一面ピンクになった窓の向こうに、呆然とする。
呆然とするのっちの目の前で、突然カーテンが揺れた。
「な、な…」
お、おお、お化け?!
びびるのっちをよそに、シャッと勢いよくカーテンが開く。
「のっち、あんた…」
「あ…ちゃん…」
窓を開けてあ~ちゃんが、ひょこっと顔を出した。
やばい。
怒鳴らんでよ…かっしーに知られたら殺されるけぇ…。
「かっしーがカーテン付けろ言うたんよ」
え、知られとるん!
お母さん…生きてあなたに会う事は、もうないかもしれません。
「朝、洗面所で相談した結果じゃけんね。」
あ、あれはこのことだったのか。
のっち、よく今日まで無事でいられたなー。
…感心している場合じゃない!
「ごめん、可愛いから…つい」
つい、なんかじゃないッス。
でも、今は生きて部屋に帰還することが最優先なんです。
のっちはもちろん、すごく怒られると思ってたよ。
「そんなん…言い訳じゃろ…」
けど、あ~ちゃんは暗がりでも、わかるくらいに赤くなってて。
これは…いける!
「可愛いから、見逃せなくて。」
甘い言葉であ~ちゃんの心を奪ってしまえばいいんよ。
「だから許してくれん?」
あ~ちゃんはまだまだ赤くなる…気がする。
けどまあ、ここは退こう。
ってゆーのっちの考えは、あ~ちゃんに見事ぶち壊された。
「やだ…許さんもん」
何のつもりか、林檎ほっぺに上目づかいで殺人級のセリフ。
もんだってよもん…のっちが悶々してきたよ。
「寝顔見ないと戻れんのじゃけど。」
あー、言っちゃった。
もう退けんね。
「見せん。」
そんなのはわかってるよ。
見せてくれるなら夜這いなんて、するわけないって。
「絶対見せんけぇ戻って」
頑だねぇ、もういいよ。
…のっち、本気になっちゃうから。
「絶対戻らん。」
のっちの言葉に、あ~ちゃんはキッと睨みつけた。
おうおう、猫みたいで可愛いよ。
「一晩ここにおったら風邪ひくかも」
風をひいたら、仕事に影響するからね。
あ~ちゃんが悩ましい表情で、睨んでいた目を反らした。
いいねいいね、たまにはのっちの掌で転がりなさいな。
…今ののっちは本気じゃけんね、贅沢してもいいかな…
「キスしてくれたら戻ろっかな」
…なんちゃって。
そんな固まらないでよ、返事くれんとスベっちゃ――
「わ、」
強く引かれた腕、崩れかけたバランス。
硬い冷たい壁にあたる手、柔らかな熱い唇に触れた…唇。
離れた瞬間、今度は強く押される。
一瞬だけ見えたほっぺは、ほっぺじゃなくてもはや林檎だった。
「もう…帰れ!」
ピシャンと音をたてて窓が閉まる。
カーテンまでも閉められた。
それっきり静まった空間。
でも。
「ま、まじで……?」
観察史上初の、最高の結果が。
…今日は眠れないな。
「つんでれーしょん君が~♪」
のっちは夢より信じがたい現実を、部屋にお持ち帰りした。
唇に触れた熱は、まだ残ったまま。
あ~ちゃんに提案をありがとう、かっしー。
明日、ハムスターでもなんでも買うよ。
おわり
最終更新:2008年10月10日 17:04