「のっち、この問題わかる?」
2つ並べた机
横にいるゆかちゃんがノートを差し出してきた
「どれ〜?」
一応覗き込んで見るけど…ん〜
「わっからん!」
「だと思った」
「なんよそれ〜。じゃあ聞いてこんでよ」
いつもの放課後とはちょっと違った、ここ数日の放課後
そう、…高校生の宿敵とでも言っとこうかな
期末テストがもう、すぐそこにまで迫っていた
「は〜もぉテスト週間は地獄だよ」
「え〜?」
「毎日毎日学校に残って勉強して、家に帰ってもまたやって…勉強勉強勉強で…ああ早く終わらんかなっ」
ノートとシャーペンを机の上にほっぽったゆかちゃんは椅子の背もたれにだらっともたれてる
その姿見るの今日だけで3回目
一昨日から合わせたら軽く10回は越えてる
地獄か。確かに勉強は地獄だ
でものっちにはある意味この期間は天国だったりする
テスト週間は毎日放課後、2人学校に残って勉強をする
1年の時からずっとそうしてきたことで、のっちにとってはちょっとしたイベント感覚だった
横でダラけてるゆかちゃんとか
横で眠そうにしてるゆかちゃんとか
横で真剣に勉強するゆかちゃんとか
色んなゆかちゃんが見れるのが楽しくて可愛いくて、うん、やっぱ天国だ
おっ、またシャーペン持った
そろそろ本領発揮ですか?樫野さん
「ねぇのっち、はいコレやって」
しばらくすると、バン!っと目の前に1枚のルーズリーフが出された
「何?」
「解いてみてよ」
そこにはたくさん並べられた小さな正方形
正方形の中の所々に振り分けられてる1〜5の数字
四角の外にはまた1〜5の数字と、問題…?
……要するに
「クロスワード?」
「そうです!やってやって♪」
「勉強…」
「休憩しよ。ねっ?」
頑張って問題解いてるのかと思ってたら…こんなの作っとったんじゃ
ルーズリーフごしにチラっと見ると目を輝かせてのっちの反応を待ってるゆかちゃん
…早く早くって目だねそれ
「解けたらなんかくれんの?」
「ふふふ〜秘密♪」
さぁやってみましょー
って張り切って言うのはいいけどさ、
…まぁ、可愛いからいっか
案外難しいなコレ…
「ねーまだー?」
「…まだです」
「遅いよぉ。あと5分ね」
「えー!そんなん無理!」
「無理じゃない。やるの。」
「…はい」
なんでこんな必死にならんといけんのん!
ちょっと涙目になりながらも頭をフル回転させてマスを埋める努力をする
でも…
「…チッチッチッチッチッチ」
「ちょ、それ気ぃ散るけえやめて」
「ニフンマエデス」
「嘘っ!早くない?」
「…チッチッチッチ」
「うう〜」
何故だか必死になってしまう
もうちょっと!もうちょっとだと思うんだけどなぁ…!
「…チッチッチッチボーン!タイムオーバァァアー!」
「あぁぁ…負けた…」
悔しい…なんかめっちゃ悔しいんですけど
「あ〜あ。解けんかったねぇ」
「…別にいいもん」
「よくないよ」
「いいの」
「よくないの!」
「なんで?」
「だって…」
そう言って俯いたっきり顔をあげてくれない
何?そんな重要なもんだったの?コレ
綺麗な黒髪にできるキューティクルが眩しい
とりあえず、腕を伸ばしてそれに触れた
「えっと…なんかごめんね?」
「…それ宿題ね」
「えぇ〜…」
「忘れたらダメだよ」
家でも勉強勉強勉強…ゆかちゃんの言った通り、やっぱり勉強してます
まぁしゃあないよね。勉強するのが仕事だもん
ゆかちゃんもさすがに勉強してるだろうなぁ…あっ。
ふと、あの紙を思い出した
息抜きがてらにやってみよ
忘れたらダメ…かぁ
ちゃんとやってかないと怒られるんかな
ゆかちゃんが決めた答えに染まっていく四角いマス
さっきより頭がよく動いてくれる
ゆかちゃんの心の内を探るかのようで、解いてくうちになんだかくすぐったくなる
一体このマスに何を隠したんだろう
「………できた!」
ヤバイ、達成感はんぱない
頭の体操みたいで、勉強勉強ばっかで疲れてた脳が余計疲れた気もするけど
とにかくなんかめっちゃ、嬉しい
さてさて、1から5の文字を順番に読むと…
「キ、…ス、シタ…イ…?」
疲れも一気にぶっとんだ
ああ、もう、好きだ
好きだ好きだ好きだ
あぁ!明日の答合わせが待ち遠しい
こんな事なら意地でも今日解いとくんだった
「解けたよ」
朝、靴箱で早速見せつける
じゃーん!と目の前に出すと、小さく笑った
「正解?」
「正解♪」
やっと解けたパスワード
瞬間、引き寄せられた唇は心に直接触れたみたいに柔らかかった
最終更新:2009年05月14日 02:52