Side-k
最近、ようやく
のっちは、あたしのこと
『先生』、ではなく
『ゆかちゃん』と、呼びなれたみたい。
今日は久々のデート。
ゆかは、のっちの服の袖を摘んで
映画館までの道のりを並んで歩く。
ほんとは、手を繋ぎたい。
けど、、、今日は繋げない。
あたしは、相変わらず『先生』をしていて
この辺りじゃ、いつ、生徒に会うかわからない。
のっちは、もう“生徒”じゃないし、
別にいいじゃんっていうキモチもなくはない。
けど、どこかで身構えてしまう自分。
手は繋げない。
けど、繋がっていたい。
捕まえていたい。
再会したのっちは
あの頃と変わらずまっすぐで。。。
一瞬でも目を離したら
その大きくて白い翼で
ゆかのもとから、飛んでいってしまいそう・・
そんな不安が胸を締め付けるんだ。
Side-n
ようやく最近
『ゆかちゃん』て呼ぶのに慣れてきた。
この年で、ちゃん付けされるのもなぁ・・
ゆかちゃんは、そんなこと言ったりもしたけれど・・
今日は、久々のデート。
前々から、観たいねと話していた
映画を観に行くとこ。
隣に並んで歩くゆかちゃんは
のっちの服の袖をちょこんと摘んでいる。
その姿が、とても愛らしい。
頬が緩むのを必死に堪えてることに
あなたは気付いてないだろうね、、、、?
でもね、
ホンネを言うと、手を繋ぎたいんだよ?
けど、繋げない理由
ちゃんと、わかってるから。
ちょっと前だったかな
デート中、
今の生徒さんに
出くわしたことあったよね。
繋いでいた手を
さっと先生は解いた。
一瞬、寂しさに襲われたよ・・
けど、、、、
うん、仕方ないよね。
のっちはもう、ゆかちゃんの“生徒”ではないけれど
ゆかちゃんはまだ、、、
“先生”だから。
再会してから
ゆかちゃんは
のっちに、やさしく
時に、激しい
愛情を示してくれる。
愛されてるんだ。
そう感じる。
ほんと、単純に
幸せだ、
そう思える日々。
けど、ココロんどっかに
ある不安。
また急に
先生、が
のっちの前からいなくなっちゃうんじゃないかなって・・・
求められるほど、あの日のことが
フラッシュバックするんだ。
甘く熱い体温を刻みこまれた後の
さよなら。
Side-k
「あ、樫野先生!?」
びくっとなって、思わず
のっちの服の袖を摘んでいた手をひっこめる。
声の方に視線を向けると・・・
あ、元教え子。
のっちと過ごした学校。
写真部の子、だ。
「あ、、久しぶりだね」
瞬時に、“先生”としての顔に切り替わる。
同時に・・
「えっ!?のっち先輩!!?」
その子の表情が、がらっと変わる。
あ、、そいえば、この子
のっちの大ファンだった、、け。。。
「えっ、、なんで一緒にいるんですか?」
やばい・・・?
「あぁ、、、偶然ね。
大本さんとも、さっきちょうど出会って・・
久しぶりだねって言ってたとこ、なんだ」
ね?
というように、のっちに視線を配る。
「あ、、、うん。・・こんなこともあるんですね」
Side-n
ゆかちゃんの目配せに、それらしい返答をする。
彼女の手が離れ、自由になった
右手は、そっとポケットへ。
指には、お揃いのリング。。。
んー・・・
よくわからんけど
ゆかちゃんの対応から
写真部の後輩なんだろう・・
全然、記憶にないや・・・
「すごい偶然ですね!」
まぁ、、、偶然て言えば、偶然か・・・
「ちょうど、写真部で集まろうって話になっていて。
樫野先生の連絡先、誰も知らなくって・・
それに、のっち先輩も!」
「でも、私、顧問て言っても、1年もいなかった・・・よ?」
て、答える先生。
ほとんど、部活してないよ?
ゆかんちゃんに、会いに行ってただけだもん。。。
「それでも、みんな先生に会いたがってるんですよ!」
是非来てください!
そう言って、その子は
日時と場所をゆかちゃんに伝えている。
ぼけぇっとその光景を眺める。
————のっち先輩も!
のっちも・・?
「えっ?」
「よかったら、来てください!」
「えぇっと、、、先生は行くんですか?」
ゆかちゃんを見ると、曖昧な表情で
「んー・・今のところ予定はない、、かな・・・」
そう言って、視線を伏せた。
…?
「で、、いつ集まるの?」
「来月の初めの日曜です!」
えぇ、、、っと・・・・・
あ・・・
視線の先のゆかちゃんは、俯いたまま。
「ごめん、その日はもう予定が入ってるんだ」
Side-k
集まりの日時と場所を聞く。
その日は今のこと、予定はないけどなぁ・・
それに、別にそういうの、キライじゃないんだけど・・
のっちはどうするんだろ?
「よかったら、のっち先輩も!」
さっきから、なんとなく
もやもやしてるワケ、はわかっている。
「えぇっと、、、先生は行くんですか?」
あたしの様子を伺う、のっち。
「んー・・今のところ予定はない、、かな・・・」
そう言って、あたしは視線を伏せた。
あたしが行くと言えば、きっとのっちも来るだろう。
確実に、のっちはみんなの注目の的。
正直、そんな姿、見たくない。
あぁ、、こんなことでいちいち
落ち込んだり、不安になっていて
のっちと付き合っていけるのかなぁ・・・
なんて自分のネガティブさに、ため息をつきそうになっていると・・
「ごめん、その日はもう予定が入ってるんだ」
え・・・そうなの?
ゆか、そんなの聞いてないよ?
顔を上げると
八の字眉で、、、でもとても優しい瞳をした
のっちと視線が交わる。
「今、付き合ってる人とね、出かけるつもりなんだ。
半年記念でね・・・ま、サプライズだから
まだ、彼女の予定は聞いてないんだけど」
えっ?
「だから、まだ予定は予定なんだけど、、、
記念日は大切にしたいから、、、さ
その日の集まりには行けないや」
どうして、こうも
いとも簡単に、あなたは
あたしの作った壁を
くだらない意地やプライドを
やさしく取り払っていってしまうんだろう?
「えぇ、、、そうなんですか・・」
残念そうな声が、頭の中
遠くの方で響く。
「樫野先生は、来てくださいね!」
Side-n
のっちは、相変わらずコドモだと思うけど
あの頃よりは、ゆかちゃんのキモチ
わかるつもり、だよ?
視線の先の、ゆかちゃんは
曖昧だけど、、でも
嬉しそうに微笑んで・・
「ごめん・・・やっぱ、私も行けそうにない、や」
「なんか・・・その日
半年記念で、大好きな恋人が
どっかに連れて行ってくれるみたいだから」
えっ、、、そこまで言っちゃうの?
まいったな、ほんと。
でもその
最高に意地悪な
最高に甘い
独特の笑顔。
大好きだよ。
Side-k
元教え子と別れ
映画館へと歩みを進める。
「・・あそこまで言ってよかったの?」
隣に並ぶ
少し斜め上からのっちの声。
「んー、別にいいよ?
いろいろ考えるのバカらしくなっちゃったし」
心臓に近い左手は
のっちの右手と繋がっている。
その絡まった指先には
お揃いのリング。
ゆかは左手。
のっちは右手。
これが、二人の愛の証。
二人だけ、のもの。
もうすぐそこまで、冬の足音が近づいている。
けど、あったかなのっちの傍にいる限り
ゆかは、ずっと
春。
Side-n
まさか、ゆかちゃんが
誰かの前で
ましてや、もと“生徒”の前で
のっちのことを認めてくれるなんて
思ってみなかったから・・・
そんなこと初めてだったから・・
さっきまで、のっちの袖を摘んでいた
ゆかちゃんの左手は
今は、のっちの右手を
ぎゅっと握り締めている。
不安になるのは、
それだけ、
愛情が大きな証。
けど、この
指先から伝わる
あたたかさ、に
偽りはない。
この
狂おしいほどの想いに
偽りがないように。。。
「ゆかちゃん?」
「ん?」
「大好き、だよ」
「うん、ゆかも、、、大好き」
もうすぐ、寒い冬がやってくるようだ。
あなたが生まれた冬。
それだけで、十分価値があるね。
寒いのは、キライだけど、さ。
それに
あなたがいるだけで
ココロはずっと
あったかな、春。
あなたが舞い散らせた
あったかくて
幻想的なその花びらに
永久に、囚われたまま
だろう、から。
最終更新:2009年05月13日 23:29