っぽい目付きになった。
駄目だ。
もう、我慢できん。
次の瞬間にはあ〜ちゃんを押し倒していた。
そして優しく口づけする。


「ん、…なんでこんなことするん?」


そんな潤んだ目で聞かないでよ。


「…あ〜ちゃんが好きだし、もっと触りたいから。」






あ〜ちゃんはさ、本当に色々なことを考えてたよね。
のっちは自分のことしか考えてなかった。
あ〜ちゃんがあの時、時計を見ていたのも、
勉強の時間が削られることがないように休憩のタイミングと合わせてたんだね。
もっとあ〜ちゃんのことを考えていれば良かったって、そう思う。





つづく








最終更新:2009年04月14日 23:14