サイドK


私たちはずるくて、
まだ大人になりきれてないのに大人なふりをしてた。

私たちはずるくて、
まだ一人では立てないのに一人で立とうとしてた。


ただずるくて。
ただずるくて、我が儘に甘えては、
あなたの優しさに、ほんの少しの嫌悪感が掻き立てられたんだ。
ただずるくて。
ただずるくて、我が儘に泣いてみては、
あなたの強さに、ほんの少し嫉妬したんだ。


私たちはずるくて、
まだ大人になりきれてないのに大人なふりをしてた。

私たちはずるくて、
まだ一人では立てないのに一人で立とうとしてた。


ただずるくて。
ただずるくて、
夜中にこっそりベッドを抜け出すあなたに寝たふりをして。
ただずるくて。
ただずるくて、
目の前で違う場所と繋がれていても、
何も気にしない素振りで誤魔化した。


あなたが差し伸べてくれた手にも、
あなたが言ってくれた言葉にも、
あなたがくれた優しい眼差しにも、
わからないふりをして、
ただずる賢さだけを身につけて、
わからないふりをして、
ただ傷つくことから避ける術だけを身につけて、
わからないふりが、
本当に“わからない”になった時は、
終わりの合図が鳴っていた。


私たちはずるくて、
まだ大人になりきれてないのに大人なふりをしてた。

私たちはずるくて、
まだ一人では立てないのに一人で立とうとしてた。


ただずるくて、
ただずるくて、
ただずるいのは私だけ?
本当は、
ただずるいのは私だけで。


“ゆかのためだよ”
と、あなたが言ってくれた嘘ならば、
私はいつだって騙されればよかったはずなのに。
“ゆかのためだよ”
と、あなたが言ってくれた嘘ならば、
私がいつだって騙されればよかったのに。



『そんなの無理でしょ?』
都合のいい嘘?
曖昧な本当?
騙されればよかったのに、
騙し続けられなかったのは、


私だけじゃない。



だけどやっぱり、
あなたはずるくないよ。


だってこんなにも儚いんだもん。
私の心の中にうつるあなたは、
こんなにも儚くって。
だからやっぱり、
あなたはずるくないよ。


あなたの中にいる私は、
きっと歪んでるね。
ずるいのは、
私だけでいいよ。


あなたはさ。
あなたのままで。
あなたのその儚く消えそうな長い手足や、
あなたのその儚い雫みたいな髪の毛や、
あなたのその儚い唇から湧き出る言葉とか、
あなたのその儚くもろい腕の中とかみたいにさ、
あなたはあなたのままで、
あなたのままで、
あなたのままで、
儚い夢でいて?


あなたにとって私は、何?
私にとってあなたは、何?
あなたにとって私は、誰?
私にとってあなたは、誰?


あなたにとって私が、何物でもなくても、
私にとってのあなたは、何物でもあるよ。
あなたにとって私が、誰のものでもなくても、
私にとってあなたは、誰かのものであるよ。


いつだって核心に触れようとすれば逃げ出して、
曖昧なキスを繰り返す。
いつだって終わりが近づけば嫌だと言って、
曖昧なキスを繰り返す。


あなたにとって私は、何?
私にとってあなたは・・・・



曖昧な二人。
曖昧な時間。
曖昧な温度。
曖昧な態度。
今日も曖昧なキスを繰り返しては、
曖昧な態度で、
曖昧な温度を上昇させて、
曖昧な時間ばかりが、
曖昧な二人を、
捕らえて離さないでいる。


違う。
違うね、私は。
“離さないでいる”
なんかじゃない。
“離れられないでいる”
この感情は曖昧なんかじゃないよ。


だけど、
だけどね?
辛いのは、
辛いのはね?
曖昧な二人が、
曖昧な時間を経て、
曖昧な温度で抱き合っても、
曖昧な態度しかとれないよ。


だけど、
だけどね?
辛いのは、
もっと辛いのはね?


曖昧なキスは、
曖昧な二人のキスは、
曖昧なキスはね?



いつだって、
甘いんよ。


ねぇ?
どうすればいい?



つづく







最終更新:2009年05月23日 18:23