あの後、のっちは「この話は止めよ。帰ろっか」って自転車を足早に押し出したから、ゆかも何も言えないまま帰宅してしまった。
ボフッとベッドに身を預ける。
「はぁ…」
…なんで、のっちはあんな事言ったんだろう。
「今、気になったから」って事は、どう考えてもゆかを…。
「うっそだぁ、有り得んわ、有り得ん…のっちが」
ゆかの事が、気になったなんて嘘みたいで夢みたいで。
「……やばい、泣きそう…」
枕に顔を埋めた。
明日、どんな顔して会えばいいか分からなかった。
「おはよ、ゆかちゃん」
「おは、よ」
翌朝、のっちがゆかの家の前にいた。
…なんで!?まだ心の準備だって出来てないのに!
「一緒に学校行こうと思って、今日は自転車置いてきたけぇ」
「そ、そう」
「じゃあ行こ」
「うん…」
どうしよう、引き攣った顔してるかもしれない。
心臓はバクバクいってるし、顔はめちゃくちゃ熱くなってるしで、きっと身体中の血液がものすごい勢いで巡ってるに違いない。
「ひゃっ!?」
「わっ!?びっくりしたぁ…何?」
「な、なにって…だって…手」
ゆかとのっちの手がぎゅっと繋がれている。
掌にのっちの温もりを感じて、更にドキドキが止まらなくなった。
「…昨日言ったじゃん」
「え?」
「ゆかちゃんが気になるって。だから」
「だ、だからって言われても…」
うー…こんなんじゃゆかの心臓が持たんよ…。
「昨日、ゆかちゃん好きな人いるって言っとったじゃろ?それが、なんか嫌だなって思って…」
「……」
ねぇ、ゆかが好きな人はのっちなんだよ?
…なのに、言えない。
ゆかの唇から何も言葉が出て来なかった。
「そう思ったら、のっちはゆかちゃんが好きなのかなぁって…いや、うん…好き、だと思う」
「……」
もう、胸がいっぱいになってしまって何も言えない。
言わなきゃって、のっちにゆかも好きなんだよって言わなきゃ伝わらないのに。
「じゃけぇ、ゆかちゃんの好きな人がのっちになるようにこれから頑張るから…って事で、手繋いだんだけ、ど…もしかして嫌だった?」
ゆかはただ、首を弱く横に振る事しか出来なかった。
…違うよ。嬉しいんだよのっち、ねぇ、好きなの…大好きなの。
好きすぎて、どうやって伝えたらいいか分からないよ…。
ゆかはまるで声を失ったかのように、のっちに何も伝えられないまま手を引かれていく事しか出来なかった。
最終更新:2009年05月13日 23:07