学園祭初日。
今日は在校生だけで行われる。
体育館で開祭式。
中は皆の熱気で秋だというのに暑い。
学祭委員長が司会をして、進行していっている。
どうやらそれぞれのクラス代表が、自分たちの出し物の宣伝をしていっているみたい。
あたしはそれをボーっと眺めてる。
「大本さん、ちょっと来て!!」
「へ?」
あたしは同じクラスの学祭委員の子に腕を掴まれて強引に連行されてしまった。
連れてかれたのはステージ裏。
「ごめんね、大本さん。突然で悪いんだけど、うちのクラスの代表としてステージに立ってもらえる?」
えーーーー!!!
それはあまりにも突然すぎるでしょ・・・。
嫌だよ・・・。やりたくないよ。
「えっ・・・てか、なんであたしなんすか?」
「え〜、そりゃあ、大本さんが宣伝してくれたらお客さん増えると思うから?」
「いや・・・そんな事は絶対にないと思うけど・・・」
「お願い!!クラスの為に一役かってください!!」
委員の子は頭を下げてお願いしてきた。
「え・・・でも・・・」
「原稿は用意してるから、それ読んでくれるだけでいいから。お願い!」
「うー・・・」
「のっち?どうしたん?なんでここにいるん?」
その声は・・・
「あ〜ちゃん!!」
今のあたしにはあ〜ちゃんが女神様に見えるよ。助けて、あ〜ちゃん。
「ふ〜ん。のっちがうちの宣伝ね・・・」
「あ〜ちゃんからも大本さんにお願いして」
委員の子はあ〜ちゃんを味方にしようとしてる。
おいおい、あ〜ちゃんはあたしの味方なんですけど!!
「いいじゃん。のっちやりなよ」
今のあたしにはあ〜ちゃんが閻魔様に見えるよ。そりゃないよ・・・あ〜ちゃん。
「え・・・やりたくないよ」
ボソっと呟いてしまった。
「しょうがない・・・あ〜ちゃんも一緒にやってあげるけ。それでもいい?」
あ〜ちゃんは委員の子に了解を求める。
「あ〜ちゃんやってくれるの!!ヤッター!あ〜ちゃんと大本さんが宣伝してくれたら、うちのクラス優勝だよ!!」
優勝・・・?
何?優勝って・・・?
「はい。じゃ、決まりね。ほら、のっち行くよ!」
あ〜ちゃんはあたしの返事を聞かず、手を取ってステージに上がってしまった。
あたしたちがステージに上がった瞬間、キャーという黄色い声援がした。
そんな状態に戸惑うあたし。
あ〜ちゃんは司会者からマイクを渡され、お得意の擬音まじりの軽快なトークで生徒たちを笑わせている。
「・・・てことで、クレープ屋さんと、最終日の軽音のライブよろしくお願いしまーす!!」
最後はちゃっかり自分のライブまで宣伝するとは、あ〜ちゃん恐るべし。
結局あたしは若干オロオロして、ステージに立っているだけだった。
「あ〜ちゃんまだ軽音でここに残らなきゃいけんから、のっちはひとりで戻りんさい」
ステージ裏に戻ると、あ〜ちゃんはまるであたしを邪魔者みたいにシッシッて手で払う。
「ねぇ、さっき言ってた『優勝』ってどういうこと?」
「あー、毎年うちの生徒と一般のお客さんからの投票で決めるんよ。どのクラスの出し物が一番良いかって」
「そうなんだー」
「そうなんよ。だからのっち、あんた頑張ってクレープ売りんさい!」
「えー・・・」
「えーじゃないけ。優勝したら、あんたの大好きな学食の食券1000円分の券もらえるんよ」
「えっ!!!そうなの?」
あたしはそれを知ってちょっとやる気が出た。
「そうよ!ほら、のっち邪魔だから、はよ戻りんさい」
「はーい・・・」
教室に戻ったら委員の子にさっきのお礼と、初日の今日一日クレープを売ってくれって言われた。
「きょ、今日一日ずっと売らなきゃいけないの?」
「うん!でも明日と明後日は遊び行っていいから!よろしく」
ガーン・・・。
今日は、あ〜ちゃんの軽音の練習がないから一緒に回ろうと思ってたのに・・・。
あー、食券に目が眩んだ自分が悲しい・・・。
少し経った頃、あ〜ちゃんも体育館から戻ってきた。
「へー、のっち今日一日遊べないんだ・・・」
「うん・・・勝手に決められちゃった」
「しょうがないけ。ちゃんと仕事しんさい」
「うー・・・今日、あ〜ちゃんと一緒に色々見たかったんだけど・・・」
あたしは、ふてくされて不満を愚痴る。
「そうなの?あ〜ちゃん、軽音の子達と一緒に回ろうと思っとったんじゃけど・・・」
あ〜ちゃんから予想もしなかった返事にちょっとショック・・・。
「そ、そうだよね・・・あ〜ちゃん友達いっぱいいるもんね」
そうだよね。
あ〜ちゃんは人気者なんだから。
あたし一人が独り占めしようなんて考える方が間違ってたんだよね。
うん。頑張るよ。頑張ってクレープ売るよ。
だってここで頑張らなきゃ、あたしの居場所がなくなっちゃうもん。
「じゃ・・・あ〜ちゃん行くね」
「うん・・・」
スピーカーから学祭開始の放送が流れ始めた。
別に軽音の子達と遊びに行くのが、悲しいんじゃないんだよ?
あ〜ちゃんもあたしと一緒に遊びに行くって思ってくれなかったのが、悲しかったんだよ?
あ〜ちゃん、あたしの為にサイコウの学祭にしてくれるって言ってくれたじゃん。
あれ・・・忘れちゃったの?
あたし、すごく楽しみにしてたんだよ?
あ〜ちゃんにとってはすぐ忘れちゃうくらいの事だったの?
周りの楽しそうな雰囲気とは対照的に、あたしの心の中は悲しくて寂しかった。
その気持ちをを紛らわすために、あたしは黙々とクレープを作った。
その甲斐あってか、今日の分のクレープは完売した。
そしてちょっと良かった事もあった。
一緒にクレープを作ってた木村さんって子と仲良くなった。
やったー!捨てる神あれば拾う神ありだね!!
「ねぇねぇ、まだ時間あるから他のお店一緒に見に行かない?」
うは、木村さんに誘われちゃった。
もちろん返事は・・・
「行く行く!!」
あたしたちは隣のクラスがやってる駄菓子屋さんに行った。
そこには、あ〜ちゃんたちのグループもいた。
あ〜ちゃんと目が合ったが、思いっきり逸らしてしまった。
別に悪いことをしている訳じゃないけど、気まずかった。
なんだろ・・・この気持ち。
あ〜ちゃんが、他の人と一緒にいるとモヤモヤする。
だからおもわず目を逸らしちゃった。
あ〜ちゃんの視線が痛い。
「ねぇ、のっち。うまい棒買わない?」
木村さんに手首を引っ張られる。
あたしは背中にあ〜ちゃんを感じながら、木村さんとおしゃべりを始めた。
あ〜ちゃん・・・心なしか、あなたの顔が悲しそうだったのは、あたしの気のせいだったのかな?
最終更新:2009年05月13日 23:34