サイドN
大学とバイトの両立は思いのほかきつかった。
だけどそれは二人とも一緒だからと、
そう考えては頑張れる自分が嫌いじゃなかった。
『インテリア好きなの?』
『はぁ。まぁ。』
バイト先のオーナーは優しくて、めずらしく会話の進む人だった。
相変わらずな自分の態度には呆れたけど。
そんなとこも特に突っ込むわけでもない、大人な人だった。
店が暇だと、
『適当に座ってていいから〜』
と言っては、コーヒーを出してくれたり。
『ちょっと買い物いってきます。雑誌でも読んでな〜。』
なんて言ってる、いい意味で、“適当”な人だった。
他にバイトもいるみたいだけど、
基本はオーナーと二人だったから、その気楽さも合わせて、
すごく居心地がよかった。
店が暇だと言っては、
『あ、暇だから適当に〜用があるなら先あがっていいからね〜w』
働く時間もきっちりしてなくて、
実際問題そんなにお金にはならなかったけど、
彼女を迎えにいける時間が増えて嬉しかった。
『んじゃ、お言葉に甘えて。先あがります。』
『あ〜いよ。おつかれ〜』
早々と店を飛び出して、彼女を迎えに行くのが日課。
途中ホットカフェモカを買ってくのが日課。
彼女が出てきたらふざけたふりして抱き締めるのが日課だった。
『それ、癖?』
迎えにきた彼女のバイト先。
いつもみたいにふざけて抱き締めたら、
ふざけてそう返された。
『ん?日課?』
少しだけ笑って言うと、彼女はふふって笑いながら、
『いい癖だw』
またふざけて答えた。
家までの帰り道。
買っておいたカフェモカを渡し、
それと交換するように彼女の鞄を受け取った。
『それも癖だよね?』
今度は優しく笑いながら彼女は言う。
『ん?なに?』
ふふって笑いながら、優しい目で困った表情をつくった。
『やっぱり癖って気付かないんだぁ・・・』
『???』
『ふふっwそれ!』
彼女は左手でカフェモカをゆっくり飲みながら、
右手で私が持ってる自分の鞄を差した。
『ん?』
『のっちって、いつも鞄持ってくれるよね?なんで?』
優しく笑いながら聞いてくる。
『いや・・・』
『癖?でしょw』
『んー・・・わからん。』
『ふふっwほら!』
『いやいや。』
『まぁ、いい癖よ!w』
笑いながら頭を撫でてくれた。
時々こうやって子供扱いするみたいに、
優しく頭を撫でてくれるのが
恥ずかしかったけど、嬉しかった。
でも違うんだよなぁ。
多分それは癖じゃない。
『優しい癖をお持ちでw』
『いやいや。』
『なん?照れよるん?w』
茶化す彼女。
相当可愛い。
だからまだ言わない。
『のっちの優しいとこ・・・好きだよ?w』
『いやいや//』
『ふふっw照れよるw』
上目遣いで“好き”とか言って、
わざと私を喜ばせて、照れてるのを見て楽しんでる。
多分彼女の“癖”だ。
まぁ今のは普通に照れたけど。
『いやいや、違うんよ。』
『ふふっw強がり?w』
『いやいや。優しくなんかないよ。』
『またまたぁw照れなくていいってw』
『だって違うもん。』
隣でくすくす笑ってる余裕な彼女の右手を勢いよく握った。
『!!な、ん??』
明らかに驚いてる彼女が可愛すぎ。
ためにためて、
今やっと言える。
『こうすればさ?』
握った手に力をいれた。
『手、繋げるでしょ?』
恥ずかしそうに言葉を詰まらせた彼女は、
恐ろしく可愛い。
優位に立ってもらって、
それから一気に甘くして、
彼女を喜ばせて、
照れた表情が見たいんだ。
なんていったって一番可愛い表情をするもんだから。
『だから、優しさとかじゃないよ。
両手ふさがってたら手も繋げないじゃん。
そんなのって淋しすぎない?』
『・・・うん//』
『うん。それだけ。』
彼女が喜ぶ一番の手段を知ってる。
甘い言葉を甘く言わないで、
クールにさらっと言ってくれるとこが“好き”って言ってなかったっけ?
だから多分、
もうそれがのっちの“癖”だ。
最終更新:2009年05月25日 19:58