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幼い頃、夜中にふと目が覚めて隣にゆかちゃんがいなくて。

たったそれだけの事なのにあたしは半泣きになりながら、家中を必死で駆けずり回った事があった。

リビングのカーテンが夜風に揺れてるのが見えて、
そこにゆかちゃんがいるんだと思って急いで駆け寄った。
開いていた窓からテラスに出て彼女を見付けた。

でも、声はかけられなかった。

夜空を見上げてる静かな彼女の横顔は、
そのまま月に帰って行ってしまうんじゃないかってくらい、
綺麗で儚くて壊れそうだったから。

あたしはただ、怖くて立ちすくんでいた。
月に持って行かれそうな怖さがあたしを支配した。
支配したと同時に、
A『やだぁ…。ゆかちゃん行っちゃやだよぉっ。』
あたしは泣いていた。

泣きじゃくる声に気付いてこっちを向いたゆかちゃんの顔は今でも忘れられない…。

あんな顔、あの時一回だけしか見た事ないもん。



あの時からあたしの不安は消せなくなった。

あの夜が再び訪れたら……、って思うと。
きっとそれがあたしの不安の原因。






夜中にふと、目が覚めた。
隣にいるはずのゆかちゃんがいない…。

ドクンッ!!

心臓が大きく脈打つ。


えっ?!
えっ?!
なんでっ!?


あたしは見知ったはずの家の中を、
自分がどこにいるのか、どこへ向かってるのか、
分からなくなるくらい夢中で走った。


どこっ?!


頭をかすめる、あの時の記憶。

嫌な汗が背中と言わず全身から吹き出してる。


ゆかちゃん……っ。


夜風にそよぐカーテンが目に飛び込んで来た。





あの日と同じように彼女は空を見上げていた。


泣いているような、
そんな気さえするその静かな横顔に、またあたしは動けなかった。

怖くて涙が溢れてくる。



でも、
あの頃とは違うから。

あたしだって少しは大人になったはず。

護られてばかりの子供だったあたしが、
今度は護る番。

ゆっくり息を殺して近づいて、
そっとゆかちゃんの頭を抱きしめた。

K『あ〜…ちゃん?』
A『どこにも行かないで…っ。』

頬を伝う涙を拭う事もせず、彼女を強く抱きしめた。

K『……どこにも行かないよ?だって、あたしの居場所はここ、だからっ。』

ゆかちゃんの頭を抱きしめているあたしの腕にすがり、吐き出すように言葉をつむぐ。

ゆかちゃんの顔は見えない。

だけどきっと泣いている。
涙を流す事なく泣いている。



K『それに……。こんな泣き虫さん置いて行けないって言ってるじゃん。』

ゆかちゃんはイスから立ち上がりあたしを抱きしめ返した。

いつもみたいにおでことおでこがくっついて、
幸せになれるはずの行為が、
何故か今日は苦しかった。
ゆかちゃんがあの日見た顔してたから。

もう二度と見たくなかったあの顔。
泣いてるようなその笑顔。



多分、あたしは気付いてるんだ。

この幸せな瞬間は永遠ではない事を。



アタシガモシモヒトデナケレバ。

あなたがもしも人であったなら。


ずっと幸せでいられるのかな。


(続く)










最終更新:2009年04月15日 00:09