サイドK
『それ癖?』
夜、内容のわからないテレビを無駄につけて、
床に隣同士に座っていた私は、
キスがしたくて一回立ち上がって、
すぐさま向き合って彼女の上をまたぐようにして腰をおろした。
首に腕をまわせば、
ちゃんと腰に手をおいてくれる。
下唇を指でなぞれば、
ちゃんと舌でかさつきを潤してくれる。
顔を近付ければ、
ちゃんとその大きな目を閉じてくれる。
のっちのキスが好き。
柔らかい触れるだけのキスは、
まるでじゃれあうように心地よくて笑ってしまう。
何度か触れるだけのキスを繰り返した後、
のっちの下唇を舌でなぞるのが好き。
私があなたに見つけたみたいに、
あなたも私の癖を見つけては、
嬉しそうに聞いてくる。
——うん。癖だよ。あなただけにしか見せない癖。
それをわかってか、
優しい目を細める仕草。
柔らかく髪を撫でる仕草。
『じゃぁのっちは、それ癖?』
優しく聞き返すと、
それ以上の優しいほほ笑みが返ってきた。
『うん。ゆかにしかしない癖。』
甘い言葉をクールにさらっと言うところ。
昔から変わってない大好きなのっちの癖。
それを聞くたびに嬉しくなって、
心がキュンって弾む。
次にギューって締め付けられる。
それをわかってか、
そう囁いた後必ず優しく抱き締めてくれる。
だから、
最後は心がフワッてなる。
——うまいなぁ。ゆかの扱い方。
そう思ってのっちの胸に顔をうずめた。
“よしよし”って頭を撫でてくれる手のひらがあったかい。
もっと触れてほしくなるくらいに。
堪えきれずに、
首筋にキスを落とした。
ピクッて反応が可愛くて、
何度も何度も。
その間ものっちのあったかい手のひらは頭を撫でてくれる。
だけど私の、
首筋への柔らかいキスが、
舌を這わせる生々しいものに変わった時、
手のひらはあったかい優しいものじゃなくて、
あったかいけど激しくなる。
ふふって少し薄笑いを浮かべたのっちが聞く。
『癖だね?』
『ん?』
『ふっw』
『なん?』
『エッチしたい時の。』
そう言うとのっちは座ったままの態勢から、
“よいしょ”
なんていって私を持ち上げた。
同じ女の子なのにこうも違うのか?
のっちは力強い。
私はいつだってその腕に守られてる。
のっちとの二回目の恋愛が始まってから、
ますますそれを感じとれるようになった。
家具屋のバイトのおかげで、腕にはうっすら筋肉がついたし、
足だって引き締まった。
それでも従来のしなやかさは変わらないままで。
だけど、細い私を持ち上げるくらいの筋力は十分にある。
それに、
内面的なとこももちろん力強くて、
その少したくましくなった腕に抱き締められると、
心まで包みこまれてるんだなぁって思えた。
持ち上げられたまま首に腕を回してのっちの表情を盗み見ると、
綺麗な顔が間接照明に照らされて恐ろしく綺麗だった。
向かう先。
二人のベッド。
シーツの波がゆれている。
私はのっちの愛にのまれながら、
ゆれるベッドシーツの海に身を投じた。
のっちの綺麗な横顔を独り占めできなかったあの頃に比べて、
今は正面からこの綺麗な顔を独り占めしてると思うと自然と笑みが零れる。
『ん?』
柔らかくて優しいキスを繰り返しながらのっちが聞く。
『ううん。なんでもない』
少しだけ眉をひそめて困った顔をする。
『ん。そう?』
その表情と仕草が色っぽくて、どんどん溺れていく。
『うん。ただ幸せだなぁって』
優しく笑って髪を撫でてくれる。
『そっか。』
耳元に低音の声が響く。
『のっちもだよ。』
のっちのキスが好き。
のっちとするキスはいつだって甘い。
一度この味をしめたら、
もう二度と離れられない。
そんなことわかってた。
『のっちのキス好きだよ』
『うん。』
器用にゆかのシャツを脱がせながら、
『キス、だけ?』
優しく笑って溺れさせる。
『・・・』
器用にゆかのショートパンツを脱がせながら、
『キスだけ?じゃないでしょ?』
やらしく笑って溺れさせる。
『・・・したい。。』
少しだけ笑って、
『のっちもだよ。』
今夜もシーツの波に二人溺れてく。
おまけおわり。
最終更新:2009年05月25日 22:05