「けど、ゆかちゃん、、、きっと、のっちのこと待っとるよ」
あ〜ちゃんの言葉が胸に突き刺さる。
「そんな簡単に諦められる関係なん?」
そんなの、、出来るわけなんてないよ。
出来るわけないよ。
今更、彼女を失えるわけがない。
時々見せるひどく幼い顔も。
眠くなると一段と甘くなる声も。
本当はすごく泣き虫な彼女を。
過去のものになんて出来るわけがない。
「その程度の覚悟しかないん?」
覚悟、ならしてる、って思ってた。
ゆかちゃんを守りたい、って。
ゆかちゃんのためなら、何でもできるって思ってたよ。。
完璧主義だけど不安定。
クールだけど負けず嫌いで意地っ張り。
たくさんの矛盾を抱えている彼女。
そうだ。
いつだって、その矛盾の間に彼女はいた。
「失ってからじゃ、遅いんよ?」
世話焼きなのは、誰よりも空気を読んでいつも周りを気にしてるから。
独り言が多いのは、自分の存在や価値を認めて欲しいから。
不安は伝染すると言う。
だとしたら、先に不安を抱いたのはどっち?
どうして、泣いてた君を抱き留めてあげられなかったんだろう。
どうして、飛び出して行く君をちゃんと捕まえてあげられなかったんだろう。
迷ってたのは、
躊躇ってたのは、
怖がってたのは、
わたしだ。
「ゆかちゃんが好き?」
目頭がじわじわ熱くなるのを感じながら、何度も大きく頷いた。
涙を零すにはまだ早いのに、あ〜ちゃんが優しく頭を撫でるものだから、こらえきれなかった涙がボロボロと頬を伝っていく。
「もう、ほんまに手のかかる子じゃねぇ」
ふわりと、花の香りがしたと思ったら、あ〜ちゃんの腕に抱きしめられていた。
ゆかちゃんとは違った温もりと柔らかさ。
あやすように頭をポンポンを軽く叩くリズムが心地いい。
「あ〜ちゃ、、ぁりがと、、、」
搾り出した声はひどく掠れていた。
「ふふふ。こうしとると、のっち、、犬みたいじゃ」
「ふぇ・・・・ちょw犬ってw」
突然の例えに思わず顔を上げると、あ〜ちゃんのしたり顔。
「やっと、笑った」
ああ、やっぱり、この人には適わないな。
なんて、いつも通りの無条件降伏。
「はよ、行ってあげんさい」
お得意のどや顔のまま、肩を叩いてくれた。
真っ直ぐな彼女の瞳を見つめながら、唇を噛み締めて、一度だけ大きく頷く。
走り出した。
忙しく人が行き来する通路を走り抜ける。
ねぇ、ゆかちゃん。
今更のっちがゆかちゃんにしてあげられることなんて、一つだってあるのかな?
のっち、アホだから、考えてもよう分からんのよ。
考えても分からんから、教えてよ。
アホなりにさ、ちゃんと気持ち伝えるから。
スタジオを出てすぐタクシーを拾う。
もたもた乗り込む時間すら惜しい。
ねぇ、ゆかちゃん。
まだ間に合いますか?
まだ君の心にわたしの居場所はありますか?
「どちらまで?」
告げた行き先はもちろん、、
最終更新:2009年05月14日 02:24