のっちはゲームが好きだ。
外に出る時は常に携帯ゲームを持ち歩き、仕事がオフの日は家でテレビゲームに明け暮れている。
たまのオフだからとのっちのお家に遊びに行っても、ゲームに夢中で相手にもしてくれない。
今日だって朝から遊びに来てるのに、こっちを見向きもしない。
わたしは退屈を紛らわすため、ソファーに座って雑誌を読んでいた。
けど、2時間半もほったらかしにされたら、さすがに雑誌も全部読み終えてしまうというものだ。
ふとのっちの方を盗み見てみる。
あぁ…。
少年のように目をキラキラ輝かせ、「いけぇ!」だとか「あ〜くそっおしい!」なんて言っちゃってさ。
そんな無邪気なあなたを見ていたら、無性に腹が立つんよ。
たまにはあ〜ちゃんにもそんな顔見せてくれてもいいじゃろ?
「のっち」
「ん〜?」
そんなんしてたら退屈じゃけぇ。
あ〜ちゃんの相手もしんさいよ。
「のっちってば」
「あー…ごめん、今いいとこだからもうちょっと待って」
頭にきた。
その台詞、今日何回目だと思っとるん!
いい加減聞き飽きたわ。
そんなにゲームが大事なん!?
のっちがやってるゲームの電源をコンセントごと勢いよく抜いてやった。
「ぅあっ!?あ〜ちゃん何しよん!!さ、最悪じゃ…まだ1回もセーブしとらんかったのに…」
その場に崩れ落ちるのっち。
ふん、ゲームにばっか現抜かしとる罰じゃ。
「サーブだかレシーブだか知らんけど。あ〜ちゃんは今のっちとおるんじゃけぇ」
「…うん」
「のっちは今一体誰と一緒におるんよ?」
「…あ〜ちゃんれす」
「じゃあ、あ〜ちゃんのことだけ見ててよ」
言ってしまってから後悔する。
我ながら恥ずかしすぎるわ。
のっちの方を見れずにいると、いつの間にかゲームのコントローラーを置いてこっちに寄ってきていたのっちに下から顔を覗き込まれた。
「あ〜ちゃん、どうしたん?今日すっごい可愛いんじゃけど」
「それ、いつもは可愛くないみたいじゃん、失礼な子じゃね」
「そ、そういう意味じゃないけぇ…」
途端にオロオロし出すのっちを見ていたら吹き出してしまった。
まったく、ハの字眉に上目遣いのあんたには敵わんわw
ねぇ、のっちの方が可愛いよ?
あ〜ちゃんはのっちの困った顔がどうしようもなく好きなんよ。
だからもっとずっと困っててほしい。
わたしの言動で一喜一憂するのっちがすごく愛おしいんよ。
そんなこと言ったらあなたは呆れる?
それともその情けない眉をより一層ハの字にして、笑ってくれるのかな?
「あ〜ちゃん?」
ケラケラ笑うわたしを不思議そうに覗き込んでくる、子犬のように大きな目。
ねぇ、のっち。
わたしね、のっちのことに関しては誰にも負けたくないんよ。
それがたとえゲーム機相手でも、負けるのは嫌。
のっちの一番はあ〜ちゃんじゃないと嫌なんよ。
じゃけぇ、、
「のっち、ごめんね?」
「へっ?」
なにが?って言いたげに、大きな目をぱちくりさせながらあたしを見つめてくるのっち。
「ゲーム消しちゃったけぇ。お詫びに、今日はのっちの言うことなんでも聞いてあげる」
「えっ、なんでも??」
途端に目の色を変えるのっち。
あともう一押し。
「あ〜ちゃんのこと、のっちの好きにしていいんよ?」
ほら、さっきのキラキラ目を輝かせた、わたしの一番好きな少年のっちが顔を出した。
(残念じゃけど、今からしばらくのっちはあ〜ちゃんのものじゃけぇ。あんたは休んどきんさい)
ゆっくりとソファーの上に倒されながら、チラリと横目で見たゲーム機にそう心の中で言ってやった。
(終わり)
最終更新:2009年05月23日 18:25