サイドN
記憶の中で黒い長い髪を揺らして、私の上で笑うあなたを思い出したよ。
独りの夜が辛いときは、いつも思い出してるんだよ?知ってた?
だってあなたはもういなくって。
半年前に私の前からいなくなって。
半年前から私の中の時計は止まったまま、前にすすめないでいる。
いつも余裕のあるふりをして、私を振り回してくれた。
ずっと、、ずっと、、側にいて振り回してくれればよかったのに。
もう側にいないのに、あなたは今でも私を振り回すんだね。
側にいないなら、、
一緒になれないなら、、
私を解放してよ、、。
もう自由にしてよ、、。
せめて最後にもう一度
さよならのキスをしてよ。
会いにきてよ。
サイドK
あなたはまだ泣いてるの?
それとも独りの夜にも、もう慣れた?
それとも、もう独りじゃない?とか?
あれからどのくらいたった?もう半年くらいたつのかな?
大好きでしょうがないあなたを、独り占めしたかった私は、それが無理なことに気付いて、あなたの前から姿消したの。
でもいつでも思い出すよ?
いつ見ても綺麗な横顔。
誰にも見せたくないんよ。本当はね。
だけど駄目なんだって、、。
のっちは「みんなののっち」だからって。
怒られちゃったよ。
誰も手をだしちゃ駄目だよってさ。
もうだしちゃったのに。
だしちゃった後に言うのなんかずるいよね。。
だけどあ〜ちゃんの命令には誰も逆らえないんよ。
大学一年の春。
私は自分の感情にすぐ気付いた。馬鹿じゃないからね。勘もいいんよ。
私とのっちの出会いはありきたりで、
心踊らせて入った大学の、
夕方遅くの最後の講義で会ったのが初めてで。
生徒もポツポツ少ない教室で、斜め前に座っていたのっちの横顔に見惚れていたのを覚えてる。
その日から、知らず知らず目で追っていた。
駅からの坂道で、
食堂で、
歓迎会で、
いつからか視線が絡まるようになったのも覚えてる。
でも私たちはお互いに、話し掛けることも出来ないでいた。
のっちはいつもひとりでいたし、私は高校からの友達といつも5、6人でいた。
その中の一人、あ〜ちゃんが、私たちみんなのムードメーカーで、あ〜ちゃんが授業で知り合った子たちも入れて10人くらいの大所帯になったりもした。
そんな中でも私は人見知りなほうだったから、なかなか溶け込めなくて、一人の授業を選んだりしていた。
のっちと出会ったのも
そんな私の性格がもたらしたもの。
自分のことがちょっとだけ好きになった。
私が一人の授業ばかりなのを、あ〜ちゃんは心配してくれた。
『ゆかちゃん何で一緒のとらんかったんよ〜?』
みんなも心配してくれる。
みんなすごく優しい。
『ん〜たまたま?w』
内心私は一人の時間があることにほっとしていたし、のっちを見つけてからは楽しかったから、心配してくれなくても大丈夫だった。
それからほどなくして、
私の楽しみが知らぬ間に周りにも伝わりはじめた。
“同じ一年生ですっごい綺麗な人がいる”って。
あ〜ちゃんをはじめとする私の友達たちが、
『でも授業で見ないよねぇ〜?』
『たまに食堂にいるよね?w』
『いっつも一人じゃない?』
『名前聞こうよ!!w』
『あ〜ちゃん聞いてよっ!!』
『えぇ〜無理よ〜』
『あ〜ちゃんが聞かなくて誰が聞くん??w』
笑いながら話す彼女たちの声が、やたら耳障りだった。
のっちのことだったから。
大学一年の夏。
我慢してた感情があふれだしちゃった。わがままだしね。おさえきれなかったんよ。
あ〜ちゃんたちが名前を聞くのより先に、一言でいいから話したかった。
いつもと同じ教室の、
いつもと同じ席に座ってる彼女の横顔を独り占めできる斜め後ろの席に座る。
その日はいつまでたっても先生がこなくて、もとから少ない生徒がちらほら帰りだして、しばらくして休講が知らされた。
みんなは文句を言いながらも嬉しそうに帰っていく。
私はちっとも嬉しくなかった。彼女の横顔を見られる時間が減ったから。
ふと彼女を見ると、机に突っ伏して眠っていた。
はじめてみた寝顔は、
綺麗で綺麗で、どうしようもなかった。
教室にはもう私と彼女しかいない。
今しかない。
『・・・あのぉ』
彼女の隣の席に座り声をかけてみた。
返事は・・・ない。
『あ、あのぉ・・・』
返事は・・・やっぱり、ない。
綺麗な寝顔に感情が持ってかれそうだった。
綺麗な髪に触れたくてしょうがなかった。
何度声をかけても起きない彼女。
流石に髪に触れるわけにはいかないから、肩を軽くトントンとたたいた。
『・・・・ん、、??』
のっそりと頭を動かして、両手で顔を覆う姿が愛らしかった。
『あ、の、今日休講になったって、、』
頭をガシガシ乱暴に掻きながら、不機嫌そうな顔でこっちを見る。
目が合った瞬間驚いた顔して、
『あっ!!あ、あぁ。ま、じ??』
眠そうな彼女。
『うん、、みんな帰っちゃったから、、』
『あぁ、そう。』
話したいこと決めておけばよかった。
沈黙が痛い。
『あ、てか、ありがと。』
へっ??
顔をあげると少し柔らかい表情になった彼女がいた。
『起こしてくれて。』
『あ、うん、、。』
鞄を持って立ち上がる。
『んじゃ、また。』
あ、待って・・・。
まだ話したいことあるんよ。名前くらい聞かせてよ。
最終更新:2009年04月14日 23:23