ゆかちゃんが作ってくれたお弁当がやけに重いのは、
想いが詰まってるから?
まだ何日か前に来たばかりだと言うのに花たちは散り、
あの時とはすっかり様子を変えている景色に、時間の流れを感じて胸が痛くなる。
ぐっ
と、込み上げる何かをこらえ努めて明るく振る舞う。
ゆかちゃんの最後のメモリーに残るあたしは、
泣き顔より笑顔でいたいから……。
A『うわ〜、美味しそうっっ!』
うん、本当に美味しそう。
演技なんかじゃなくそう思う。
K『へへへ〜、頑張っちゃったぁ〜。』
A『何の記念〜?』
豪快に笑い飛ばそうとしたあたしが一瞬にして凍りつく。
K『その時が”いつ”でも後悔しないように……。』
A『……っ。』
重苦しい空気が流れてもあたしにはどうする事も出来ない。
下唇を噛み締めうつむいて泣く事をこらえるしか出来ない……。
K『ごめん。食べよ?あ〜ちゃん。』
頭に
ぽんぽん
と、優しい感覚がしたから顔を上げたら、
優しい顔したゆかちゃんがいたから、あたしはこの感情を飲み込んだ。
A『じゃあ……、食べさせて?』
K『あ〜ちゃんは甘えん坊さんだねぇ。』
A『いいじゃ〜ん。』
他愛もないやり取りがこんなにも貴重で大切なものになるなんて思わなかった。
この幸せが当たり前だったあの日に戻りたい。
A『あ〜ん。』
K『口開けすぎだよっ。』
あたしのおどけた姿で大笑いするゆかちゃん。
A『早くっ、いつまでも大口開けてて恥ずかしいじゃんっっ、もう。』
K『おかしすぎて箸で掴めないぃっっ。』
A『笑いすぎですよー?』
K『ごめんごめん。………ふ、ふふ、あははっ。』
A『もういいよ、自分で食べますからぁ。……貸して?』
K『ダメ、ゆかが食べさせてあげるのぉ。………ふふっ、ごめんやっぱ無理っ。』
A『失礼すぎるくらい笑ってるよね、ゆかちゃん?』
K『いや、だってどれだけお腹空いてるのって顔して……っはははっ。お腹痛いよぉ。』
こんなにも笑ってくれるゆかちゃんが愛しかった。
それはもうすぐ見れなくなる笑顔で、
余す事なくゆかちゃんの全てを記憶に焼き付ける。
A『……じゃあ、先にあ〜ちゃんがゆかちゃんに食べさせてあげる。』
K『えぇ〜。』
A『えぇ〜じゃない。はい、あ〜ん。』
促すようにあたしが口を開けたら、
またゆかちゃんの顔が引き攣りだす。
A『よし、わかった。じゃ一回思いっきり笑ってしまおう!はいどうぞっ。』
K『……どうぞって言われたら笑えないよぉ〜。』
A『もう、わがままなんだから。』
笑顔で怒って見てもゆかちゃんは瞳を細めるだけ。
K『………ありがとう、あ〜ちゃん。』
やめてよ。
もう泣かない。
そう決めたのに……。
ゆかちゃんにはきっとお見通しなんだね。
頑張って我慢しておどけて見せてるのが。
優しくてまっすぐな気持ちが今は痛いよ。
(続く)
最終更新:2009年05月13日 23:36