n-side
ピーンポーン
震える指が呼び鈴を鳴らす
本当は電話して出てきて
貰おうと思ったんだけど…
あ〜ちゃん家に携帯
忘れてきたみたいでさ。
とりあえず早く彼女に
会いたい。話したい。
カチャ
扉の向こうには驚いた
表情の愛しい彼女…
「…なんでおるん?」
「本当にごめん。」
「え?」
「全部聞いたから。」
濃いめのチークで
色付いていた頬が
一気に青冷めていく
「ごめんね。気付いてあげられなくて…」
「誰に聞いたん?」
「彼の電話を盗み聞きした」
「そっか…」
「本当にごめんね。苦しかったでしょ…?」
「…。」
「こんなのっちのこと、もう好きじゃないかもしれんけど…」
「…。」
「のっちはゆかちゃんが好きだよ。もう悲しい思いはさせないから…のっち逹やり直せん?」
その瞬間、彼女の頬を涙が伝う
それをすくい取ろうと手を伸ばす
パシッ
「やっ…」
え? ゆかちゃん…?
一瞬何が起こったか分からなかったけど
ジンジンと痺れる手の感覚で
拒まれたことを理解する。
「ゆか逹はやり直せんよ…」
ガチャン
「なんでよ…」
私は閉じた扉の前に立ち尽くした。
k-side
「ゆか逹はやり直せんよ…」
そう言って扉を閉めてから
何時間たっただろう…
のっちは未だに扉の前に座っていた
クシュン
時々聞こえるそれは
彼女のものだからすぐ分かる
クシュン
クシュン
クシュン
あぁ…もっ!!
居ても立ってもいられなくなって
扉に手をかける
「風邪ひくから早く帰りなよ。」
「嫌だ」
真っ赤な鼻を啜る彼女
「話してくれるまで帰らん」
「さっき話したじゃん…」
「ゆかちゃんの気持ち聞いとらん」
「ゆかはやり直せないっていったじゃん!!」
自分でも驚くほど大きな声がでる
「嫌だ!!」
彼女も声を張り上げる
「無理なのっ」
「無理じゃない」
真っ直ぐな瞳に捉えられて何もいえなくなる
「何で、ゆかを困らせるんよ…」
「もう。ゆかちゃんを泣かせたくない」
「はぁ…どうしたらいいかわからんよ…ゆかは、のっちに辛い思いさせたくないんよ…」
どうしようもなくて涙が溢れてくる
「ゆかちゃんは…のっちのこと好きじゃないん?」
「好きだよ。だけど、やり直せない。ゆかはのっちにたくさん酷いことした…のっちには笑っていて欲しいんよ。」
「あんね?のっちはゆかちゃんが居るだけで幸せだし笑顔になれるん。どんなに辛いことあってもゆかちゃんさえ居てくれたら大丈夫なん」
「でも…」
やり直せんよ。
その言葉は抱き締められた腕の中で掻き消された
「もーうっさい。のっちのことが好きならそれでいいよ。そんな不安なんか全部無くしてあげるから…のっちの女になりなさい!」
へへ♪ってハニカム彼女
「っう…」
涙が止まらない
今まで抱えてきたモノが
その言葉でスッと消えた気がした
のっちを悲しませたくない
二度と辛い思いさせたくない
けど、のっちの側にいたい。
ずっとずっと思ってたこと…
もう一度この腕に甘えていいのかな?
ギュッ
私の気持ちが分かってる
みたいに腕の力が強まる
あぁやっぱり。。。
私はここが好きなんだ…
暖かくて優しくて力強い
最初から何で気付かなかったんだろう
何があっても支えてくれるこの腕
いつだって一緒に乗り越えてきたじゃん…
いつだって2人なら楽しかったじゃん…
一番、大事なこと忘れてたみたい…
のっちが好き。"だけど"
この"だけど"が要らなかったんだね
そう思ったら
また涙が溢れてきた
「ふっ…う」
「泣かないの!」
「っ。むりだよぉ…」
「知ってる」
「いじわる…」
「知ってる」
「ゆかワガママだよ?」
「知ってる」
「ヤキモチ焼きだよ?」
「知ってる」
「素直じゃないよ?」
「知ってる」
「のっち、好きだよぉ…」
「全部、知ってるよ」
頭を撫でてくれる手が愛しい
「ごめんね…辛かったでしょ?」
「うん。」
「のっちバカだから気付いてあげられなくてさ…」
「うん。」
「ゆかちゃんに嫌われたかと思ってずっと、寂しかった」
「うん。」
「これから、のっちが守るから」
「嫌。」
「え?」
「2人で守るの。」
「ふふ。そうだね…」
クシュン
「あ、ごめん中入ろっか。」
最終更新:2009年05月14日 03:02