携帯を弄っていると、突然画面が切り替わった。
着信だ。
表示された名前を見て驚く。
卒業式以来、連絡が来なかったのに。
何かあったんだ。
直感的にそう思った。
焦って電話に出る。
「どしたん、のっちっ!!」『ゆかちゃん?!』
聞こえた声の主は予想外だった。
「あ〜ちゃん…?」
『うん、あ〜ちゃんよー!
久しぶり!!ゆかちゃん元気しとる?』
「げ、元気だよ」
『ウイウイ〜w元気なのは一番じゃ!』
「あ、うん…」
『あのねーゆかちゃんに報告があるんよ!』
「…何?」
『大学に…合格しました!!』
「え、…」
ちょっと待って。
予想外の人が電話に出るわ、いきなりフルテンションで話されるわで頭が混乱していた。
今、大学合格したって言った?
言ったよね、確かに。
あ〜ちゃん、合格したんじゃ…!
そう理解すると一気に喜びが込み上げてきた。
「あ〜ちゃん、おめでとうっ!!」
『ありがと!ゆかちゃんにもちゃんと言っときたかったんよ』
「あ゛ー…ゆか、嬉し涙出てきちゃった…」
『そんなん言われたら、あ〜ちゃんもつられるからやめてー』
「ふふっ、つられちゃってよ…でもまぁ、ゆかは受かると思っとったけどね!」
『ちょっとー!のっちと同じこと言っとるし!!』
あ〜ちゃんから自然と零れ出た名前。
そして本来の携帯の持ち主。
そういうことか。
心の中でつっかえていたものがとれる。
余計に涙が出てきた。
「ほんと…ひっく…あ〜ちゃん、良かったね、っ」
『ちょっと、ゆかちゃん!?』
「大学も、じゃけど…縒り、戻せたんじゃね」
『…ゆかちゃんのお陰じゃ。ほんとにありがとう。』
「ううん…ゆかは、何もしとらんよ、ひっく…となり…に、のっち、おる?」
『うんうん、おるよ』
「ひっく…かわって、くれる?」
『わかった。今かわるね』
1秒も経たないうちに声の主が変わる。
それだけあ〜ちゃんの近くにのっちがいる。
見えなくてもすぐにわかった。
『ゆかちゃん?のっちだよー』
「ひっく…のっち、良かったね…あ〜ちゃんと、縒り、戻って…」
『うん!ゆかちゃんに言われたから素直な気持ち伝えられたよ。
ありがとう…てか、ゆかちゃん泣き過ぎだから!!』
「だって…ひっ、く…嬉しいんじゃもんっ!」
『あはは、泣き虫ゆかちゃんじゃ』
「う、うるしゃい…!」
『やーい、泣き虫ゆかちゃっ…痛っ!!』
「え、ど、どうしたん?」
『あ、あ〜ちゃんに…下腹部を…軽くパンチ、されました…』
のっちがあげる苦痛の声のそばで、『ゆかちゃんをいじめたら許さん!』と言う声が聞こえる。
「のっち、あ〜ちゃんの言う通りじゃ」
『うへー…』
「…ふふっ、のっち、その声!」
久しぶりに聞くのっちの落ち込む声がなぜか笑いのツボに入ってしまった。
一人で散々笑って、気づけば涙も止まっていて。
『ゆかちゃん…今度は笑い過ぎじゃ…』
「だってー…あー、笑った笑った」
『…久しぶりだもんね。こうやって三人で話すの。』
「うん。…あ、そうじゃ!のっち、自分の家におるんじゃろ?今から行って良い?」
『え、今から?』
「ダメ?」
『あの…今日はあ〜ちゃんののっち独占日でして…』
のっちの嬉しそうな声。
絶対にやけとるし。
あ〜ちゃんがギャーギャー騒いでるのが聞こえる。
「のっち…それは惚気?」
『いや、…違っ』
『ゆかちゃん!?のっちの言ったこと嘘じゃけぇ!』
のっちから電話を奪ったんであろう、あ〜ちゃんの焦った声。
あ〜ちゃん…デレたな。
仕方ないか。
ゆか達が三人で話したのも久しぶりだけど、
あ〜ちゃんとのっちがイチャイチャするのも久しぶりじゃもんね。
悔しいけど、今日はあ〜ちゃんをのっちに譲ろう。
「あ〜ちゃん、やっぱり今日はいいわ」
『でもっ』
「いいーの!ゆか、あ〜ちゃんに誕生日プレゼント渡せてないけぇ、
のっちと二人で過ごす時間をプレゼントで、どう?」
『……ありがと。』
「ひひっ、素直なあ〜ちゃん…好きよー」
『あ〜ちゃんも…ゆかちゃんのこと、大好きじゃー!!』
あ〜ちゃんの発言にのっちが奇声を上げてるのが聞こえる。
ゆかはそれに少しだけ笑って電話を切った。
次の日、のっちに電話をかけた。
あ〜ちゃんはもう帰ったと聞いて、
ゆかはのっちの家にのりこみ、ある計画を二人で立てた。
そして。
守れそうにない約束も。
つづく
最終更新:2009年05月14日 01:52