学園祭も終わり、冬休みも終わり、気付いたらもう3学期。
冬休みは色々忙しく、あ〜ちゃんとの予定が合わなくて全然会えなかった。
メールも、あけおめメールくらいしかやり取りしてなかった。
だから久々にあ〜ちゃんに会えるって思うと、学校に早く行きたくて行きたくてしょうがなかった。
学校に着いたら、あ〜ちゃんは休みだった。
メールを送ったら風邪らしい。
あたしはすごく落胆した。
あ〜ちゃんがいない学校なんて、いても意味はないと思って帰ることにした。
あたしは、肩を落として下駄箱へ向かう。
「のっち!!」
背後から呼ばれた。
振り返ると、ゆかちゃんだった。
「『なんであたしの事呼び止めたの?』って、思ったでしょ?」
まさにその通りです・・・。
「・・・はい」
「今日、あ〜ちゃん風邪で休んだでしょ?」
「・・・はい」
「だから、のっち。これ、あ〜ちゃんちに持ってって」
渡されたのは、みかんだった。
「えっ?」
「えっ、じゃないけ。風邪にはビタミンCが効くのよ。あ〜ちゃんに渡してあげてね」
なんだかよくわからないけど、あ〜ちゃんに会う口実が出来た。
あたしは、あ〜ちゃんに家に行くってメールを送った。
待てども待てども、返信は来なかった。
寝てるのかな?
寝てるなら行くのよそうかと思ったけど、みかんの処理に困るからやっぱり、あ〜ちゃんちに向かった。
一度だけ、前を通った事があったから道順は把握してる。
あ〜ちゃんの家はマンションの7階。
チャイムを押す人さし指が震える。
鳴らすと、あ〜ちゃんのお母さんが出迎えてくれた。
あたしは挨拶をしてみかんを渡す。
それだけで帰ろうとしたら、お母さんが強引にあ〜ちゃんの部屋まで通してくれた。
「あ〜ちゃん、お友達がお見舞えに来てくれたわよ」
お母さんがドアを開ける。
部屋の中を覗くと、あ〜ちゃんはベッドで寝ていた。
それは、まるで王子様のキスを待つ眠り姫のよう。
「たぶん、もうすぐ起きると思うから座ってて。今飲み物持ってきてあげるから」
「あ・・・お気遣いなく・・・」
お母さんはそそくさと部屋を出ていってしまった。
あたしはどうしていいかわからず、部屋の隅っこにちょこんと小さく座った。
何もすることがないので、あ〜ちゃんの寝顔を見る。
熱が高いのか、おでこに冷えピタシートを貼ってる。
約2週間ぶりに会う、あたしの好きな人は風邪で寝てる。
あたしは王子様じゃないから、眠り姫にキスも出来ない。
あたしはどうすることも出来ない。
ただ、なにも出来ず、ただ、見ているだけ。
「ん・・・」
あっ、眠り姫が目を覚ました。
「あ〜ちゃん?」
「うぅわっ!!!ビックリした!!のっち?な、なんで?」
あ〜ちゃんは文字通りビックリして、掛け布団で顔を半分隠してる。
その仕草が可愛いくて、思わず顔がほころびそうになった。
「ご、ごめん。驚かしちゃって。お見舞いに、みかん持ってきたんだ・・・」
「そうなん?・・・あ、ありがとう」
あ〜ちゃんはまだ、掛け布団で顔を隠してる。
「すぐ帰ろうとしたけど、おばさんが部屋に通してくれて・・・。風邪大丈夫?」
「うん・・・。今寝たから、だいぶ良くなったけぇ」
今日のあ〜ちゃんは、いつも学校で会う感じじゃない気がする。
上手く言えないけど、なんか、こう・・・甘い感じ?
「あっ・・・じゃあ、帰るね」
妙に照れくさくなっちゃって、帰ることにした。
「えっ?もう、帰っちゃうの?」
あ〜ちゃんの口から出たこの言葉に、胸がキュンとした。
引き止められた。どうしよう・・・。
帰りたくないけど、帰りたい。
帰りたいけど、帰りたくない。
あたしがオドオドしてると、あ〜ちゃんのお母さんが紅茶とみかんを持ってきてくれた。
あたしはこの紅茶がなくなるまで、帰らないでいようと思った。
だから、一気に飲まないで少しずつ飲んだ。
あ〜ちゃんは、あたしが持ってきたみかんをおいしそうに食べてくれた。
ゆかちゃんからの差し入れって言ったら、すごく嬉しそうだった。
あまりにも嬉しそうだったから、もしかしたら・・・。
あ〜ちゃんの好きな人ってゆかちゃん?って脳裏に薄っすらとよぎった。
まさかね・・・。
それにそんな事思っても、あ〜ちゃんにもゆかちゃんにも誰にも訊けない。
「のっちも食べる?」
あ〜ちゃんに半分に割ったみかんを貰った。
食べたらとても甘くて少し酸っぱかった。
それはまるで、あ〜ちゃんみたい。
あたしの心を甘くしたり、酸っぱくしたりする。
あ〜ちゃん・・・あなたの心を甘くしたり酸っぱくするのは・・・誰なの?
最終更新:2009年05月14日 01:55