「綾香ちゃん、いつも歌うの?」
「う〜ん、aikoさんとか、最近はチャットモンチーさんかな?」
「おおお!!綾香ちゃんのaiko聴きてー!!カブトムシ歌ってよ」
「えぇ〜・・・」
高2になってから、3回目のカラオケ合コン。
未だに慣れない。
男の子が嫌ってワケじゃない。
でも慣れない。
男の子たちはみんな優しい。
その優しさの中に、たまに下心がみえるけど。
合コンは嫌いじゃないけど、こういう出会いの場での恋のスタートって、ちょっとう〜んって思っちゃう。
「やっぱ、恋って、さぁ〜。例えば、図書館で偶然同じ本を取ろうとして、手が触れ合って、そこから始まるーって、感じが理想なんよ」
「あはは。あ〜ちゃん、それ漫画とドラマに影響されすぎじゃけ。現実にそんな事起こるわけないじゃろ?」
保険医のゆかちゃんにバカにされちゃった。
「もう、ゆかちゃん笑いすぎじゃ!夢みたって、ええじゃろ?あ〜ちゃんまだピチピチのセブンティーンなんだから!」
「あっ、なに?それは20歳すぎてる、先生への当て付けですか?ww」
「ぎゃはははww」
「てか、あ〜ちゃんこんなトコで油売って大丈夫なん?早く、部室に戻らんとダメじゃない?」
「あっ、そうだった!!じゃね、バイバイ」
あたしは職員室で、コピーさせてもらった学祭で演奏する楽譜を持って保健室を出た。
あと1ヶ月したら、学園祭。
軽音部のあたしにとっては、一大イベント。
さ、早く部室に戻って練習練習!!
保健室から部室までは一旦、下駄箱がある玄関に出ないと行けない、めんどくさい造りになっている。
急いで小走りにしたら、突然風が吹いて、手に持ってた楽譜が空に舞ってしまった。
「ギャーーーーーー!!!」
あたしは驚いて大声で叫んでしまった。
そして、舞ってる楽譜に飛びつく。
落ち葉も舞ってるから大変。
「あの・・・これ」
楽譜を拾ってると斜め上から声がした。
顔を上げると、私服姿のショートカットの、ちょっと不機嫌そうな感じの、でもキレイな顔をした女の子が立っていた。
私服だから、ここの生徒じゃないよね?
OGの人かな?
んー、でも見たことない顔だよな〜?
結構年上の人かな?
「あっ、すいません。ありがとうございます」
あたしは、お礼を言ってペコって頭を下げて部室に戻った。
部室に戻ると、みんなに遅いって怒られた。
あたしは謝って、練習を始めた。
みんなに、さっき会った女の子の事を言おうと思ったけど、やっぱり止めた。
なんとなく、彼女と会った事を秘密にしたかった。
翌朝、教室に入るとあたしの机の隣に新しい机が置かれていた。
それが不思議だったから、周りの子になんでここにあるのかを訊いてみた。
「ねぇ、この机なんなん?」
「あー、なんかね、転校生が来るらしいよ?」
転校生!?
うちのクラスに転校生が来るんだ〜。
なんか、楽しみ。
どんな子が来るんじゃろ?
友達になれるといいな〜なんて思いながら、あたしは朝のホームルームを待った。
担任の中田先生が転校生を連れて教室に入ってきた。
転校生は教卓の横に不機嫌そうに立っている。
クラスの子達は転校生に釘付け。
あたしもその子に釘付け。
あれ?もしかして・・・?
教室が騒がしくなり始めた。
小声で「かわいい」とか「クールビューティー」とか「かっこいい」とか聞こえる。
先生が黒板に転校生の名前を書いてる。
「はい、今日から同じクラスメイトになる、大本彩乃さんです。みんな仲良くね」
「大本彩乃です。よろしく・・・おねがいします」
転校生はすごく不機嫌そうに口を開いた。
「あ!!!昨日の!!!」
楽譜を拾ってくれた人!!
そう思った瞬間、教室全体に聞こえるくらいの声で叫んでいた。
「あ・・・」
転校生もあたしを憶えていてくれたみたい。
先生が転校生に席に座るように促す。
席はあたしの隣。
これって、この子が男の子だったら、恋が始まる理想のパターンじゃない?
いやいやwそんな事考えちゃうと、またゆかちゃんに笑われちゃうけぇ。
「昨日、私服だったから、てっきりOGの人かと思っちゃった。転校生だったんだね」
あたしは速攻話しかけた。
でも、転校生はすごく不機嫌に、そしてめんどくさそうに「はぁ・・・」 って、返事するだけ。
「あっ、あたし西脇綾香。みんなからはあ?ちゃんって呼ばれてるから、大本さんもそう呼んで」
あたしはめげずに自己紹介をする。
やっぱり返ってくる言葉は「はぁ・・・」 だけ。
「よろしくね。わかんない事あったらなんでも訊いて」
あたしは精一杯明るく接して、握手をするために右手を差し出した。
転校生はちょっとためらったけど、握手をしてくれた。
そして「はぁ・・・」じゃなくて、「よろしく・・・」って、言ってくれた。
それだけなのに、なんだか嬉しかった。
なんだろ・・・この感情。
手を握った瞬間、心が温かくなった気がした。
不思議な感覚だよ。
どうしてこんな感情や感覚になったのかな?
のっち・・・今思えば、あたしたちの出逢いって運命的だったと思うの。のっちは、憶えてる?
最終更新:2009年05月23日 18:01