−k−
「…だから、別れたい」
「…わかった・・・」
まぶたを持ち上げると
まぶしい朝日。
また
あの日の、夢、、、だ。
別れを告げたのは、ゆかなのに
いつも、振られたような気分で、目が覚める。
後悔なんか
しないはず、、、だったのに。
忘れたころに見る、夢。
忘れさせないよ?
と、言わんばかりに・・・
ぼやっとした視界。
時計で時間を確認。
もっさんが迎えにくるまで
およそ、2時間。
んー・・・
大きく伸びをする。
シャワー浴びよ・・・
そう、思いつつ
カラダは思うように動いてはくれない。
いつも、そう。
彼女との、別れの日の
夢を見た日、は。。。
付き合ってたのは、、、
結局、、、、1年弱、だっけ?
その辺りの記憶は、曖昧。
それでも、長く続いた
“恋人”、だったことには
間違いない。
なんで、別れを選んだんだろう・・?
いつものように、冷めた、、、
わけじゃなかったんだ。
じゃ、なんで?
彼女は、やさしかった。
ひたすら、やさしかった。
怒らないことが、長所とか・・・
ねぇ
それって、ほんとに
長所、なの?
今なら、わかる
ほんと、大好きだった。
大好きだったんだよ。
幸せだった。
ほんと、幸せだった。
おんなじくらい
不安だった。。。
不安になっちゃったんだ・・・
きっと。
あの日
ゲームに興じる、あなたの背中に投げかけた。
「・・・ねぇ?」
「んー?」
「・・・別れよ」
「・・・・・・・・どして?」
「しんどくなっちゃった・・・だから、、、、」
しばしの沈黙の後
「わかった」
その瞬間
彼女は、振り返ることもなかった。
無機質なゲーム音が部屋に響き
やたら
耳に残った。
今も、耳のおく
こびりついて、離れない・・・
ねぇ、、、?
なんで、ゆかのこと
あんな簡単に手放した、、、の?
ん?・・・・あっ、、、、
甘く、やわらかな声に一気に現実に
引き戻される。
「おはよ。勝手にシャワー使わせてもらったけぇ」
天使だ。
ほんと、そう、、、、思う。
「うん、別にえぇよ・・・・」
未だ、夢から抜け出せない、あたし。
ちっさな手が頬に触れる。
「・・どしたん?・・・また、ヤな夢でも見たん?」
その手に、そっと触れてこたえる。
「んーん・・・まだ、、、少し眠い、、だけ・・
目が覚めきらない、、だけ。
あの日の、彼女の精一杯の告白。
たまらなく嬉しかった。
それが、ホンネ。
嘘のように、過ぎ去った幸せ。
本気じゃなかった
別れの言葉。
最後まで、甘えていたんだ。
彼女なら、引き止めてくれる、と。
そう
自惚れていた、自分。
でも、そのときは
あっさりと訪れた。
自分の手で招いた
さよなら。
ねぇ、なんで怒ってくれなかったの?
とんでもないワガママを
さらっと受け入れられるたび
どんどん、自分がヤになった。
ねぇ、、、ほんとに離れてよかったの・・・?
「ゆかちゃん?」
「ん?」
「大丈夫?」
「・・うん、、、、シャワー浴びてくる、、、ね?」
そっと離れる
手と手。
触れられた頬には、まだ熱が残ったまま。。
あったかいなぁ・・・
この温もりがなかったら
ゆかは
とっくに、ダメになっていた。
けど・・・
シャー・・・
シャワーを浴びながら
思い出すのは、
彼女と交し合った、熱。
カラダの芯から、熱くなる
あの、感じ。
はぁ・・
洩れるため息。
なんで
手放したんだろう?
そもそも
手放したのは
ゆか?
それとも、、、、彼女?
シャワーにうたれていると
あの日
ゲーム音と混じって聞こえた
窓の外の、雨音とリンクする。
はぁ・・
ゆからしくもない。
こんなに、一人の人に囚われるなんて・・・
でも
それでもやっぱ
もう一度
あなたのものになりたいと
願ってやまない
愚かな
あたし。
最終更新:2009年05月25日 21:07