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チャイムを押す指は震えなかった。

迎え入れてくれた彼女の笑顔に頬が自然と緩む。


そう、ゆかが欲しかったのはこのくしゃったとした笑顔。
心を許した人だけに向けてくれる細められた瞳。


ねぇ、ゆかの気持ちを知った後もその笑顔を見せてくれる?


「いきなりごめんね」
「へーき、へーき。散らかってるけど、上がって?」


クツを脱いで、彼女の部屋に上がる。
前を歩く彼女の背中、女の子にしては少し広い肩幅。
だけど、片足だけまくり上げられたジャージから覗く足首は女の子らしく華奢だ。


「でも珍しいね。ゆかちゃんがうちに来るなんて」
「うん。。ちょっと、、ね」


正直、本当は怖かったんだ。
もしかしたら、彼と一緒にいるんじゃないかって。


ううん。むしろその方が、、簡単に諦めがつく、のかな?
たとえ、、私の心がぺしゃんこに潰れちゃったとしても。



「あの時のあ〜ちゃん、まじ最高だったねw」
「ホント、神懸かってたwのっちは噛み噛みだったけど」


いつも通りの他愛もない雑談。


「え〜のっちはそっちのカミなん?ゆかちゃんひどいよぉ」
「ふふっ」


不意に途切れた会話。

視線が交わる。
その澄んだ瞳に惹きこまれていく。



ねぇ、のっち、、
別れたの、あの人と。
さっきまで一緒にいたのに、彼が最後にどんな顔してたか、もう思い出せないんだ。
ただのっちに会うことしか考えてなかったなんて最低だね。
だけど、あの人の丸っこい指先はのっちのみたいに優しく髪をといてくれなかったし、大きすぎる瞳はのっちのみたいにゆかの心をとかしはしなかった。
気づくのが遅すぎたね。
ゆかは、のっちのそばにいれなくなるのが一番怖いよ。


だけどね、ゆかは、のっちが、、


「すき」


ついに零れた、心の声。


「のっちが、好き、、なの」


声が震える。


報われなくてもいい。
貴女の大切な人になれなくてもいい。


だけど、お願い。
嫌わないで。
私をそばに置いておいて。


そう願うのは、貴女の優しさに甘えてるだけなのかな?








最終更新:2009年04月14日 23:45