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3学期が終わり、春休みに入った。
なんだかんだで、ここに越してきて半年。
この学校に転校して半年。

あ〜ちゃんと知り合って半年。
半年経っても、ふたりの関係は変わらないまま。
あたしは、あ〜ちゃんに対する気持ちを半年間ずっとひた隠してる。

気持ちを伝えて今の関係が壊れてしまうなら、ずっと友達のままでいい。
自分の気持ちを知ってもらうよりも、あ〜ちゃんの傍にずっといる方がいい。

きっとあたしの気持ちを知ったら、あ〜ちゃんはどうしていいかわからず困ってしまうだろう。
戸惑ってしまうだろう。
あたしは、あ〜ちゃんを困らせたくない。
自分の気持ちを隠しながら、あ〜ちゃんと接するなんて卑怯かもしれない。
そう言われても構わない。
あたしはただ、あ〜ちゃんの傍で笑ったり、おじゃべりしたり、楽しんだり、色んなことをしたいだけ。

♪〜〜〜

家でゲームをしてると、携帯が鳴った。
この音はメールだ。
送信者は、あ〜ちゃん。

『のっち〜。明日一日ひま?』

おっ、これは遊びのお誘い?
そう期待して、ドキドキワクワクしながら即返信。

『ひまひま。チョー暇人です』

『じゃー、明日一日遊ばない?』

やっぱり、遊びの誘いだった!!
やっばい!!チョー嬉しいんですけどwww
そういえば、休みの日に遊びに出かけるってすんごい久々だよ。

『遊ぶ遊ぶ!!チョー楽しみ!!』
あたしはウキウキしながら返信。
すぐあ〜ちゃんからメールが来て、待ち合わせ時間と場所が書いてあった。


———

「寝不足?」
不意にあくびをしたら、あ〜ちゃんに尋ねられてしまった。
あたしは今日あ〜ちゃんと遊ぶのが楽しみで楽しみで、昨日の夜は全然寝付けなかった。

「あ・・・いや、、あ〜ちゃんと遊ぶのが楽しみで、寝るのが遅くなっちゃったw」
「それって、遠足の前の日みたいな感じのやつ?」
「そうそうwwそんな感じそんな感じww」
「のっち、可愛いトコあるんだね・・・」

へ?あたしの事、可愛いって言った?
どうした?あ〜ちゃん・・・。
いやいや・・・可愛いのは、あ〜ちゃんだよ?
私服久しぶりに見たけど、すげー可愛いよ?

そんで今日はすごく優しくて甘い雰囲気バリバリなんですけど?
そんなあ〜ちゃんに、ドキドキなんですけど?
ほらだって、今もあたしにとびっきりの笑顔をくれてるじゃん?

う〜ん、この前までは突然避けたり、今日はチョー甘い感じだったり、あ〜ちゃんはつかみどころがない。
けど、そんなあ〜ちゃんが好きなんだよな〜なんて、思ったりする。
コロコロ表情が変わる、感情豊かなあ〜ちゃんが大好き。

「で、あ〜ちゃん、今日はどこに行く?映画とか?カラオケとか?バッティングセンター?それとも、ファミレスでまったり?」
「全部!!」
「へ?」
「へ?じゃないけぇwwのっちが言った場所、全部行こう?」
「ぜ、全部?」
「そう、全部!!ほら、もたもたしてたら時間がなくなっちゃうけぇ。行くよ!!」
あ〜ちゃんはあたしの手を取って、ここから一番近くの映画館へと向かった。

それからあたしたちは映画を観て、カラオケで2時間歌って、バッティングセンターで2000円分くらい使って、今ファミレスでまったりしている。
朝から遊んで、今の時間はもう夕方。

「ふぅ〜。いやー、今日は遊んだねww」
あたしはドリンクバーで取ってきたコーラを一気飲み。
「ほじゃね〜。楽しかったわ〜w」
あ〜ちゃんはミルクティーをストローで飲んでる。

「うん。チョー楽しかったね。お金はめっちゃ使ったけどw」
「それ、のっちだけじゃろ?ムキになって、バッティングセンターで2000円も使ってるんだもんw」
「だって・・・」



それは・・・やっぱり、好きな人の前では良い格好したいじゃん・・・。
でも、バッティングセンターなんて初めて行ったし、ボールが意外と速くてまったく打てなかったんだよね・・・。
だから、何度も何度もチャレンジしたんだよ・・・。

なんて、言えない。

「ふふ・・・。のっち、またハノ字眉になっとるw」
やめてよ。そんな優しい顔して笑わないでよ。
やめてよ。そんな優しく見つめないでよ。

「あぁ、ほんと今日は楽しかった・・・」
あ〜ちゃんがこう呟いた。
「どーした?なに、しみじみしちゃってんの?w」
あたしはそんなあ〜ちゃんを茶化す。

「えー・・・だって、ほんとに楽しかったんよ?」
いつもなら、あたしが茶化すとキャンキャン歯向かってくるくせに、今日はオトナな対処のあ〜ちゃん。
そんな態度を取られるとちょっと調子が狂っちゃうよ。

「あ・・・あー、明日から高3になるね〜。なんかあっという間だな・・・」
あたしは会話の内容を変える。
「んー・・・そうね。てか、なにがあっという間なん?」
「いやいや、、、今の高校に転校して、半年経つんだよね」

「あぁ・・・そっか、もうそんなに経つんか・・・」
「うん。いやー、ほんとこの半年間、あ〜ちゃんには世話になりっぱなしだよw」
「ほんまじゃ!!のっちは世話の焼ける子じゃけぇ」
おっ、あ〜ちゃんのいつもの調子が出てきた。

「あはは。また今年もお世話になります!!」
そう言ったら、あ〜ちゃんの顔つきが変わった・・・ような気がした。
「・・・いやじゃ!!あ〜ちゃんもう、のっちの面倒みきれん。知らん、勝手にしんさい!!」
あっ、元通りになった。
なんだ・・・やっぱりあたしの気のせいか・・・。

「えー、、いいじゃーん。冷たいなぁ、あ〜ちゃんはw」
「のっちのくせに生意気じゃ!」
「なにそれ?それって、『のび太のくせに生意気』って理不尽に言われてるのび太みたいじゃんw」
「あー、そう言えばのっちって、のび太くんに似てるかもw」
おいおい、野良犬の次はのび太かいww

「えー、似てないよ。さすがにテストで0点は取らないし〜。言いますけど、それだったら、あ〜ちゃんはドラえもんだよ?」
「ヒド!!あ〜ちゃん、あんなに青くてコロコロしてないですけど!!」
ちょっと、ムっとするあ〜ちゃん。

「ち、違うよ。ドラえもんはいつものび太を助けてくれるでしょ?だから、あ〜ちゃんはドラえもんなの」
あたしは必死に弁解をする。
「・・・あ〜ちゃん、のっちを助けた覚えないけど?」



「なに言ってんの!!あたしはいっつもあ〜ちゃんに助けられてるよ?感謝してるよ?」
「・・・あんた、そんな恥ずかしい事よく言うわ・・・」
あ〜ちゃん、照れて顔が赤くなってる。
やべ、照れてるあ〜ちゃんめちゃくちゃ可愛い。

「あっ?もしかして照れてんの?可愛いw」
また茶化す。
「ふん。もう、のっちとは口きかん!!」
怒ってほっぺをふくらまして、そっぽを向くあ〜ちゃん。

「え〜、ごめんごめんw。謝るから〜、ね?あ〜ちゃん」
あたしは両手を合わせて頭を下げる。
「ミルクティーおかわり入れてきてくれたら、許すけぇ・・・」
「はい!!了解しました!!」
あたしは急いでドリンクが置かれてるカウンターへ向かう。

席に戻ったら、あ〜ちゃんは携帯をいじってた。
「よいしょっと。はい、持ってきたよ」
「ありがと・・・」
あ〜ちゃんにコップを渡す。

「メール?」
「・・・うん。お母さんからだった」
「そっか。あっ、もしかして早く帰ってこいって?」
「あ・・・まぁ、、そんな感じかな?」
自分の携帯を取り出して時間を見る。
もう19時すぎだった。

「んじゃ、もう帰ろうか」
「えっ!!」
えっ?
「もう少し、いいじゃろ?折角ミルクティー新しいの持ってきてくれたんだし・・・それ飲み終わってからでも平気じゃけぇ」
「うん・・・。わかった」
あたしはまた腰を下ろした。

あ〜ちゃんが帰るのを渋るのは初めてだった。
大抵渋るのはあたしの方なのに。
めずらしい事もあるんだね。
あ〜ちゃんが渋ってくれるのって、ちょっと嬉しい。
これって、あたしともっといたいって事なんだよね?
嬉しくて心の声が、顔に出ちゃいそう。


あ〜ちゃんがミルクティー飲み干すまで、あたしは3回ドリンクバーに行った。

「あっ!!いっけねぇ、あ〜ちゃんに借りてた香水返すの忘れてたよ。ごめん、明日学校で渡すね」
ファミレスを出て駅に向かう道で思い出した。
「あー・・・、うん」
あ〜ちゃんはなんだか元気というか覇気がない感じ。

「どしたの?急におとなしくなっちゃって?静かなあ〜ちゃんは、らしくないよ?」
ひょいと、あ〜ちゃんの顔を覗き込む。
目が合った。けど、すぐ逸らされた。

「・・・あ〜ちゃんに四六時中、元気でいろって言うん?」
あっ、勘に障っちゃった?
「あ・・・いや、そういう意味じゃなくて、、、」
やばい、、、怒らしちゃったかな・・・。

「あっ、ごめん。ちょっと言いすぎた。ごめんね、のっち・・・」
「な、なんであ〜ちゃんが謝るの?あたしが無神経な事言ったからなのに・・・」
明らかにオロオロするあたし。
明らかにいつもの感じじゃないあ〜ちゃん。

「のっち・・・ひとつお願いがあるんだけど、いいかな?」
「ん?なに?あたしが出来る範囲内だったら、なんでもするよ?」
あ〜ちゃんに初めてお願い事された。

「駅まででいいから・・・手、繋いでいい?」
えっ・・・。
手、を繋ぐ?
まぁ、友達同士でも繋ぐ人はいるけれど・・・。
あ〜ちゃんそれって、深い意味じゃないよね・・・。
でも、あ〜ちゃんの様子からしたら、冗談っぽくないし・・・。
もしかして、あ〜ちゃん・・・あたしの事、友達以上として想ってくれてたり?
いやいや、、、それは自分の願望でしょw。
あ〜ちゃんが、あたしの事そんな風に想ってる、、、はずないよね?

あたしがモタモタしてたら、あ〜ちゃんがこう言った。
「あ・・・やっぱ、いいや。ごめん、今の忘れて」
あ〜ちゃんはあたしを置いて、ズンズン駅に向かって歩き出した。


「あっ!!」
あたしは追いかけて、あ〜ちゃんの右手を掴んだ。
「え、駅までね・・・」
あたしはその右手を離さずにあ〜ちゃんの歩幅に合わせた。
あ〜ちゃんは何も言わず、縦にゆっくり首を振った。

手を繋いでいる間、あたしたちは何も喋らなかった。
なんでか知らないけど、二人とも緊張していた。
あ〜ちゃんの緊張が繋いだ右手から。伝わってきた気がしたから。
たぶんあたしの緊張も繋いだ左手から、あ〜ちゃんに伝わっている気がする。

なんでだろう?
わからないけど、この緊張は嫌な感じはしない。

繋がれた手が心臓みたいにドクドクいってて、熱い。
ギュって少し強く握り返したら、あ〜ちゃんも握り返してくれた。
チラっと、左側にいるあ〜ちゃんを見る。
あたしの方がちょっと背が高いから斜め下に見下ろす感じ。
あ〜ちゃんもあたしを見る。
今度は目を逸らされなかった。
上目遣いでハニカミ笑いをされた。

これで、決めた。

好き。

って、言おう。

「あ〜ちゃ「あっ、駅着いた」
告白しようとしたら、完璧にタイミングをミスった。
繋いだ手も離れた。

「ん?のっち、なんか言った?」
「ううん・・・なんも言ってないっス・・・」
タイミングを間違えたせいで、決心が一気に崩れ落ちた。
ヘタレな自分に心底ガッカリ・・・。


まっ、いっか。
チャンスはまだいくらでもあるんだし。
また一年間一緒のクラスなんだし。
またタイミング見つければいいや。
そう前向きに自分に言い聞かす。

「じゃ、明日学校でね」
あたしは切符を買ってるあ〜ちゃんに言う。
「のっち・・・今日は、ほんとありがとね」
「へ?うん?」
なぜか、ありがとうって言われたけど、何も感謝される事なんてしてないのにな〜。

あ〜ちゃんは改札口に切符を通してホームに向かう。
「んじゃ、またね」って言いながら、あたしはヒラヒラ手を振りながらそれを見送る。

「のっち!!」
改札口越しに呼ばれた。
「はい?」

「ありがとう。楽しかったけぇ」
「んー、気ぃ付けてね」
だから、あたしは何もしてないのに〜。
変なあ〜ちゃんww。

「さようなら」

そう言って、あ〜ちゃんは階段を上っていってしまった。
あ〜ちゃんはいつも帰るときは必ず「バイバイ」って、言うから「さようなら」は違和感があった。
ほんと今日のあ〜ちゃんはちょっと変だった。
ま〜、明日になればいつもの調子になってるでしょ。
あたしは特に気にせず、家に帰った。

あ〜ちゃん・・・明日あなたに借りてた香水返す時、あたしの気持ち聞いてくれる?









最終更新:2009年05月14日 04:01