今、転校生はクラスの子達に質問攻めを喰らっている。
隣で聞いてておもしろい。
だって、みんな色んな事質問するけど、だいたいの返事が「はぁ・・・」だから。
あたしはおもしろすぎて笑いを堪える事が出来なくなっちゃって、結局ケラケラ笑っちゃった。
そうしたら転校生が怪訝そうな顔をして、こっちを見てきた。
「あっ、ごめんごめんwバカにして笑ったわけじゃないよ」
あたしは笑いながら謝る。
で、またあの「はぁ・・・」って返事だから、笑いを堪えるのに精一杯。
あたしは転校生に『のっち』ってあだ名をつけてあげた。
ちょっと強引につけちゃったけど、のっちは嫌がらずにすんなりと受け入れてくれた。
それから、席も隣のおかげか、あたしはのっちと仲良くなった。
たぶんのっちは、あたし以外にまだ友達はいない。
だから移動教室もお昼も一緒に行動した。
のっちは目立つ。
顔がキレイだし、手足も長いし、雰囲気が独特だから、目立つ。
元々うちはお嬢様チックな子達が多いから、のっちみたいなボーイッシュな子は珍しいから余計に目立つ。
本人はそんな事知らないみたいだけど。
のっちが転校してきて早1週間。
あたしは色んな人に毎日のっちの事を訊かれる。
ほら、今日もまた・・・
「あ〜ちゃん、今度のっちも誘って一緒に遊びに行こうよ!!」
「あ〜ちゃん、あたしものっちと友達になりたい!!」
「あ〜ちゃん、のっちって、カッコイイよね!!」
「あ〜ちゃん、のっちと仲いいよね。羨ましい!!」
朝からみんな、のっちに夢中。
みんな、のっちと仲良くなりたいと思ってる。
でも、のっちは人見知りみたいで、簡単に人を寄せつかせない雰囲気を放ってるから、みんな近寄りがたいと思ってる。
だから、みんなあたしを通してのっちと仲良くなろうとしてる。
言わば、あたしはのっちと仲良くなる受付係みたいになっちゃってる。
下駄箱に着くと、のっちが上履きに履き替えてる所。
あたしはちょっとしたイタズラをした。
のっちはあたしにイタズラされても怒らない。
なんでか知らないけど、怒らないの。
怒らないから、あたしも調子に乗って髪をクシャクシャにする。
クシャクシャにされても、のっちは怒らない。
眉毛がハノ字になって、ケロケロ声で「やめてよ〜」って言うだけ。
そんなのっちを見てると楽しい。
あたしだけに、心を許してくれてるみたいだから。
のっちにイタズラをしていいのは、あたしの特権。
他の子よりも優位に立ってる気がするの。
今日は一時間目から移動教室。
いつものようにのっちと一緒に行く。
「ねぇ、あ〜ちゃん」
「なに?」
「なんでみんな、あたしのこと知ってるん?毎朝挨拶されてビックリするんだけど・・・」
「あー・・・、のっちは目立つからね〜」
「え?あたしなんて全然目立ってないと思うんだけど。むしろ、あ〜ちゃんの方が目立ってんじゃん」
「いやいや〜、のっちに比べたらあ〜ちゃんなんて、まだまだですよw」
「なんで急に敬語?w」
「やっぱ、人気者には敬意を示さなきゃいけませんからね!」
「人気者?誰が?」
「誰が?って、のっち・・・。あんたの事でしょw」
「え?そ、そうなの?」
「そうだよ!あんた自覚なかったん?あ〜ちゃん色んな人に、しょっちゅうのっちの事訊かれるもん」
「な、なんて訊かれるの?」
「う〜ん、と・・・」
のっち、やけにニヤニヤしてない?
なんか、無性にムカついた。
訊かれた事教えてあげようとしたけど、そのニヤケ顔がムカついて止めた。
「忘れた!!」
ふん、もう教えてあげないけぇ。
あたしはのっちを置き去りにして、急いで階段を駆け下りた。
急いだのがまずかった。
足を踏み外してしまった。
あたしは思いっきり叫んだ、と同時に腕を掴まれて、階段から落ちるのを免れた。
あたしの腕を掴んだのは、のっちだった。
「セーフ!!」
のっちはすごく得意げな顔をしてあたしを見た。
その瞬間、あたしは階段じゃなくて、のっちに落ちた。
鏡を見なくても自分の顔が赤くなるのがわかった。
あっ、助けてくれたお礼言わなきゃ・・・。
「あ、あでぃがどう・・・」
のっちの顔を見れなくて、恥ずかしくてこんな変なお礼になっちゃった。
のっちはあたしが落とした教科書やノートを拾ってくれてる。
そんな優しいのっちに憎まれ口しか言えなくて、あたしはのっちを置いて理科室へ急いだ。
こんなに理科室が遠いなんて感じたコトはなかった。
なに、なんで?
嘘、でしょ?
ありえない、でしょ?
だって、相手は女の子だよ?
でも、この感情はリアル。
今まで気付かなかっただけだったかも。
今まで気付かないフリをしただけだったかも。
今まで気付いちゃいけないと思ってただけだったかも。
のっち・・・好き、だよ。
最終更新:2009年05月25日 20:06