「あ、この本おもしろそー。今度借りよっと」
脱ぎっぱなしの服や、読みっぱなしの雑誌や漫画で作られたいくつかの山もだんだん片付いてきた。
物自体は少ないんだから、出しっぱなしにしないでちゃんとしまえばこんなに散からないのに。
うん。だけど、嫌いじゃない。
こうやって彼女の生活を垣間見れて、そこに自分がいる。
このまま彼女の生活に溶け込んで行けたらいいのに。
「ん?・・・これ、、前の撮影の・・・・」
本の間に挟まれてたのは、何枚ものポラ。
「こんな衣装着とったっけ?」
パラパラと見ていく。
数ヶ月前のものから、最近のものまで。
三人で写ってるもの、あ〜ちゃんの個人撮影の、ゆかの個人撮影の。
って、のっち、、自分のがないじゃん。
彼女自身のポラが極端に少ないことが、彼女らしい。
「・・・あ」
・・・見なきゃ、よかった。
ポラに混ざった一枚の写真。
写真の中には、カメラから視線を逸らして少し照れくさそうに笑う彼女。
「あ、それ・・・!」
キッチンから出てきた彼女が慌てて、写真を奪いとる。
頭をガシガシ掻きながらばつの悪そうな顔をしている。
そんなに、慌てないでよ。。
キレイだった。
メイクや衣装で飾られてもない、照明だってないし、採光だっていい加減。
なのに、写真の中の彼女は、どうしようもなく、キレイだ。
どんなに着飾って完璧な照明の下で撮られたものが霞んで見えるほどに。
きっとそれは、愛しい人だけに見せる顔だから。
きっとそれは、愛しい人と過ごした時間を切り取ったものだから。
だけど、そのカメラを向けたのは、私じゃない。
「捨て忘れてただけで、別に、、わっ」
気が付いたら、彼女のその少し広い肩を床に押し付けてた。
覆いかぶさって、強引に唇を奪う。
息も吐かせないほどの激しいキスを。
シャツのボタンに手をかけて、指先で鎖骨を撫でたら、彼女の身体が小さく震えた。
冷えた床の上。
中途半端に肌蹴たシャツ。
散らばったポラ。
上気した顔。
何も言わず、抵抗もしない彼女。
「なん、で、、抵抗せんの?」
「だって、、ゆかちゃん、泣いてるから」
言われて初めて、自分が涙を流してることに気が付いた。
彼女の指がそっと、私の涙を拭う。
・・・・震えてたのは、私だ。
見苦しい嫉妬に。
嫉妬?
何に?
そもそも、そんな資格あると思ってるの?
「・・・・っ!」
「ゆかちゃん、あの、」
「ごめっ、ん、、」
のっちの部屋を飛び出した。
涙で視界が霞む。
ねぇ、のっち。
ゆかはいつから、こんなに泣き虫になったのかな?
ああ、ほら、空だって泣いてる。
少し前まで晴れてた空は、真っ暗で。
冷たい雨が降っていた。
走り出した。
ドシャブリの雨。
桜が風に吹かれて散っている。
最低、だ。
自分だって、
同じことしてたくせに。
同じこと繰り返してたくせに。
最低だ。
誰も愛したことないくせに。
誰にも愛されたことないくせに。
自分すら、愛せないくせに。
汚い手で彼女に触れないで。
彼女に触れる資格なんてない。
彼女を愛する資格なんてない。
重たい前髪が額に張り付く。
水を吸った服が纏わり付く。
クツの底に水が溜まる。
冷たい。
気持ち悪い。
イタイ。
キライ。きらい。
春は嫌い。
そう。。
だから、これも、春のせい。。
最終更新:2009年05月13日 22:53