ただ耐えているだけなのは辛い。
よくそんな話を聞くけど、あたしはそうは思わない。
ただ耐える。つまりは何もしなくていい訳で。
自分にできる、その限りを尽くして。
自分にできる、その全てを実行して。
その結果、自分にできる事がなにひとつ無くなって初めて、耐えるという境地に達する。
考えようによっちゃ、随分と誇らしいじゃないか。
そんな風に考えてみたところで、何かが変わる訳ではなくて。
頬を伝う涙が、急に暖かいものになる訳でもない。
いつだって周りに気を配って。
明るく元気に笑顔で振る舞って。
自分の大切なものを、手放して…
自分で自分が嫌になる。
お人好しにも程があるよ。
でも、だからってどうしようもないじゃない。
二人共とても大切で。
大切なものを失うのを恐れた弱虫なあたしは、自分の気持ちの、行き着く場所を失ってしまった。
最近は、一人で泣くのにも慣れた。
一人になる度に、暗くてどんよりとした思考を繰り広げては、後悔と自己嫌悪に打ちのめされる。
それでも、人間恐ろしいもので、そんな状況にも慣れてしまう。
部屋で一人の夜は流石に無理でも、楽屋でなら、コントロールがきくようになった。
そろそろのっちが帰ってくる。あの子はあれでいて、結構鋭いところがある。
あたしは涙を隠すのが不可能なことに気付いてからは、隠さず堂々と涙を見せ付けることにした。
あたしの本当に気付いて欲しい。
そんな気持ちをホンの少しだけ込めて。
あたしはバックから文庫本を取り出し、シオリの挟んであるページを開く。
長くやってれば、タイミングは大体掴めるものの様で。
ガチャリと楽屋のドアが開く。
「ただいま〜」
コンビニの袋を持って、のっちが入ってきた。
「…おかえり」
あたしは少し腫れた目と、赤い頬でのっちを迎える。
「あらぁ〜、あ〜ちゃんまた泣いてるよ。今日はなんの本?」
「…セカチュー」
「あ〜、あれか。助けて下さい!ってやつ」
のっちは楽しそうに映画の話をしながら、買ってきたプリンの蓋を開けた。
「最近毎日なんかしら読んでるよね、小説。あ〜ちゃんがそんなに文学少女だったとは、のっち知らなかったよ」
プリンを頬張りながら、のっちがこっちを向いた。
それだけで、あたしはどうにかなってしまいそうになる。
本当は、毎日同じ本を開いている。お父さんの部屋にあった、なんかよくわからんやつ。
タイトルなんて、なんでも良かった。泣ける話なんて、世の中腐る程ある。
そして今のあたしには、泣ける話は必要ない。
涙はいつだって、勝手に流れてくるから。
最終更新:2009年05月25日 20:37