放課後、あたしはコートを返す為あ〜ちゃんちに行った。
チャイムを鳴らすと、あ〜ちゃんの妹が出た。
「あ・・・あ〜ちゃん、いますか?」
「お姉ちゃん、具合悪いって言って、今寝てます・・・」
「そうですか・・・じゃ、これ借りてて返しに来ただけなんで・・・」
あたしは妹にあ〜ちゃんのコートを渡して帰った。
コートを着ないで帰ったから、風邪がぶり返しちゃったのかな・・・。
あたしは、一晩中あ〜ちゃんの体調を心配しつつ、急に冷たくなった態度に悩まされた。
だから一睡も出来なくて、目が赤くなってしまった。
寝不足の体で学校へ行く。
下駄箱に着くと、あ〜ちゃんのローファーがすでに置いてある。
といことは、あ〜ちゃんはもう教室にいる。
学校に来れるってことは、体調は平気って事だよね?よかった・・・。
あたしは教室の後ろの出入り口から入った。
あ〜ちゃんの周りにはすでに他の友達がいる。
「あっ、のっちおはよう」
「大本さん、おはよう」
その子達があたしに気付いて、挨拶してくれた。
「・・・おはよう」
あたしは、あ〜ちゃんを横目にしながら返事。
あ〜ちゃんは、おはようを言ってくれなかった。
目を合わせてくれなかった。
まるで、あたしが見えてないような態度。
あ〜ちゃんに話しかけようと思っても、みんなの輪に入っていけない。
あたしは、おとなしく隣で座ってるしか、出来なかった。
朝のHR。
小声であ〜ちゃんに話しかける。
「昨日コート忘れていったでしょ?帰り寒くなかった?」
「んー・・・」
あ〜ちゃんはあたしを見ずに生返事。
「ねぇ、、、キーンコーン・・・
もう一度話しかけようとしたら、予鈴に邪魔された。
一時間目は体育。
いつもならあ〜ちゃんは必ずあたしを誘ってくれて、一緒に更衣室まで行く。
でも今日は違った。
あ〜ちゃんはあたしを置いて、他の友達と一緒に行ってしまった。
すごいショックだった。
すごい泣きそうになった。
あ〜ちゃんがどうして、こんな事ばっかするのかわからない。
本当に嫌われてしまったんだろうか・・・。
なんで?
もしかして、あたしの気持ちがバレた?
気持ち悪いって思った?
そうなの?そうなの、あ〜ちゃん?
あたしはこんな状態で体育なんて出来ないと思って、保健室へ逃げた。
保健室のドアをノックするけど、中から返事はない。
そっと開けると、誰もいなかった。
ストーブは付けっぱなしみたいだから、温かかった。
あたしは奥のベッドに入って不貞寝をする。
保健室の布団は独特な臭いがして、寝心地は良くない。
それでも授業に出るよか、マシ。
掛け布団を頭まで被る。
眠いんだけど、寝れない。
だって・・・あたしの頭ん中は、あ〜ちゃんに支配されてる。
目を瞑るとあ〜ちゃんの残像が見える。
あ〜ちゃんの声が耳に残って離れない。
あ〜ちゃんのつけてる香水が鼻に残って忘れられない。
あたしの心ん中は、あ〜ちゃんへの想いでいっぱい。
ガラガラ。
ドアが開く音がした。
「おーい。何年何組の何さん?」
独特の可愛い声で、すぐわかった。
声の主はゆかちゃん。
「2年6組の大本です・・・」
あたしは頭だけを出して答える。
「のっち!?どしたん?」
ちょっと驚いてるゆかちゃん。
「・・・体がだるいんで、体育休みました」
「ふーん。そうなん?熱計った?」
ゆかちゃんは、あたしのおでこに手を当てる。
「うーん。熱はないみたいね」
「はぁ・・・」
あたしは上半身だけを起こす。
「どした?何か悩みでもあるん?」
ゆかちゃんはベッドの隅に腰を落とす。
「いや・・・」
「人に話して楽になるって事もあるんよ?無理にとは言わないけど、話だけでも聞くよ?」
「はぁ・・・あの・・・あたし・・・あたしの友達の話なんですけど・・・」
「友達の話?」
「は、はい・・・」
「どんな内容?」
「あのですね・・・すごく仲のいい友達に、ある日、突然冷たい態度を取られたみたいなんですけど・・・」
あたしは自分の相談なのに、『自分の友達』として、ゆかちゃんに相談した。
「急に?」
「はい。急に」
「うーん。その友達はその仲のいい子に、何かしたって心当たりはないの?」
「まったく、心当たりはないんです・・・って言ってました」
ゆかちゃんは頬に手を当てて、真剣に相談に乗ってくれている。
そんなゆかちゃんに悪いなぁっと思いつつも、あたしは『自分の友達』って事にして話を続ける。
「・・・で、あたし・・・の友達は、実はその、仲のいい子の事が好き・・・みたいなんですよ・・・」
「ふむ」
相槌をうつゆかちゃん。
「もしかしたら、あたし、の友達の気持ちが、その子にバレちゃって、避けられてるのかな・・・って言ってました」
「ふむ」
また相槌をうつゆかちゃん。
「どうしたら、いいんでしょうか・・・」
「うーん。わかんにゃい」
えー・・・そんなとびっきりの笑顔で言われても困るんですけどw
相談してんのに、全然ダメじゃんww
「もしかしたら、その・・・のっち、の友達を避けてる理由が他にもあるかもしれんよ?」
おっ、ちょっとはまともな事言ってくれた。
「他の理由?」
「うん」
「あたしの気・・・、あたしの友達の気持ちがバレてなくて、他の理由で避けてるって事?」
「うん」
「・・・例えば?」
「うーん。先生、そこまではわからんよw」
「ですよねw」
「やっと、笑ったね」
そう言って、ゆかちゃんはあたしの頭を優しく撫でてくれた。
「え?」
いきなりそんな事言われたら動揺した。
「だって、のっちずっと不安そうな顔だったよ?それにハノ字眉だったしw」
「マジっすかw」
あたしは手のひらで眉毛を隠す。
カタンって音がして、急に部屋が寒くなった。
「あっ、灯油が切れた。あーあ、取りに行かなきゃ」
ゆかちゃんはめんどくさそうに言う。
「あ・・・じゃ、あたし教室に戻ります」
「あっ、のっち!!」
あたしが保健室を出ようとしたら呼び止められた。
「はい?」
「のっち・・・その友達に伝えて。人を好きになるのは悪い事じゃないよって」
「えっ?」
「たとえ、好きになっちゃいけない相手とか、叶わないってわかってても、人を好きになるのは素敵な事なんだよ」
「・・・・」
きっとあたしの今の眉毛はハノ字だろう。
あたしはペコってお辞儀をして、保健室を出た。
ゆかちゃんの最後の言葉になんだか救われた気がした。
だいぶ心が軽くなった気がした。
あ〜ちゃんを好きなのは悪い事じゃないんだ。
あ〜ちゃんを好きなのは素敵な事なんだ。
あ〜ちゃん・・・あなたがあたしを避けていても、あたしの気持ちは変わらないよ。
最終更新:2009年05月14日 02:28