夜。ベッドに潜る二人。
昼間の賑やかな熱も冷め、静寂が支配する部屋。
眠りに入るこの時間帯が1番怖い。
眠りたくない。
もし、目が覚めてあなたが隣で動く事を止めていたら……。
想像する事すら心が拒む。
A『ゆかちゃん、寝た?』
寝ているかも知れないゆかちゃんへ、小さく呟く。
K『まだだよ。……、眠れない?』
A『…うん。』
K『抱っこしたげようか?』
あやすような口調に恥ずかしさを覚える。
A『いい……。』
K『遠慮?』
A『うん。』
K『あは、可愛い〜。』
拗ねてゆかちゃんのパジャマの裾を
キュッ
と握ってたら、
K『おいで…?』
って、そんな言われ方したらさぁ…。
A『甘やかさないでよ……。』
言葉とはウラハラにゆかちゃんの広げた腕の中へと身を預ける。
K『え〜?やだ。』
あたしを包み込む力は優しいのに、言葉は少し強めで少しドキドキしてしまう。
A『やだ……、って。』
K『だってゆかの幸せなんだもん。』
A『……いつから、知ってたの?』
K『………。あ〜ちゃんが夜中に泣きじゃくってあたしを捜してた日から…。』
泣きじゃくる……?
それって、あたしがまだ小さい時の……?
あの時の?!
だったらあの顔、泣きそうな笑顔は。
やっぱり……。
A『……やっぱり月に帰っちゃうんじゃん。』
泣く訳でも怒る訳でもなく、独り言みたいにあたしは呟いた。
K『ずっと隠しててごめん……っ。』
泣き虫なあたしにはわからないけれど、
泣きたい時に泣けないのってどれだけきついんだろう……。
A『もうずっと長い間、辛い思いさせてたんだね…。』
数日前の、月を見上げるゆかちゃんと、幼い頃見たゆかちゃんがあたしの中で重なって
優しく微笑んだ……。
A『……あたしのためにありがとう、ゆかちゃん。あたしならもう大丈夫だよ。』
ゆかちゃんの腕の中で最後の涙を静かに流した。
翌朝。まだ少し早い目覚め。
覚悟は決めたけど、恐怖心が消えた訳じゃないから眠りは浅い。
隣を見ると綺麗な横顔が静かに横たわっている。
あ、れ………?
ゆか、ちゃ……ん?
やだよ、嘘でしょっっ?!
A『ゆかちゃん…?ねぇ、朝だよ??………。ねぇってば!?起きてよっ。』
肩に手をかけ揺さぶってみてもゆかちゃんは何の反応も返さない。
A『ゆかちゃん!!』
あたしが覚悟を決めた途端の出来事。
まるであたしを待っててくれたみたいなタイミング。
最後の最後まであなたは優しいんだね………。
A『……やだよっ!やっぱりやだっっ!行かないでよっ。あたしを置いて行かないって言ったじゃん!!ねぇ…、ねぇってばっ!!!』
ボロボロ零れる涙。
体からは力が抜けて動けない。
ゆかちゃん……!!
ゆか、ちゃん……っ。
大声で泣いて叫んで何時間もその場から動けないでいた。
涙は枯れ果てる事を知らず流れ続けた。
静かなその顔を撫でてゆかちゃんの感覚を確かめる。
いつもと変わらないその感触にまた、涙が溢れる。
もっといっぱい、
好きだって言っとけばよかった。
もっといっぱい、
好きだって聞きたかった。
ちゃんと、愛してるって言ってあげればよかった。
ちゃんと、愛してあげれてた?
与えられるばかりで、あたしはあなたに与えてあげられてたかな?
ねぇ、ゆかちゃん。
愛してるよ。
今までもこれからも、
ずっとずっと、
愛してる。
どれだけの時間がすぎた??
あたしはまだ、動けない。
動く気もない。
だってそうでしょ?
ゆかちゃんのいない世界に生きてる意味はないから。
全てが無意味。
A『ゆ、か、ちゃん……。愛してるよ。』
ゆかちゃんの胸に頭を乗せうなだれ、小さく呟いてゆっくり目を閉じる。。
ブォン。
何かが起動する音が聞こえて来たけどそれすらも、もうどうでもいい。
勝手にやってればいい。
あたしとゆかちゃんを残して時間だけ前に進めばいい。
!!!
頭に何かが触る感触。
まさか、まさかっっ!!
慌てて体を起こし、ゆかちゃんを見つめる。
ゆっくり瞼が開かれていく。
A『嘘、でしょっ。ゆかちゃん!』
呼び掛けたあたしをゆかちゃんの瞳がゆっくり捕らえた。
K『……おはよ、泣き虫さん。』
優しい瞳であたしを見てる。
A『ゆかちゃん!ゆかちゃん!!』
奇跡は滅多に起こらないから、奇跡って言うんだって誰かが言ってた。
じゃあ、これは?奇跡じゃないならなんなの?
K『あ〜ちゃん、愛してるよ。』
A『あたしも……っ、愛してます。』
−FIN−
A『今度のツアーでアトマイザー寸劇に変わる話でこんなん作って来たんじゃけど、どう思う?』
K『……やばい、あたし普通に泣いちゃったんだけど…。』
A『じゃろー。あ〜ちゃんすごくない?』
K『うん、凄いっ!』
N『あの〜。』
A『問題は何ヵ所ツアーでまわるかって話だよね。』
K『場合によっては削ったりせんといけんもんね。』
N『もしも〜し?』
A『でもこれでも短くまとめたんよ。』
K『そうなん?』
N『ちょっと!二人ともっ。』
A『なん?』
K『なに?』
N『いや、何って。確かに!めっちゃいい話だと思うよ?のっちも涙ぐんじゃったし。でもさぁ、のっち出て来てなくない??』
A『………ああ、忘れとった。ま、ええじゃん、別に出んでも問題ないじゃろ。』
N『ひどっ!!』
K『あ〜ちゃん、それはひど過ぎじゃない?せめてさぁ、公園の池のカエルくらいさせてあげたら?』
N『それもひどいわっ!……もういいよっ。のっちは客席でファンの人達と一緒にわっふるしながら二人を見とくけぇ。』
K『わっふる?』
A『なんそれ?』
N『まぁ、いろいろあるんよ。……ねぇ、皆さん?』
K『誰に向かって話よん?』
A『のっちがイタイのはいつもの事じゃろ……。』
N『イタくないよっ!』
(完)
最終更新:2009年05月13日 23:48