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SIDE-A


こんな雨の日はあの日のことを思い出す。
実は見ていたんだ。
ゆかちゃんがのっちに傘を差し延べるのを。
そのまま二人でどこかに行ってしまったのも。
私があの時声をかけていれば、なんてもう思わないことにした。
今さらそんなこと思っても、無駄だから。


ゆかちゃんはのっちが好き。


それは、変えられない事実。
私は無力だ。
それでも私はゆかちゃんの傍にいたい。
ただ傍にいるだけで私は幸せ。




だから、嬉しかった。
二人が付き合い始めてから一年ほど経った頃。
私は毎週金曜日の夜、ゆかちゃんに家に呼ばれるようになったのが。
少し寂しそうな目をしてゆかちゃんは私を招き入れる。
それだけで自分は必要とされてるんだって思えて、幸せだった。
他愛のない話をして気づけばいつも朝だった。
明け方に二人で微睡みながら、それでもお互い話し続ける時間が好きだった。



『ごめんね。今からのっち来るから…』


ゆかちゃんの一言が、私たちの時間の終わりを告げる。
私はその言葉に頷いて、ゆかちゃんの家を後にする。
いつも別れ際に、勝手でごめんと謝られた。
ほんと勝手。
だけど。
勝手でもいい。
ゆかちゃんの力になれるなら。
勝手でもいい。
どんなに残酷なことを私に望んでも。
私はゆかちゃんが…。




ピンポーン




私の思考を遮るように、玄関のチャイムが鳴る。
相手を確認したのにドアを開けてしまったのは、私が弱かったから。



「何しに来たの…?」
「あ〜ちゃん…わかったよ」


目の前には雨に濡れた肩。


「のっちは、あ〜ちゃんが好きなんだ。」




今こうしてのっちの腕の中に簡単に収まってしまったのは。
あの夜、のっちの手を振りほどいたみたいにのっちを拒めなかったのは。
のっちに対する哀れみと、後ろめたさがあったから。


ゆかちゃん。
ゆかちゃんの望みは、ほんとに残酷だね。







つづく





最終更新:2009年05月25日 19:49