休み時間になるとクラスの子たちがあたしの周りを囲み出す。
そして色んな質問を容赦なくぶつけてくる。
「大本さんってどっからきたの?」
「広島県です・・・」
「家はどこの辺?」
「○○町っす」
「何て呼べばいい?」
「あっ、何でもいいっす・・・」
「携帯番号とアドレス教えて」
「あっ、ケータイ持ってないっす・・・」
「えー、ウッソー。今時携帯持ってないって、ありえなくね?w」
「はぁ、すんません・・・」
こんなやり取りが休み時間中ずっと続いた。
転校するといつもこの『転校生に対する質問攻撃』を体験するけど、いまだ慣れない。
あたしはドッと疲れて、ため息をつく。
ふと、隣のあ〜ちゃんを見るとケラケラ笑ってる。
「あっ、ごめんごめんwバカにして笑ったわけじゃないよ」
「はぁ・・・」
「みんなの質問に答える、大本さんの反応が素っ気無さすぎて、笑っちゃった」
そう言うと、あ〜ちゃんはまたケラケラ笑い出した。
「ほんとに、携帯持ってないの?」
「いや・・・持ってるけど、なんとなくめんどくさくて無いって言った」
「あ〜、それわかる気がする。携帯って便利だけど、不便でもあるよね」
「はぁ・・・」
「で、なんて登録したらいい?」
「は?」
「は?じゃなくてw電話帳登録する名前じゃけぇ。あ〜ちゃんね、友達はみんなあだ名で入れてるんよ」
「あだ名で?」
「そう、あだ名で。大本さん、前の学校で何て呼ばれてた?」
「だいたい、苗字だったけど・・・」
「あっそうなんだ・・・。苗字でもいいんだけど、なーんか寂しい気がするんよね〜」
あ〜ちゃんは自分の携帯を取り出して、眉間にしわを寄せて考え込んでしまった。
「よし!!今日から大本さんのあだ名は『のっち』ね」
「えぇ!!!な、何でのっち?」
自分の名前から予想がつかないあだ名だったから、思わず突っ込んだ。
「えっと、彩乃でしょ。あやのっち、やのっち、のっちの『のっち』」
「あ〜・・・」
「ねぇ!ほら、よく見たら大友さん、のっち!!って感じだもん」
「え・・・そ、そうなの?」
「そうそう!!」
あたしはあ〜ちゃんの勢いに流されて、あだ名を付けられて、携帯番号とアドレスを教えた。
「のっち〜、あ〜ちゃんもアドレス教えるね」
あ〜ちゃんはとびっきりの笑顔をあたしに向けた。
その笑顔を見た瞬間、あたしは心臓を鷲づかみされた気がした。
あ〜ちゃんはあたしが被ってる殻をペリペリと、いとも簡単に剥がしてしまった。
もう人を好きにならないって決めてたのに・・・。
そんな決心は、彼女の笑顔で一瞬にして砕けた。
最終更新:2009年04月14日 23:33