パタン。
ドアの閉まる音がして、ゆかはようやく目を開いた。
「…」
撫でられたおでこに手をやる。
まだ、のっちの手の温もりがしてる気がした。
…ごめん、のっちはそう言った。
どう考えたって、ゆかの我が儘なのにのっちは絶対ゆかを責めたりしない。
それはトモダチだから?
ゆかがトモダチだから?
「…っ」
ぎゅう、シーツを掴んだ。
トモダチって言葉が、こんなに足枷になるだなんて思ってなかった。
胸が締め付けられる言葉だなんて、微塵も思ってなかった。
いつの間にか、のっちの存在がこんなに大きくなってたなんて。
「…のっち…」
一人で眠るベッドはやけに大きかった。
はぁ…はぁ…。
熱い、息が上手く出来ない。
クルシイ、ツライ、カナシイ、サミシイ…。
冷たい、苦い、痛い、切ない。
助けて、誰か、ダレカ。…のっち。
…のっち?
のっち、ねぇのっち、どこ?
やだよ、ゆかをひとりにしないで。
もうわがままいわないから、もうあまえたりしないから、ゆかのそばからいなくならないで。
ひとりはもうやだよ…!
「—っ!…っ、はぁ…はぁ…」
視界いっぱいに白い天井。
熱い。おでこに汗かいてる。気持ち悪い。
…嫌な夢、見ちゃったな。
とりあえず水分が欲しくて部屋を出た。
「……のっち?」
いつもならソファでうたた寝してるのっちが今日はいない。
キッチン、浴室、トイレ…捜し回ってもどこにも姿がない。
「…のっちー、ねぇどこにおるん?のっちぃ」
やだ、やだやだ。嘘でしょ、ねぇ。
さっきのは夢じゃないの?
ねぇのっち、ゆかを独りぼっちにしないって言ってくれたのに。
「のっちぃぃ…やだよぉ…」
ぺたん、リビングにへたりこんだ。
なんで呼んでも呼んでもどこにもいないの?
のっち、ゆかの事嫌になったの?だからいなくなったの?
「ひっく…の…ちぃ…っ、やだぁ…」
独りぼっちはもうやだよ…。
—ガチャガチャ。
「…っ、のっち…?」
ガサガサと何かを手に、のっちが玄関で靴を脱いでいる。
「ゆかちゃん、もう起き…ど、どうしたん!?」
ゆかが泣きべそかいてへたりこんでるのを目にしたのっちは、手にしてた袋もそのままに慌てて駆け寄ってきた。
「どうしたん?怖い夢見た?」
ぎゅうと抱きしめられて、ぽんぽんと背中を優しく叩いてあやされる。
「ひっく……のっち、が…いなくなっ…おも、…て」
「うん」
「ゆか、のこと、きらいに…なっ、っく…なったのかな、って…」
「うん」
「ひ…とりぼっ、ち…なった、って…ひっく」
「…しないよ。ゆかちゃんを絶対独りぼっちにしたりしない。…ごめんね」
「うん…」
のっちの腕の中、ゆかはひたすらしがみついていた。
…ゆかは。
この優しい腕の中にずっといたい。
この優しい鼓動をずっと聞いていたい。
この優しく響く声に守られていたい。
…ゆかは、やっぱり。
のっちじゃなきゃ、もうだめなんだね。
最終更新:2009年05月14日 03:40