「あ〜ちゃん、今日あったかいから、屋上でお弁当食べようよ」
あ〜ちゃんから避けられるようになってから、三日経つ。
三日間、あ〜ちゃんから話しかけてもらったのは、片手で数えられるくらいの回数。
いつもは、あ〜ちゃんが話してあたしが聞き手に回る役割だから、あたしが話しかけるのはほとんどない。
けど、今はいつもの状態じゃない。
だからあたしは積極的にあ〜ちゃんに話しかけている。
「んー・・・あ〜ちゃん、今日お弁当じゃないから、屋上へは行かん・・・」
あたしとしゃべる時はいつも下を向いて、目を合わせてくれない。
「学食?」
あたしはそんな態度にめげずに、会話を続ける。
「・・・うん」
ためらいがちな返事。
「んじゃ、あたしも学食にする。一緒に食べよ?」
「うー・・・」
あ〜ちゃんは小さく唸ってる。
どうやら返事に困ってるみたい。
あたしはNOって言われたくないから、あ〜ちゃんの手首を取って強引に学食へ連れて行った。
「どれにする?」
「どれも食べたくない・・・」
「食べたいのない?」
「・・・ない」
「じゃ、なに食べたい?」
「・・・コンビニの、肉まん」
「わかった!!走って買ってくるから、ちょっと待ってて!!」
「え?うそ・・・のっち!?」
あたしはあ〜ちゃんの戸惑いを背中で感じながらも、学校の坂の下にあるコンビニまで急いだ。
本当はお昼休みに学校を抜け出して、外に出てはいけないけど、あ〜ちゃんの望みは叶えてあげたい。
あ〜ちゃんがあたしを避けてても、あたしはあ〜ちゃんの傍にいたい。
だから、あ〜ちゃんの要求は自分が出来る範囲内だったら、なんでもする。
先生の目を盗んでコンビニまでたどり着いた。
急いで肉まんを買って学校に戻る。
戻ってきたら、お昼休みはあと5分だった。
あ〜ちゃんは裏口で待っててくれていた。
あたしは息を切らして買ってきた肉まんを渡そうとしたら、「アホじゃ!!」って、怒鳴られた。
「へ?だ、だって・・・あ〜ちゃん、肉まん食べたかったんでしょ?」
「それがアホじゃって、言ってるんよ・・・」
「ど、どういう事?」
「なんで間に受けるん・・・」
「へ?」
「嘘に決まっとるじゃろ!!」
「なにが?・・・えっ?えっ?肉まん食べたいって、嘘だったの?」
「・・・・」
あ〜ちゃんは黙ってしまった。
顔を見たら少し涙目だった。
「まっ、いいや。あ〜ちゃんが食べなかったら、あたし食べるし♪」
あ〜ちゃんが何でそんな嘘言ったのか、理由はわからない。
ここであたしが責めたらきっと、あ〜ちゃんが泣いてしまうと思ったから。
だからあたしは、責めなかった。
だって、あ〜ちゃんの泣き顔は見たくないから。
「ダメ!!食べる」
あたしの手から肉まんを奪うあ〜ちゃん。
「え〜、そしたらあたしの食べるもん、なくなっちゃうじゃんw」
「のっちは、これ食べればいいじゃろ」
つっけんどんに渡されたそれは、あたしが一番好きな具がはさんであるサンドイッチ。
あ〜ちゃんがあたしがコンビニに行ってる時に買ってくれてたんだ。
しかもあたしが好きな具を。
だたそれだけなのに、すごく嬉しかった。
「ありがとう、あ〜ちゃん。すげー、嬉しい」
あたしは素直に気持ちを伝える。
「サンドイッチくらいで、大袈裟よ・・・」
素っ気無い返事だけど、その奥には照れが感じられたような気がした。
「って、あ〜ちゃん。どこいくの?」
「どこって、今日はあったかいから、屋上でお昼食べるんでしょ?」
「いいの!?」
「いいのって、のっちが言いだしっぺじゃろ?」
あ〜ちゃんが三日ぶりに笑いかけてくれた。
あたしたちは屋上へ昇って、サンドイッチと肉まんを食べて、ただ何をするでもなく、ただボーっとしていた。
その雰囲気がとても心地良かった。
あたしはあ〜ちゃんに避けていた理由を訊かなかった。
たぶん訊いたら、あ〜ちゃんを困らすと思ったから。
だからあたしは、訊かなかった。
だって、あ〜ちゃんの困った顔は見たくなかったから。
避けていた理由なんてこの際どうでもいい。
元通りに、あ〜ちゃんと一緒にいれるようになったんだ。
もうそれでいいじゃん。
もうそれで充分じゃん。
あ〜ちゃん・・・あたしはあなたの笑顔が好き。だから、あたしのせいで泣いたりしないで。
最終更新:2009年05月14日 02:59