あの日以来、のっちに会っていない。
ゆかちゃんにのっちの話を聞かれてもやんわりごまかしていた。
ほんとは会いたかった。
でも学校でのっちに避けられているような気がしたから。
やっぱりちゃんとは会えないって思った。
それでも私のどこかに常にのっちがいて。
のっちに対する想いが募るばかりだった。
ねぇ。
私たちは終わってしまったの?
はっきりとしたのっちの気持ちが知りたい。
でも、怖い。
ねぇ。
どうすれば良い?
私はこのモヤモヤとした気持ちを全て勉強にぶつけた。
いくらぶつけても、気持ちは晴れない。
それでも私はぶつけ続けた。
卒業式前日、家にゆかちゃんから電話がかかってきた。
『あ〜ちゃん元気ー?』
「ふふっ、元気しとるよ!
学校で喋らんくても顔は合わせるから知っとるじゃろ?」
『いや…最近あんまりあ〜ちゃんが笑ってるとこ見んからさ…。』
ゆかちゃんの言葉にドキッとする。
ゆかちゃんまで心配させたくない。
「えー!全然気づかんかった!!
勉強で疲れとるんかな…?」
そう答えると、電話越しからため息が聞こえた。
「ちょっと、ゆかちゃん?」
『やっぱり…。ごまかすと思った』
「え?」
『あ〜ちゃんはいつも困ったことがあっても、一人で抱えるじゃろ?
ほーんと、のっちと一緒。』
「…」
『実はのっちから聞いとるんよ、話。
…ゆかじゃ頼りならん?』
「ゆかちゃん…」
私はゆかちゃんに今の気持ちを伝えた。
私がのっちを傷付けたこと。
勉強を言い訳にして、自分のことでいっぱいいっぱいになっていたということ。
のっちとの関係がどうなってしまったのかわからないと言うこと。
全部、話した。
話してる間、ずっと静かに泣いていた。
ゆかちゃんの相槌を聞いているだけで、胸のモヤモヤが少しとれていく気がした。
『あ〜ちゃんは…今でも、のっちが好き?』
「好き…」
『じゃあどうしたい?』
「あ…会いた…い。会って…今ののっちの気持ちが、知りたいよ…。」
『…わかった。』
ゆかちゃんはそう言って電話を切った。
頼もしく聞こえた最後の言葉。
気持ちがいくらか軽くなった気がする。
ゆかちゃんに話したことで自分の中で気持ちの整理がついた。
私はやっぱりのっちが好き。
それだけは、変わらなかった。
卒業式が終わり、あっと言う間に2月中旬になる。
相変わらずのっちは常に私のどこかにはいたけれど、
ゆかちゃんに話を聞いてもらってから、
以前と違って私の気持ちを掻き回すものではなくなった。
ただあるのは、のっちが好きだという気持ちだけ。
受験が終わったら、まっ先にのっちに会いに行こう。
そう思えば、会えない日々も寂しさを我慢できた。
受験日前日。
大学が遠いということもあり、前日から大学の近くに泊まり込むことになっていいた。
受験票、筆記用具、参考書。
必要なものは全て鞄に詰めた。
『忘れ物、ないわね?』
「うん。大丈夫。」
母親と二人で玄関先で確認する。
これで良し。
そう思ったところだった。
『お姉ちゃん、待って!これ!!新聞に挟まっとったよ』
ちゃあぽんにそう言われて渡されたのは、差出人の名前のない封筒。
宛先には、『あ〜ちゃんへ』と見慣れた字で書いてあった。
その下には小さな字で『新幹線の中で見て下さい。』と書いてある。
「ちゃあぽん、ありがと。」
その手紙も鞄の中に入れた。
書いてあった通りに、新幹線の中で手紙の封を切る。
中に入っていたのは二枚の手紙と、オレンジ色のお守り。
一枚目の手紙にはびっしりと、出会ってから
最後に話したあの日までのことが書いてあった。
そこには私が覚えていないような、些細なことも書いてある。
私は出来る限り一つ一つの情景を心に浮かべながら手紙を読んだ。
二枚目の手紙には、あの日からのことが書いてある。
素直で、真っすぐに書かれた感情は私の中にスッと入ってきた。
だけど、だんだん先に進めなくなる。
それは視界が滲んできたからだった。
必死で涙を堪えながら読んだ。
手紙の後ろの方にはお守りのことが書いてあった。
『お守りなんだけど、あの神社で買いました。
(もしかしてもう持ってた?だったらごめん…。)
ピンク色にしようかと思ったんだけど、あ〜ちゃんは太陽だからオレンジ色にしました。』
お守りを封筒から出す。
お守りの紐に小さなメモが付けられていたことに気づく。
『あ〜ちゃんなら大丈夫!
あ〜ちゃんが頑張ってたの、知ってるから!!』
その温かい言葉に、胸が一杯になった。
お守りを握りしめながら、手紙の最後の部分を読んだ。
『P.S.お守りをちゃんと会って渡したかったんだけど、あ〜ちゃん泣いちゃうでしょ?
試験前に目が腫れたら大変だと思って手紙にしました。
なんてほんとは自分が泣いちゃうからだけどね』
「のっちの…あほ……」
隣で寝ている母親を起こさないように、
声を堪えながら私はボロボロと泣いていた。
会わなくたって、あ〜ちゃん泣いちゃうよ。
明日も目が腫れてたら、のっちのせいじゃからね。
つづく
最終更新:2009年05月13日 23:32