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サイドK


生ぬるい風がカーテンを揺らして部屋を通りすぎる。
私の愛しの人の髪も揺らして、優しい目を隠したり見つけたりかくれんぼ。
不器用な指先で髪をかきわける愛しい人。
季節は春。
しばらくの彼女の春休み中、私たちは何をするでもなかったけど、
お互いの温度を肌で感じながらやわらかい時間をすごした。
私がバイトの時、彼女はご飯を作ってくれたり、
普段はしないのに部屋を片付けてくれたり、
ちょっとしたことがうれしかった。




『おつかれさまでした〜』
大学をやめてからずっと続けているバイト先。
一息つく間もなく、早々と休憩室から足を進めた。

早く帰ってのっちに会いたい。
スーパーで買い物して、愛しい人にご飯をつくってあげたい。
その気持ちが私の足を速めた。




『あ!!』
店から外に出た瞬間聞こえてきた声に、思わず振り向く。
『おつかれ。』
振り向いた先には、優しい顔した愛しの、のっち。


『なっ!!ど、どーしたん!?』
『ぶはっwそんな慌てるなし。』
驚いていると、そんな私を見て爆笑しだした。


『ちょ、のっち!!』
『ははっwいや、ごめんごめんwそんな慌ててるの見る機会なかなかないからさ。』
眉を八の字にして笑ってる。
クールな彼女からは想像できないような顔が可愛い。


『てか、どしたん?』
慌てて聞く私を、優しく優しくなだめるように笑って、
私の左腕にかかった重い鞄をさりげなく持って、
もう一度優しく優しく笑って、
『ん?迎えにきたんだよ?』




またそうやって私を喜ばせる。
“ずるいなぁ”
なんて思いながらも、あいた右手をのっちの左手に絡ませた。
『帰ろっか。』
左手はしっかりと指を絡ませて、
右手で私の重い鞄を持って、
のっちは“当たり前”な顔をして私をひっぱり歩きはじめた。
こらえきれない想いが口からこぼれる。

『ねぇ?のっち!』
『ん?』
『なんでそんな優しいん?』
『なにが?』
片方の眉だけあげて、困ったように笑うのっち。
『だって迎えにきてくれたし・・・』
『へ?そんなん普通じゃない?』
やっぱり“当たり前”な顔をしてる。

『早く会いたいから、来ただけだよ。』
出会った頃から変わらないクールなとこ。
そんなん言われたら嬉しすぎて涙出そうなるよぉ。

『優しいんだね?w』
無理して笑って、絡まった手に力をいれた。

『ゆかには、ね。』
ギュッと握り返してきたのっちのセリフ。
いつだってゆかを喜ばせる。



二人の愛の形が、
出会った頃と変わっても、
私はいつだってのっちに守られていて、
のっちはいつだって私を守りたくて、
その形だけは変わらないんだろうな。


握り返した手を見つめて、
“もう絶対離さない”
と、心に誓った。







最終更新:2009年05月14日 03:23