「かしゆかが熱でダウンした」
気だるい身体を引きずってPerfume号に乗り込むと、もっさんにそう告げられた。
そのまま簡単に今日の予定と変更を続けていくもっさん。
だけど、彼女のこと以上に重要な用件なんて今のわたしにはなくて、それ以上の言葉はわたしの耳には届いてこなかった。
・・・・昨日の、雨のせいだ。
泣きながら、部屋を飛び出していったゆかちゃん。
慌てて後を追いかけると、外はそれまでの晴天とは一転ドシャブリの雨。
あ、、まるで、今のわたしたちみたい。
一切、振り向きもせずに走っていくゆかちゃんの背中がすべてのものを拒絶しているようで。
足が動かなかった。
もしかしたら、彼女はわたしから離れた方がいいんじゃないかって。
もしかしたら、彼女はそれを望んでるんじゃないかって。
だとしたら、
彼女を追いかけるこの行為も、ただ彼女を傷つけるだけじゃないか。
彼女の背中を抱きしめたって、彼女の重荷を増やすだけじゃないか。
どんどん雨の中に霞んで行く彼女の背中。
その細い身体で背負ってる彼女の不安がどれくらいのものか想像することすらできなくて。
小さくなっていく背中を見つめながら、雨の中でただ立ち尽くすことしかできなかったんだ。
「ゆかちゃん大丈夫かね?」
遠くであ〜ちゃんの声が聞こえる。
いつの間にあ〜ちゃんちまで来てたんだろう。
彼女の不安に気づいてたくせに、何もできなかった。
ううん。ホントに気づいてた?
そして、何かしようとした?
「のっち、ゆかちゃんと何かあったん?」
その言葉に現実に戻された。
まっすぐでやさしいあ〜ちゃんの瞳。
思わず逸らしてしまった。
だって、彼女に目が眩んでしまいそうになるから。
今のわたしに太陽の光は眩しすぎるんだ。
「何もないよ」
「大丈夫だよ」
そんな簡単なことすら言葉にできなくて、首を小さく横に振ることしかできない。
あ〜ちゃん、もしかして気づいてる・・・?
のっちとゆかちゃんのこと。。
あ〜ちゃん、のっちはさ、、
ただ、、大切にしたかったんよ、ゆかちゃんを。
だけど、結局、のっちは、、、
ストールに顔をうずめて、目を閉じる。
今日、いつも通りに彼女と顔を合わせていたら、
どんな言葉を彼女にかけるつもりだったんだろう。
どんな態度で彼女に接するつもりだったんだろう。
わたしは、彼女の何を見ていたのだろう。
きっと、自分の幸せばかりを考えて、浮かれて、、ちゃんと彼女を見れていなかった。
ゆかちゃんを追い詰めたのは、わたし。
雨のせい、なんかじゃない。
わたしの、せいだ。
こんな時だって仕事はある。
それが有難くて、すこし、後ろめたい。
最終更新:2009年05月13日 23:52