学園祭中日。
今日から明日までの2日間は一般公開。
毎年近所の人たちや、中学生、隣の男子校の生徒がドッと押し寄せて大盛り上がりするらしい。
この学祭で男子との交流を求める生徒もいるらしくて、別名:合コン祭とも言われているみたい。
でも、あたしはそんな事興味ないからお店をブラブラ。
今日のあ〜ちゃんの予定は午前中はクレープ屋で、午後は明日の本番に向けての軽音の練習。
てことで、今日もあ〜ちゃんと一緒には回れない。
て、言っても、昨日駄菓子屋で会ってから、微妙にあ〜ちゃんとしゃべってないんだよね。
向こうはなんだかんだいって、忙しいから話す機会がないんだよ。
「のっちのっち!!」
呼ばれて振り向くと、木村さんだった。
大体あたしを呼ぶのは、あ〜ちゃんしかいなかったからなんか変な感じ。
「もしかして、一人で回ってる?」
「もしかしなくても・・・ひとりです・・・」
「あたしも今ひとりなんだ!良かったら一緒に回らない?」
「いいの?」
「うん!!」
良かった〜。学祭でひとりぼっちっという可哀相な事にならなくて・・・。
あたしたちは焼きそばを買って人が少ない体育館裏で食べる事にした。
「のっち、うちの学校の屋上に行った事ある?」
木村さん突然何を言い出すんだい!?
ビックリだよ。
もちろん行った事あるけど、それはあ〜ちゃんとの二人だけの秘密だから・・・。
「え・・・な、ないよ」
嘘ついた。
「じゃあさ、今から行ってみない?実はあたし屋上の鍵持ってるんだよね」
なんで木村さんも鍵持ってるんだよ!先生、ちゃんと鍵の管理はして下さい。
行けないよ。
だってあの屋上は、あ〜ちゃんとあたしのふたりの場所だもん。
あ〜ちゃんじゃない人とは行けないよ。
「あー・・・ごめん。あたし高いとこ苦手なんだ・・・」
ごめんね、木村さん・・・2度も嘘ついちゃって。
「そっか。残念・・・。この焼きそば、美味しくないね・・・」
「うん。美味しくないね・・・」
「のっち・・・今、付き合ってる人いる?」
今度は急に恋バナで、あたしは戸惑った。
「・・・いないけど」
ここは正直に言った。
「実は・・・のっちが転校してた時から好きだったんだ・・・もし良かったら、あたしと付き合ってもらえますか?」
「え?」
あまりにも突然すぎてすぐ理解出来なかった。
だって一緒に焼きそば食べてて、告白を受けるなんて普通考えないでしょ・・・。
たぶん、今のあたしは鳩が豆鉄砲くらったような顔。
「ごめん。そりゃ、突然友達に告られたらビビるよね」
「・・・・」
「ダメかな?」
「あ・・・木村さんが嫌とかじゃなくて・・・実は・・・好きな人がいるんだよね・・・」
『好きな人』がいるって、口に出して人に言ったのは初めてだった。
「そうなんだ・・・。聞いてくれてありがとね。じゃ、あたし行くね!!」
そう言って木村さんは、食べかけの不味い焼きそばを持って走っていってしまった。
体育館の裏に取り残されてしまった。
あたしは好きな人に告白する勇気なんてないのに、勝手に嫉妬してるヘタレな奴だから、木村さんの勇気が羨ましかった。
でもあ〜ちゃんに告白しても、きっとさっきの木村さんみたいに玉砕しちゃうんだろうな・・・。
そしてもう二度とあ〜ちゃんと、一緒にいられなくなるんだろうな・・・。
もう一緒に屋上にも行けなくなるんだろうな・・・。
そんなの嫌だな・・・。
どうしたらいいの?わかんないよ・・・。
今わかる事は無性にあ〜ちゃんに会いたくなったこと。
そう思ったら、足が勝手に軽音の部室に向かってた。
部室を覗いたらあ〜ちゃんの姿はいなかった。
同じバンドのメンバーの子に行方を訊いたら、どうやら保健室にいるみたい。
あたしは急いで保健室へ走る。
ノックもしないで保健室の扉を開けた。
扉の向こうには、あ〜ちゃんとゆかちゃんがいた。
「ビックリしたー。どうしたの?息切らして」
目をパチクリしてるゆかちゃん。
「あ・・・あの、あ・・・あ〜ちゃんがいるって、、、」
あたしは息を整えながら喋る。
そしてチラリと横目であ〜ちゃんを見る。
「そうなんだ。じゃ、先生ちょっと飲み物でも買ってくるわ」
そう言ってゆかちゃんは、あたしとあ〜ちゃんを二人っきりにした。
「手、どうしたの?」
あ〜ちゃんは手に氷のうを当ててる。
「あぁ、ボーっとしてたら、ホットプレートにジュって触っちゃったんよ・・・」
「大丈夫?」
「うん。プレートが低温だったから・・・」
あ〜ちゃんはあたしと目を合わせてくれない。
あたしたちの取り巻く雰囲気がいつもと違って、どこか重い。
「あ・・・昨日、ごめんね・・・」
「なにが?」
「駄菓子屋さんで、目合ったのに、逸らしちゃって・・・」
「あー・・・そんなことあったっけ?」
「えっ!?嘘?憶えてないの?」
「憶えてなーい」
えー・・・じゃ、あたしは今まで取りこし苦労だったの?
ガッカリしたような、ホッとしたような複雑な気分だよ。
でもさっきの重い雰囲気が変わった。
いつもみたいな感じに戻った気がする。
「さ、あ〜ちゃん戻ろっと」
「じゃあ、あたしも戻るよ。てか、バンドの練習見ていい?」
「ダメー!!」
「なんでー、いいじゃん。ちょっとくらい」
あっ、これこれ。
いつもみたいな会話が出来てよかった。
「本番までのお楽しみじゃけぇ」
「うー、ケチ・・・イデッ」
いつもみたいに肩を叩かれて、なんだか嬉しい。
いつもの関係に戻れて良かった。
ほんと良かった。
あ〜ちゃん・・・口に出して言えないけど、、、あたしの好きな人は、あなた・・・だよ。
最終更新:2009年05月13日 23:46