アットウィキロゴ
SIDE-N


『浮気、してる?』


ゆかちゃんにそう言われて、あたしは少し戸惑ってしまった。
身体だけの関係なら、浮気じゃないってゆかちゃんは言ったよね。
だったら今のあたしは完全に浮気してる。
あたしの気持ちは、あ〜ちゃんに。
何気なくバイト帰りに家に行っても、あ〜ちゃんは拒む訳でも、迎え入れる訳でもなくあたしを部屋に上げてくれる。
門前払いされてもおかしくないのに。
上げてくれる理由はわからないけど、あたしはただただ流れに身を任せる。


あ〜ちゃんはテレビの前にあるソファーに座って、
あたしはその近くのクッションにもたれながら床に座り込む。
それが定位置になってきた。
あたしは、前みたいにあ〜ちゃんの身体に触れない。
知らなかったんだ。
触れることがこんなにも勇気がいることなんて。
好きになればなる程、あたしはあ〜ちゃんに対して臆病になっていく。
こうして同じ空間にいて、ポツリポツリと会話をする。
それだけで胸が張り裂けそうで。


ゆかちゃんの時はどうだろう。
あたしは何の抵抗もなくゆかちゃんを抱いた。
こんなに胸が痛むことも、恐れることもなく、抱いた。
きっとそこには愛がなかった。
今になってわかる。







「いつまで続けるの…」


あ〜ちゃんの声に顔を上げる。
あ〜ちゃんはソファーの上で体育座りをして、自分の腕に顔を埋めていた。
あたしに対して言っているのか、ただの独り言なのかはわからないけど、その言葉に心が痛くなる。


いつまで続けるんだろう。
あ〜ちゃんとのこんな関係。
ゆかちゃんとのそんな関係。
あたしにもわからない。
でも誰かが動かなきゃ何もかもが曖昧で。
そして動くべき人物は、あたししかいなくて。





「…ゆかちゃんと別れるよ。」



あ〜ちゃんの部屋を出た後、一人そう呟いた。





つづく







最終更新:2009年05月25日 21:35