学校が一旦始まるとあっと言う間に月日は流れてしまう。
ゆかはのっちと同じ悩みを抱えていた。
志望校がなかなか決まらない。
「本当にどーしよ…」
「うん…どーしよ…」
二人で学校の進路相談室にあるソファーに座りながら資料に目を通す。
そんなゆか達を見兼ねてか、担任の水野先生が分厚いファイルを持って来た。
「のっちもゆかちゃんも、学部は決まってるの?」
水野先生はたくさんの生徒達から信頼されていて、学校で一番人気がある。
生徒をあだ名で呼ぶフレンドリーさも人気に拍車をかけている。
ゆか達も大好きだし、尊敬している先生だ。
「一応は決まってるんですけど…学校が…」
「うちらちょっと学力がアレなんで…」
のっちが苦笑いしながら言う。
水野先生は「言う程悪くはないと思うけどなー」と言いながらファイルを開く。
行きたい学部を伝えるとファイルに挟まれた紙を数枚めくり、あるところを開いてゆか達に見せてくれる。
「ここの大学なんだけど、推薦が二枠あるの。
二人が行きたい学部だし、学校の成績はクリアしてるから推薦使えると思うんだけど…どう?」
のっちと二人でその紙を凝視する。
学校の近くの地元じゃ結構有名な大学。
推薦とかあったんだ。
「これ指定校推薦だからよっぽどのことしないと落ちないし…」
「そうなんですか?」
「うん。…まぁ取り合えずこの紙コピーするわ。
推薦貰うかどうかは親御さんにも相談して決めないとね。」
「ありがとうございます!!」
下校中。
「水野先生に相談乗ってもらえて良かったね!」
「うん…」
ゆかの言葉に頷くのっちはどこか寂しげだった。
理由は、ゆかもわかってる。
この場にあ〜ちゃんがいないから。
最近よく二人で帰る。
三人とも夏から本格的に塾に通い始めた。
のっちとゆかは同じ塾だけど、あ〜ちゃんは違う塾に通っている。
あ〜ちゃんの塾は始まる時間が少し早くて、塾のある日は先に帰ってしまうようになった。
クラスが別々になってしまったゆか達にとって
下校の時間は大切な時間。
受験に集中できるようにとあ〜ちゃんのお母さんが二学期が始まってすぐに
携帯を解約してしまったから余計に大切に感じていた。
「あ〜ちゃんいないと、やっぱ寂しいね」
「うん…」
「さっきから『うん』しか言わんね」
「うん…って、え、あっ、ごめん…」
「ふふ、ええよ。ゆかよりさ…のっちの方が寂しいでしょ?」
「なんで?」
「なんでって、あんたら二人付き合っとるんじゃろ?」
「へへっ、夏休みの間にあ〜ちゃん補充したから大丈夫〜!!」
「…のっち、あ〜ちゃんに変なことしとらんじゃろうね?」
「ん?変なことって何?」
ニヤニヤしながら答えるのっち。
こいつ…。
「ゆかが許さーん!!」
「ちょっ、変なことしたなんて言っとらんじゃろ!」
「その顔は絶対しとる!いくらのっちがあ〜ちゃんの恋人でも許さんっ!」
「痛っ!痛いよ、ゆかちゃん!!暴力はんたーい」
「何よのっちは変態じゃろ」
「なっ、変態じゃないれす!!」
「肝心なとこで噛みよったー」
「ば…馬鹿にしてんのか!」
「きゃー、のっちがキレたー!」
二人で騒ぎながら帰れば寂しさが少しは和らいだ。
「冬休みになれば、またあ〜ちゃん補充しよ。」
「じゃあゆかも。三人でクリスマスパーティ-でも」
「「やっちゃいますか!!」」
なんでゆかはあんな提案しちゃったんだろ。
自分が今どういう状況にいるか、実感が無かったからかな。
二人を辛くさせたのは、本当はゆかがきっかけだと思う。
つづく
最終更新:2009年04月14日 23:35