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N-side



変なタイミングでゆかちゃんが帰ってくるものだから、咄嗟に体を離して目すら合わせられなくなってしまった。なんか色々と耐えられないからか、あ〜ちゃんはもう寝ると言ってリビングを後にした。あぁ、なんか気まずい。


「今、チューしようとしとったじゃろ」
「……うん」
「あーあ、もう少しゆっくり帰ってくるんだった」
「別に、ゆっくり帰って来ても同じだよ」
「どうして?」
「無理せんで良いって言われた」

そのままのっちはソファーに倒れこんだ。頭を抱えて、低く唸る。あーあ、あーあだよ、ホントにもう。頭ん中がぐちゃぐちゃしてきた。
無理せんで良いよって、別に無理なんてしてないし。なんで悲しそうに笑うんだよ、意味が分かんないよ。せっかく勇気振り絞ったのに…あぁ、そうか、これが無理か。
ゆかちゃんはソファーの横から手を伸ばして、のっちの頭を優しく撫でてくれた。


「無理したん?」
「した…かも」
「相変わらずの不器用さんじゃね」
「…ゆかちゃん」
「うん?」
「もっと撫でて」
「甘えん坊さんめ」


薄目を開けて見上げると、ゆかちゃんはさっきとは違って優しく微笑んでくれた。優しいな、ゆかちゃんは。可愛いねーって何回も撫でてくれる。
こんなのっちは可愛いの?いや、絶対ブサイクだ。分かるもん。自分今めっちゃブサイクだよ。こんな姿、あ〜ちゃんに見せらんないよ。泣きそう。


「泣いても良いよ?」
「泣かんもん」
「強がり」
「強がっとらんもん」


がばっと上半身を起こして、乱れた髪を整えた。ゆかちゃんはのっちの事が分かりすぎててたまにむかつく。自分だって自分の事がいまいち分かってないのに。
あ〜ちゃんにしたって、ゆかちゃんにしたって、なんでそんなにのっちの事を分かっているんだろ。そんなに分かりやすいのかな、のっちって。


「ゆかちゃんって、もうあ〜ちゃんとエッチした?」
「ううん、まだ」
「まだって事はする気なのですか?」
「無いですよさすがに」
「…そっか」
「安心した?」
「いや別に。ゆかちゃんとなら構わん」
「のっちいつからお父さんになったの?」


のっちは黙って寝室に向かった。お休みパパ、って聞こえてきたからお休み、とだけ返事をした。パパは漫画読んで寝るから、ゆかもお風呂入って早く寝るんよ。




K-side



「エッチかぁ…」


あ〜ちゃんとエッチだなんて、考えた事なかったなぁ。もしヤっちゃったら、どうなるのかな。どうもならないか、ゆかとあ〜ちゃんだし。のっちはヤって欲しいのかも。でもそれはゆかがあ〜ちゃんを貰っても良いのとは訳が違う。王子様も難しいのね。

よし、早くお風呂入ってゆかも寝ちゃお。めちゃめちゃ疲れたもん。






















と、見せかけて、実はお風呂上がりにこっそりあ〜ちゃんの部屋に潜り込んだりしてみたり。
そうっとベッドに忍び込むと、あ〜ちゃんはびくっと震えてこっちを向いた。暗くて顔はあんまり見えないけど、きっとびっくりしてるんだろうな。


「ゆかちゃん…どしたん?」
「うーん…夜這い?」
「えー」


とか言いつつ、あ〜ちゃんは枕を半分分けてくれた。ありがとって小さく呟いて、図々しくも半分余った枕に頭を乗っけた。良い匂い、あ〜ちゃんの香りだ。枕もふかふかで超気持ち良い。


「今日、一緒に寝て良い?」
「どうしたん、甘えん坊さんじゃね」
「キモい男にキスされたから凹んでるの」


そうなん、って言って本気で心配そうな顔をするもんだから罪悪感で胸が潰されそうになった。暗さに目が慣れてきたからはっきり見えるよ、ごめんね、ゆかって軽いよね。


「大丈夫だよ、たかがキスくらい」
「それでも傷ついたんでしょ?」
「今さらキスくらいで騒がないよ、処女じゃあるまいし」
「そっか、ごめん」


良いんだよ、口はちゃんと洗ったし。トイレで気持ち悪くて吐きそうになったけど、唇が荒れるくらいごしごし洗ったし。途中からは呼吸が乱れた。合コンなんて、来るんじゃなかった、って。


それを思い出して目を閉じた時、唇にふわっとあたたかいぬくもり。さっきのとは違う、冷たくてカサカサだったさっきのとは、全然違う。


「消毒だよ」


傷ついてなんかないって言ったはずなのにさ、どうしてこんな。
薄く目を開けると、あ〜ちゃんはにっこりと笑ってた。その笑顔大好き。出来れば歯を見せて笑って欲しいな。
ゆかはあ〜ちゃんの柔らかな胸に抱き付いた。空気を胸いっぱいに吸い込むと、じわりと涙が溢れてきた。


「不器用さんじゃね」



甘えん坊で不器用か…、ゆかものっちと変わらんじゃんか。



◇6:終◇







最終更新:2009年05月25日 21:34