一人でいるのは好き。
独りになるのは嫌。
あたしと彼女は、本質的に似ている。
一人の時間を持て余す事はなくても、独りの時間は持て余してしまう。
あ〜ちゃんという大切な友達を得た今でも、あたし達は孤独に怯えている。
そして、二年前のあの日に起こった出来事が、更に拍車をかけたのだろう。
…酷く、雨が降っていた日だった。
深夜、雨の音と携帯の着信音を布団の中で聞いた。
「んー…」
手探りで携帯を見つけ、発信者を見て驚いた事を良く覚えている。
「もしもし…」
『ザーッ』
でも、鼓膜を揺らすのは喝采にも似た雨の音。
途端に不安になって彼女を呼んだ。
「ゆかちゃん…?」
『……の、…ち』
掻き消えそうな声。
「どうしたん?傘無くて帰れなくなった?」
『……』
「ゆかちゃん?…今どこ?」
『…彼の家の前…』
ギクリ、心臓が軋んだ。
嫌な予感がした。
もしかして、彼女はまた。
そう考えたらいてもたってもいられなくて、体一つで家を飛び出した。
「ゆかちゃん…」
「…ぁ、…のっち…」
彼女は体一つで外にうずくまっている。
酷く雨に打たれている。
「…のっちん家、おいで」
「………うん」
着ていたパーカーを彼女に着せて、裸足のままの彼女をおんぶした。
「傘、持てる?」
「うん…」
「寒いと思うけど、ちょっとだけ我慢してて」
「…………のっち、あったかいね…」
シャツにじわじわ染み込む雨水。
ぽたぽた、彼女の髪から落ちる雫。
弱々しく肩に置かれたままの震える手。
そのどれもがのっちには冷たく感じた。
ゆかちゃんは人見知りするくせに独りぼっちになるのが嫌な子だった。
だから誰かとの繋がりを求めて、悪い男にひっかかる事もしばしばあった。
今回もそうだった。
「温度大丈夫?」
「ん」
ぽちゃん。
天井から滴り落ちる雫が湯舟に広がる。
「……のっち…」
「ん?」
「…ゆか…捨てられちゃった…」
「……そっか」
「もう、お風呂あがる」
「うん」
滴り落ちるお湯を丁寧にタオルで拭い、ゆかちゃんを無意識に抱きしめた。
彼女の髪から落ちた雫がシャツに染み込んでいく。
「のっち…?」
「…のっちが代わりになるよ」
「え?」
「独りが嫌ならのっちに甘えていいよ。利用していいよ」
「…」
これは同情でも、優しさでも無かった。
そこに感情など微塵も無かった。
気がついたら口にしていたんだ。
「じゃあ……ゆかの事、抱いてよ…」
最終更新:2009年05月14日 02:50